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Webと電子書籍の話
2015/10/07
株式会社達人出版会代表取締役
高橋征義
最初に質問
させてください
質問
• 電子書籍を読んだことのある方?(無料も含め
て)
質問
• 電子書籍を買ったことのある方?
質問
• 電子書籍を書いたことのある方?
質問
• 出版関係の方?
• 出版社、編集プロダクション、ライターの方
• 電子書籍サービス関係者の方
• 本を書いたことのある方
資料作成時点の予想
• 読んだことがある→7割
• 買ったことがある→5割
• 書いたことがある→1割
• 関係者→2、3名
自己紹介
自己紹介
• 高橋征義
• 札幌南40期
• 地球科学研究部
• 会長
自己紹介
• 株式会社達人出版会代表取締役
• ITエンジニア向けの技術系電子書籍の制作と
販売
• 紙で言うところの「出版社」兼「本屋」
• 社員2名(自分含む)
http://tatsu-zine.com/
自己紹介
• 一般社団法人日本Rubyの会代表理事
• プログラミング言語Rubyの開発者と利用者を
支援
• カンファレンスの開催等
• 再び「会長」業
https://www.flickr.com/photos/machu/5950109033/
https://www.flickr.com/photos/sora_h/15134822880/
自己紹介
本日のお題
Webと電子書籍
突然の結論
• 読み物メディアはこの20年ほど激変期にある
• 紙の本はなくならない、けれど位置づけは大き
く変わりそう
• 電子書籍とWebは複雑な関係にある
• 興味ある方は参加していただければ
本日のあらすじ
• そもそも電子書籍とは
• 電子書籍の特徴
• 電子書籍とWebの関係
• 電子書籍のはじめかた
• 電子書籍のこれから
そもそも電子書籍とは
• 「紙の書籍」の電子版
• ⇒「紙の書籍」が大前提としてあることが多い
そもそも電子書籍とは
• 「紙の書籍」とは
• 小説
• 辞書
• マンガ
• 雑誌?
• 同人誌??
• カタログ????
そもそも電子書籍とは
• なんでこんな基本から考える必要があるのか
• ⇒電子書籍では、この辺の境目が曖昧になる
ため
書籍
• 「本屋で売っていて、雑誌じゃないもの」
• マンガはちょっと微妙な立ち位置
• 含む場合と含まない場合がある
書籍
• 「出版社」→「取次」→「書店」という流れ
• 再販制度(通称)
• 出版社が定価を提示し、それを守らせる
• 勝手に値下げさせないようにできる
• 書籍・雑誌など限られた品目以外で行うと違
法(独占禁止法)
電子書籍の場合
http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/digital-text/2291657051/ref=zg_bs_nav_kinc_2_2275256051
紙もある
個人出版
電子のみ
お試し
一部のみ
マニュアル
http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/digital-text/2291657051/ref=zg_bs_nav_kinc_2_2275256051
電子書籍とは
• わりとなんでもあり
• 再販制度は適用されない
• 流通もバラバラ
• 総合書店・専門書店・出版社内書店・単なる
ダウンロード販売
• フォーマットや閲覧端末もいろいろある
• 互換性はあったりなかったり
「マルチメディア」
• 音声とか動画とかインタラクティブとか
• 1990年代からあった
• 最近でも話題になる
• とはいえ現状では傍流
「マルチメディア」
• インタラクティブを突き詰めると単なるアプリ
になる
• OS・閲覧機器等の「環境」に縛られてしまう
• iOSやAndroid用のアプリとして作られた電子
書籍のうち、初期のものはすでに読めないも
のも少なくない
• ↑みんなが思ってる「書籍」と違う
電子書籍とは
• 紙の本みたいなもの、だけど
• いろいろある
電子書籍の
これまでと現在
日本の電子書籍
• 電子書籍に関して独自の地位を保っていた(過
去形)
• 端末
• 売上
ざっくりな歴史
• 1990年
• データディスクマン(ソニー)
• CD-ROMと電子辞書の時代
ざっくりな歴史
• 1999年∼
• 「ザウルス文庫」
