SlideShare a Scribd company logo
オープンガバメントの系譜学に向けて 
庄司昌彦Masahiko Shoji 
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 主任研究員 
一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン代表理事 
1
疑問 
• オープンマインドになれないのは何故か? 
• オープンガバメントで日本は遅れているのか? 
• オープンガバメントのコンセプトは外来だから 
日本に根付かないのか? 
• 日本でオープンガバメントはどのように 
取り組まれてきたか? 
• 日本には自発的な統治の経験はなかったか? 
2
オープンデータの系譜学に向けて 
• Jonathan Gray 
– Open Knowledge 
政策・研究ディレクター 
– ロンドン大学ロイヤルホロウェイ 
• 3つのアプローチ 
– 歴史的:オープンデータの系譜学 
– 経験的:オープンデータの社会学 
– 理論的:オープンデータの規範分析 
Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data” 
http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data 
3 
By Jonathan Gay, CC-BY-SA
Research Questions 
• オープンデータのアイディアはどこから来たのか? 
• どのように今日の多様な意味体系を形成したか? 
• 誰がどう、何のためにコンセプトを用いているか? 
• オープンデータのコンセプトは、透明性、説明責任、 
民主主義、正義、市民社会と国家について理論化する 
広範な試みにどんな役割を果たしているか? 
• それが民主政治に何をもたらすのか? 
Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data” 
http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data 
4
いくつかのスレッドの提案 
• 公共部門の情報、オープンデータと経済成長 
– 1990年代-2000年代初頭のPSI政策議論、地理空間情報等 
• イノベーション、見えざる手、プラットフォームとしての政府 
– 米国政府(2003)、O’Reily(2010)、Steinbergほか(2007) 等 
• 透明性、効率性、公共部門改革とネオリベラリズム 
– クリントン・ゴア政権”Reinventing Government”プログラム等 
• オープンソース、オープンアクセスとシビックハッキング 
– 地理空間情報、オープンストリートマップ等 
• アドボカシーとジャーナリズムのためのオープンデータ 
Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data” 
http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data 
5
いくつかのスレッドの提案 
(庄司) 
6
日本の政治行政改革の背景 
• 鉄の三角形 
– 中央省庁がアジェンダ設 
定・利害調整で強い影響力 
– 業界と密接に連携し許認 
可・行政指導で利害を調整 
– 与党が承認し国会審議へ 
– 開発主義期の産業政策では 
効率的・効果的 
• 90年代以降の変化 
– 特定非営利活動促進法(98年) 
– 情報公開法(99年) 
– 国家公務員倫理法(00年) 
– 連立政権(93年~)常態化、 
与党間調整 
– 内閣機能の強化 
– 情報化による国民の知識生 
産や協力行動の活性化 
7 
参考:チャルマーズ・ジョンソン 
『通産省と日本の奇跡』(1982年) 
行政
日本の電子政府施策の展開 
コミュニティ 
行政 
政治 
バックオフィス 
フロントオフィス 
選挙 
世論形成 
政府の取組み 
行政
「eデモクラシー論」 
• 「ミネソタeデモクラシー」(1994年中間選挙) 
– スティーブン・クリフト 
• 「ICTを活用してデモクラシーを再生・発展させていくこと、すな 
わちICTによって市民の参画を促し、政治や行政の活動の質を高め 
ていくこと」 
• 期待 
– 双方向性や公開性、多数参加などの情報技術の特性を生かす 
– 政策形成過程の改善 
• さまざまな立場の人々の政策形成への参加 
