C#を始めたばかりの人へのLINQ to Objects

コードの品質について
 プログラミングをしてる時に遭遇する様々な問題
 変数名が適当だと何のための変数なのかわかりにくい
 ブロックのネストが深くなると読みにくい
 ローカル変数が多いと何がどうなっているか混乱しやすい
 etc…

コードの品質について
 何も意識せずにコードを書いているとついついネストは深くなってし
まいますよね
 例として、
あるカレンダーセットの中の
カレンダーの中の
予定のうち、
1日以内に作成されたものを抽出する
コードをお見せします

コードがわかりにくくなる例
class CalendarSet
{
public Calendar[] Calendars;
}
class Calendar
{
public Schedule[] Schedules;
}
class Schedule
{
public DateTime ScheduleCreatedAt;
}
このようなクラス構成だとします

CalendarSet calendarSet;
var recentlyCreatedSchedules = new List<Schedule> { }; <- 結果を格納するもの

foreach (var calendar in calendarSet.Calendars) <- カレンダーセットのカレンダーでループ
{
}

{
foreach (var schedule in calendar.Schedules) <- カレンダーの予定でループ
{
}
}

{
{
if (schedule.ScheduleCreatedAt > DateTime.Now.AddDays(-1))
{ ↑ 1日以内に作成された予定を
}
}
}

{
{
{ ↑ 1日以内に作成された予定を
recentlyCreatedSchedules.Add(schedule); <- 結果リストに格納
}
}
}

var recentlyCreatedSchedules = new List<Schedule> { };
foreach (var calendar in calendarSet.Calendars)
{
foreach (var schedule in calendar.Schedules)
{
{
recentlyCreatedSchedules.Add(schedule);
}
}
}
↑ 結果を格納する一時変数が必要
ネストが深くて
理解しにくい

 今の例をLINQを使って書きなおしてみましょう

LINQを使う場合
calendarSet.Calendars.SelectMany(c => c.Schedules.Select(s => s))
.Where(s => s.ScheduleCreatedAt > DateTime.Now.AddDays(-1));

LINQを使う場合
！？！？！？！？！？

LINQを使う場合
1行で書けてしまう
ネストも深くならない
余計なローカル変数もない
シンプルなコードで可読性も高い

LINQとは
 Language Integrated Query
 日本語にすると “言語に統合されたクエリ”

LINQの種類
 LINQにはいくつも種類があり、代表的なもので
 LINQ to Objects
 LINQ to SQL
 LINQ to Entities
 LINQ to XML
など

LINQ to Objects
 今回はオブジェクトを扱う LINQ to Objectsについて
 LINQ to Objectsとは
 あらゆるコレクション(IEnumerableを実装するオブジェクト）をLINQで操作可
能にする
 例えば
 条件を満たす要素を取得
 特定の値が含まれているか
 操作を加える
 ソート
 等ができる

クエリ式とメソッド式
 LINQにはクエリ式とメソッド式の2つの記法がある
 メソッド式
 C# のメソッドと同じように”.”でチェーンして記述する方式
 var q = collection.Where(x => x > 10).Select(x => x * x);
 クエリ式
 SQLのようなクエリ構文でLINQを記述する方式
 var q = from x in collection where x > 10 select x * x;

 基本的にメソッド式を使う（一般的にも）
理由は
 クエリ式は必ず
from **** select ****
の形式になるので、Select()をしていないにも関わらずselectが必要
になり、何の処理が行われているかわかりにくい

 クエリ式にはない構文がある
 First() Single() 等
メソッド式
collection.Where(x => x > 10).Select(x => x * x).First();
クエリ式
(from x in collection where x > 10 select x * x).First();
無理やり使おうとするなら、一度クエリにしてから（カッコで囲んで）呼ぶ

 ただし、クエリ式のほうが優れている点もある
 ReactiveExtensionsを使って非同期処理を実装するとき
 複数の値を次のメソッドの引数として渡すとき
 メソッド式でも匿名型を用いることで、できないこともない
 など
が今の時点では使う機会はないので存在だけ知っていればよい

LINQの代表的なメソッド
 Select
 SelectMany
 Where
 All/Any
 OrderBy/OrderByDescending
 Contains
 Skip/SkipWhile
 Take/TakeWhile
 First/FirstOrDefault
 Concat
 ToArray/ToList

 Selecｔ
 シーケンスの値を一様に変換する
var numbers = Enumerable.Range(1,10);
var number = numbers.Select(x => x * 2);
 数字を2倍にしたものが帰ってくる

 ポイント
 基本的に次のメソッドには2つ以上の値を渡すことはできないが、匿名型を
使用することによって、疑似的にすることができる

 匿名型を使って引数を次の標準クエリ演算子へ渡す
var names = new[] { "Taro" , "Jiro" , "Saburo" , "Shiro" };
names.Select((name, index) => new { Name = name, Index = index })
.Where(o => o.Name.Length == o.Index )
.Select(o => o.Name + o.Index);
１．NameとIndexを持つ匿名型のシーケンスを作成し、
２．Nameの文字数とIndexが一致するものを選択し、
３．NameとIndexを結合した文字列のシーケンスが帰ってくる