• 2003年∼
• ケータイ小説
• ケータイコミック
• (わりと黄金期)
https://web.archive.org/web/19991115032749/http://www.zaurusworld.ne.jp/
http://no-ichigo.jp/
ざっくりな歴史
• 2010年ごろ「電子書籍元年」
• 本当は元年でも何でもなかったけど
• 名前重要
• iPad、Kindleの流行
• 2012年 Kobo、Kindleが日本でサービス開始
電子書籍市場推移
http://www7b.biglobe.ne.jp/ yama88/info.html
紙書籍市場推移
http://www7b.biglobe.ne.jp/ yama88/info_2.html
マンガは電子+紙で微増
http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35059325/2/
(発表者向けのメモ)
• 一呼吸置く
• この辺で半分くらい
• 30分以上過ぎていたら少
し急ぐ
• まだ時間余ってそうなら
ゆっくり
私とWebと電子書籍
私とWebと電子書籍
• 1990∼1996 大学生(工学部情報工学科)
• 1996∼2010 Web(インターネット)屋さん
• 2010∼現在 電子書籍屋さん
大学時代
• 推理小説研究会とSF研究会
• (と天文同好会と教養新入生歓迎実行委員会に所属)
• 推理研とSF研の会誌を発行
• あと大学生協で の書評ビラを撒いたりとか
• Webに初めて触る(1994年ごろ)
• 推理研とSF研のWebサイトを作ってみる
• 今とやってることがあんまり変わってない…
Web屋さん時代
• 基本はWebプログラマ
• 2002年に転職
• あと最初の本を書いた
• 今でもサイトの改修とか新規サイトとかの作成
は普通にやっている
• というかやってなかったら今の仕事はなかった
電子書籍のきっかけ
• 海外の電子書籍サービスのユーザーだった
• 2009年に「真剣にお金を稼ぐことを考えるエン
ジニアの集い」の宴会で電子書籍サービスの実
現可能性について検討する
• 技術的には実現できそう
• 実現させるしか→時間とれない→本業に
• 要するに勢い
電子書籍屋さんへ
• 2010年6月に会社設立
• 2010年10月末にサービス開始
• 他社さんの電子書籍も販売することに
• 知っているひとは知っているニッチなサービス
Webを振り返って
• 1990年代後半:模索期
• 手探り・そもそもビジネスになるのか状態
• 2000年代前半:低迷期
• ITバブル崩壊
• 2000年代後半:普及期
• Web2.0、SNS
• 2010年代前半:成熟期
• ソシャゲ、アプリ
Webを振り返って
• 1990年代後半:模索期
• 手探り・そもそもビジネスになるのか状態
• 2000年代前半:低迷期
• ITバブル崩壊
• 2000年代後半:普及期
• Web2.0、SNS
今の電子書籍業界は
だいたいこの辺りに
似てそう
Webと電子書籍
Webのポイント
• 流通コストがとても低い(安い)
• 紙・CD・DVD・BD・MicroSD…と比べて
• いろいろ無料で配信される
• 無料に最適化されている
• ついでに制作費も安い…
• 順調に右肩下がり、海外との競争にもなる
Webのポイント
• とはいえ何でも無料でできるわけではない
• コストの回収方法?
• 広告費
• 会員制+月額課金
• アイテム課金(ゲームはともかくメディアだ
とちょっと辛い)
Webから引き継いだもの
• 要するにWeb技術をほぼそのまま利用
• HTML+CSS(+JavaScript)
• 版面(ページ)の作り方はWebと同様
• 互換性の問題はWebより大きめ
• 頑張ったスタイルは表示できない端末・サー
ビスがあって死ぬので注意
• JavaScriptはまだこれから
Webとの親和性
• 書店は人通りの多いところにある
• わざわざ探して行く場所にはなりづらい
• 電子書籍ストアはどうやって集客するか?
• →結局ネットから連れてくるのがベスト
• ストアにとってネットが「路面」、ネットが
ないと売れない
Webとの親和性
• ネットからの導線
• 検索エンジン
• 広告
• 普通のリンク
• ソーシャルからのリンク
「Webで十分では?」
• よく言われるし、一理ある
• 結局課金の問題?
