CDP(顧客データ・プラットフォーム)とその周囲の機能コンポーネントの全体像を描いたスライド ■解説記事)CDP(顧客データ・プラットフォーム)について概観 https://note.com/masayamori/n/n9525b50c1303 CDP(顧客データ・プラットフォーム)は、カスタマージャーニーの中で顧客とブランドがどのようにインタラクションをしているのかを正確に把握することを可能にさせ、それに基づく効果的なマーケティング・キャンペーンの実施を助けます。 基本的に、CDPは、収集した自社の顧客関連データを一元化された顧客プロファイルに変換して格納している顧客データベースといえます。常に顧客データは最新に保たれていることによりその価値を発揮するため、多数のソースから顧客に関する新しいデータが手に入るとそれをタイムリーに更新するように構築されている必要があります。CDPを利用することで、顧客とのあらゆるインタラクションにおいてパーソナライズされたものを提供することができ、結果として、顧客のLTVを高めることにつながります。 ■CDP vs DWH, CRM, DMP 時として混同されていたり、あるいは、企業のシステムによっては複数の役割を兼ねていることもありますが、CDPは通常、Teradataに代表される DWH(データウェアハウス)、Salesforce に代表されるCRMシステム、また、DMP(データ管理プラットフォーム)とはその目的、位置づけ、管理者、ユーザーを異にします。 例えば、従来のDWH(データウェアハウス)は一般的にIT部門によって構築され、顧客データ・トランザクションデータが管理されます。その位置付けは、分析や将来のビジネス上の意思決定に使用される、部門を横断した企業の統合データの中央ストレージハブといえます。技術的に高度な仕組みになるため、専任のデータベース管理者(DBA)を必要とすることが多く、実際のアクセスはBIツールなどを介して企画部門やマーケティング部門が行い、データの分析がされます。 CRMは顧客管理・営業管理の民主化をもたらしてきた重要なシステムです。顧客データと見込み客データのすべてを1つのツールに統合し、顧客とのやりとりの可視性を高めます。 操作性の便利さが売りであり、それもあって営業現場によってデータが投入され、マネージされ、販売パイプラインを分析するために使用されます。 DMP は、Cookieや、AdID 等を用いながら、サードパーティーのユーザーデータを匿名情報として収集し、広告やターゲティングを改善・最適化していくことを目的としています。分析のためのプラットフォームではなく、デジタルチャネルにおけるプロモーション実行のための仕組みと言えます。 対して、CDPは、プライベートDMPと解釈されることもありますが、マーケティング戦略を最適化するために、自社(ファーストパーティー)のセグメント化されたオーディエンスプロファイルを特定することに重点を置いており、データリテラシーの高いデータサイエンティストやマーケターによって活用されることを想定されています。マーケティング担当者がカスタマージャーニーを強化するための土台となる、顧客セントリックなデータプラットフォームであり、DWHやCRM等の自社システム、ECや各種Web、ソーシャルメディア、POS等、多様なソースのサイロとなっている顧客データを統合して、自社の顧客像を明らかにしていきます。 CDP上で顧客プロファイルを作成していくにあたり、デモグラフィック(基本属性)、ビヘイビア(行動)、ジオグラフィック(地理情報)、サイコグラフィック(心理的属性) 、そして各種履歴情報(利用履歴、購買履歴)をベースとします。これらの組み合わせとして、ライフスタイルも重要な項目に加わります。ライフスタイルは、従来は、ドライブや、各種スポーツ、ゴルフ、釣り、ガーデニング等の趣味でしたが、現在はネット上におけるライフスタイル(ソーシャルメディアや好みのWebサイト)も大きく考慮されるべきでしょう。 また、CDPは、DMPやマーケティングオートメーションソフトウェアと連携することが大切です。これにより、電子メール、デジタル広告、SMS、テキストメッセージサービス等、クロスチャネルでありながらも、適切に顧客へのアプローチを行い、プロモーション等の各種マーケティング施策を実行することができます。 ■高度なアナリティクスを可能にするCDP CDPソフトウェアの中には、モダンな機械学習コンポーネントを有したAIアナリティクス機能を提供しているものがあります。CDPを構築し、データの可視化と分析ができるようになったら、このような高度な機能もチャレンジしていくことが大切です。CDPを構築してデータを収集し、最新に保って管理するだけでは、真に顧客のことを理解しているとは言えません。AIによるモデルを構築し、顧客へのサービスを予測に基づき改善し、最適化することを試みることで、企業はより顧客セントリックな存在になります。 ■CDPとプライバシー保護 現代において、プライバシー保護は顧客やマーケットとの信頼に関わる最優先事項です。GDPRやCCPAのような各国のデータプライバシー規制により、企業は顧客のデータを保護し、データ漏洩を防ぐことが求められています。 CDPの構築に際しては、システム的に信頼性の高いセキュリティ設定がなされていることを確認し、その管理や運用のプロセスや体制とともにデータプライバシー規制に準拠していることを確認する必要があります。どのシステムとインタラクションし、どのデータソースから顧客データをCDPへと集約させているのかの全体を明らかにしておくべきでしょう。 ■CDPも顧客目線で活用してこそ CDPを適切に構築することによって、顧客データは常に最新に保たれ、顧客像を鮮明に把握することができるようになり、すべてのチャネルで一貫したメッセージを配信し、カスタマイズされたインタラクションを行うことができるでしょう。 CDPのユースケースは豊富です。ですが、CDP を使って何をしていくべきか、というのは、基本的には唯一つです。自社の製品・サービスを求めている顧客について理解を深め、顧客のニーズにあった、顧客目線のコミュニケーションの起点とする、ということです。逆に言えば、顧客目線でのアクションにつなげていくという目的をもたないと、CDPもその価値を十分に発揮しないでしょう。 現代においては、顧客やマーケットからの信頼こそが、マーケティング活動における重要な基盤です。作成した顧客プロファイルも、顧客にとって価値のある形で活用しないと、直ちにその信頼は毀損され、あなたのマーケティング活動はその継続性を失うでしょう。何にもまして顧客目線であることが大切です。