 SelecｔMany
 シーケンスの各要素を1つのシーケンスに平坦化します。
var items = new[] {
new[] {1,2,3,4},
new[] {10,12,14},
new[] {20,22,24}
};
var result = items.SelectMany(item => item);
 平坦化されたシーケンス {1,2,3,4,10,12,14,20,22,24} が返ってくる
http://pro.art55.jp/?eid=1303957

 Where
 条件に合致するものを取得する
numbers.Where(x => x % 2 == 0);
 偶数の数列を取り出している

 All/Any
全部の値/一つ以上の値が条件を満たすかを判定する
numbers.Any(x => x % 2 == 0);
numbers.All(x => x > 3);
 一つ目は偶数がシーケンスに含まれているかを判定
 二つ目はシーケンスに含まれているすべての数字が3より大きいか判定

 OrderBy/OrderByDescending
 シーケンスをソートする
var persons = names.Select((name, index) =>
new { Name = name, Age = index * 2 });
persons.OrderByDescending(p => p.Age);
 匿名型のAgeで降順でソートされた結果が返ってくる
 { Name = waguchi, Age = 6 }
 { Name = wada, Age = 4 }
 { Name = yamaguchi, Age = 2 }
 { Name = yamada, Age = 0 }

 Contains
 シーケンスに特定の値が含まれているかを調べる
bool b = names.Contains("hanako");
 namesに”hanako”が含まれているか判定

 Skip/SkipWhile
 先頭からn個を除外/先頭から条件を満たすものを捨てる
var names = new[] { "Taro" , "Jiro" , "" , "Saburo" , "Shiro" };
names.Skip(3);
names.SkipWhile(name => name.Length <= 0);
 先頭から3要素を除外
 "Saburo" , "Shiro“
 要素の長さが０以下のものを除外
 "Taro" , "Jiro" , "Saburo" , "Shiro"

 Take/TakeWhile
 先頭からn個の要素を取得/先頭から条件を満たすものを取得
var names = new[] { "Taro" , "Jiro" , "" , "Saburo" , "Shiro" };
names.Take(3);
names.TakeWhile(name => name.Length > 4);
 先頭から3要素を取得
 "Taro" , "Jiro" , ""
 要素の長さが4より大きいのものを取得
 "Saburo" , "Shiro"

 First/FirstOrDefault
 シーケンスの最初の値を取得する
 FirstOrDefaultは要素が見つからない場合は既定値を返します。
numbers.First();
var strings = new String[] {};
strings.FirstOrDefault();
 それぞれ
 3
 null
が返ってくる

 Concat
 2つのシーケンスを連結する
var numbers2 = Enumerable.Range(15,20);
numbers.Concat(numbers2);
 numbersとnumbers2を連結した値
 { 1 , 2 , 3 , 4 , 5 , 15 , 16 , 17 , 18 , 19 , 20 }
 が返ってくる

 ToArray/ToList
 Array/Listに変換
numbers.ToArray();
numbers.ToList();
 それぞれ
new[] {1,2,3,4,5,6,6,7,8,9,10};
new List<int> {1,2,3,4,5,6,6,7,8,9,10};
 と同じものが帰ってくる

LINQを使うときの注意点
 LINQにはListのForEach()がない
 LINQは副作用がないのでForEachは実装されていない
 forEach構文をつかうことは可能
 ToList().ForEach()はシーケンスを一度Listに変換していて、
処理が多くなり、メモリ消費量も多くなるため、使ってはいけない
var collection = new[] { 1 , 2, 3 , 4 , 5 , 6 , 7 , 8 , 9 , 10 };
× collection.ToArray().ForEach(i => System.Console.Write(i));
○ foreach ( var i in collection )
{ System.Console.WriteLine(i); }

LINQを使うときの注意点
 LINQのCount()は使用しない
 Countはクエリが実行されるたびに、シーケンスの要素を数えなおすため、
必要以上に処理が走ってしまう
 もし個数を数えたい場合は、一度リストにしてから数える
var collection = new[] { 1 , 2, 3 , 4 , 5 , 6 , 7 , 8 , 9 , 10 };
int count = collection.ToList().Length;

LINQを使う場合
先ほどの例に戻りますが
各カレンダーの予定を平坦化されたものができる↑
そのなかから1日以内に作成されたものを取得してくる↑

LINQまとめ
コードの品質を高め、
生産性を上げることができます。
LINQが使える場所では
絶対に使いましょう。

C#を始めたばかりの人へのLINQ to Objects

More Related Content

What's hot (20)

Similar to C#を始めたばかりの人へのLINQ to Objects (20)

C#を始めたばかりの人へのLINQ to Objects