• 「書籍」っぽさ
• 「無料じゃない」雰囲気の演出?
電子書籍とは
• 良くも悪くも紙に引きずられている
• 「紙書籍モデル」が洗練されすぎている
• 「Webの無料(+広告)モデル」も成功しすぎ
ている
• 両方から程よく離れるのが難しい
• まだまだ今後の課題
電子書籍のはじめかた
電子書籍の買い方
• 総合ストアで買う
• Kindle
• Kobo
• BOOK☆WALKER
• 紀伊国屋書店
• honto
• それ以外にもいっぱいある(ありすぎる)
電子書籍の買い方
• 専門ストア・出版社サイトで買う
• IT系技術書なら達人出版会以外にも、オライ
リージャパン、技術評論社、 オーム社、 イン
プレス、マイナビ、翔泳社、ラトルズなどな
どたくさんある
• その他のジャンルも専門ごとにあったりなか
ったり
電子書籍の買い方
• コミックはサービス・アプリがある
• comico、マンガボックス、LINEマンガ等
• マンガ図書館Zも
電子書籍の買い方
• 名作としては青空文庫
• iOS/Androidアプリが便利そう
• PCのブラウザからでも読めます
電子書籍の読み方
• 基本的にはサービス用の端末・アプリでしか読
めない物が多い
• 要はサービス専用のフォーマット
• EPUB、PDF等の汎用フォーマットのものは閲
覧ソフトで読める
• 出版社が自社サイトで販売しているものはだ
いたいPDFかEPUB
電子書籍の探し方
• 現状の課題
• 電子化されているかどうか、いつ電子化される
のかが分かりにくい
• 頑張って検索する
• 電子書籍の横断検索サービスの現状
• http://www7b.biglobe.ne.jp/ yama88/topi_7.html
電子書籍の探し方
• 書評サービスで探すことも
• ブクログ、読書メーター等
• この辺は紙の本とあまり変わらない
電子書籍の書き方
• 出版社に相談する・原稿を持ち込む
• 出版社によりけり
• IT技術書なら弊社でも承ります(それ以外
のジャンルだと他社さんを紹介するかも)
電子書籍の書き方
• 個人出版用のサービスを使う
• ストアのサービス
• Kindle、Kobo、BOOK☆WALKERなど
• 専用サービスを使う
• パブー、BCCKSなど
• 自分で販売する
• Gumroad、PayPal、booth
電子書籍の書き方
• 無料で配るだけならツールを使いこなせば何と
かなります
• 基本的なHTMLを自力で書ける・ブログを書
けるくらいのスキルがあれば、あとはツール
の使い方をマスターすれば作れるはず
電子書籍のこれから
定額読み放題
• 動画・音楽が先行
• 月額数百円∼数千円で何冊でも読める
• そのサービスが提供している本に限る
• 解約したら終わり
• 雑誌ではすでに始まっている
出版プロセスの見直し
執
筆
編
集
組
版
校
正
印
刷
製
本
流
通
陳
列
購
入
出版プロセスの見直し
執
筆
編
集
組
版
校
正
印
刷
製
本
流
通
陳
列
購
入
出版プロセスの見直し
執
筆
編
集
組
版
校
正
印
刷
製
本
流
通
陳
列
購
入
この辺で読者が買えたり
コメントできたりする
まとめ
メディアの激変期
• ネットの登場で読み物メディアは大きく変わっ
た
• 発信するのは誰でもできるけれど、読まれるの
は困難かつリスクがある時代
• まとまったコンテンツとしての「本」の再発見
• 単純にいろんな動きがあるのは面白い
紙の本はなくならない
• 紙は超便利
• 紙のエコシステムの完成度が高すぎ
• ただし、「紙がすべて」の時代は終わった
• 紙の本の宣伝・流通もネットを使う時代
• 結局棲み分け・使い分けになる
• 結論としては凡庸だけど世の中そんなもの
電子書籍はこれから
• いろいろある
• 紙の本から逸脱してなんぼ
• 新しい動きも始まっている
• マンガは興味深い
• Webの動きにも注目

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