• より多くの人々が納得する合意の形成 
• 政策形成過程の透明化 
– 討議民主主義(deliberative democracy)や公共圏(public sphere) 
9 
政治
政治 
創発民主制 
Emergent Democracy 
• 伊藤譲一(2003年) 
– (ツールの進化に伴うインターネットの)覚醒は、企業や政府 
に権力が集中した結果として腐敗した民主制が、本来もってい 
た基本的属性を支援する(略)政治モデルの構築を促進するこ 
とになるだろう。 
– 新しい技術は、より高度の秩序をもたらし、その結果として、 
複雑な諸問題に対処しつつ現行の代表民主制を支援、変更、も 
しくは代替しうるような、新しい形の民主制が創発してくる可 
能性がある。 
– 新しい技術はまた、テロリストや専制政治体制をエンパワーす 
る可能性ももっている。これらのツールには、民主制を高度化 
する力もあれば劣化させる力もあるため(略)、よりよい民主 
制のためにこれらのツールが開発されるよう、できるだけ影響 
力を発揮しなくてはならない。 
Version1.3 公文俊平訳を参照(2003年3月) http://www.glocom.ac.jp/project/odp/library/75_02.pdf 10
11 
社会関係資本Social Capital 
• R.パットナム 
– 南北イタリアと 
米国の研究 
– 協調行動(小集団活動) 
の創発がカギ 
– 協調行動を活発に 
する社会的特徴 
• 信頼 
• 互酬性 
• 市民参加の 
ネットワーク 
– 橋渡し型と結束型 
社会
人のつながりと地域活性化のモデル 
12 
社会 
(つながりを深める) + (つながりを作る) 
内部の一体感や 
安心・信頼の醸成 
外部のコミュニティや 
人 
との連携 
地域にさまざまな中間集団・協力行動が生まれ、 
活動が活発化し、安心、楽しさ、発見が生まれる 
生活利便性向上、イベント、安全・安心、まちづくり、顧客開拓・販売促進、観光客誘致等
歴史の中の小集団 
• 鎌倉~室町以降の(惣)村と都市 
– 寄合から惣掟(インフラ管理等)、農業生産性向上、 
年中行事、芸能(田楽、茶の湯、連歌等)が発達 
– 18世紀後半には、1500の村で常設舞台による歌舞伎 
– 19世紀半ば、村は全国に64,000ヶ所存在 
• 寺子屋・私塾から郷学(17c~19c) 
– 教育、娯楽、生活と社会運営に必要な知識インフラ 
– 地域の豪農を中心に、村の文明開化を目指して教師を招聘 
– 民権への芽生え→地域で集団討議や共同学習を重ねる 
– 1880年代、十‐数百人の結社・学習集団は全国2000以上 
13 
社会 
参考:国立歴史民俗博物館展示 
池上英子『美と礼節の絆日本における交際文化の政治的起源』, NTT出版, 2005
掛川市の市民力と金融 
• 地域SNS先進地、オープンデータにも着手 
• 生涯学習都市→小集団活動 
• 「市民総代会・地区集会」 
– 各地区から役員などが集まり、地域が抱える課題な 
どについて、市長・幹部職員等と意見交換 
– 意見や要望は、重要度・緊急度に応じ翌年の施策や 
予算編成に反映。市の考え方を『市長・区長交流控 
帖(市民総代会の記録)』としてまとめ配布 
14 
社会
掛川市の市民力と金融 
• 地域金融の文化伝統 
– 掛川信用金庫: 
• 日本最古の信用金庫。尊徳の弟子、岡田良一郎が地域振興の 
ため1879(M12)年に設立した勧業資金積立組合が前身 
– 寄付による掛川城天守閣再建: 
• 総額12億円中、個人が5億円、市民が5億円を寄付し賄う 
– 寄付による新幹線駅建築: 
• 総額110億円中、市民寄付30億円。38000世帯=1軒10万円 
報徳思想:「経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、 
いずれ自らに還元される」 
15 
社会

More Related Content

PPTX
「日本におけるオープンデータ」 の系譜学に向けて
PPTX
「オープンデータ1.0」の評価とオープンデータ活用推進基本法の構想
PPTX
シンポジウムⅡ:個人情報・マイナンバー・ビッグデータ 「個人」に関する社会課題 と電子行政
PPTX
行政機関が保有するデータの新規公開促進に向けた「オープンデータラウンドテーブル」の考察
PPTX
インターナショナル・オープンデータ・デイin掛川 プレイベント
PPTX
データビジネス現在進行系
PPTX
信用スコアとは 概要、問題点、情報社会学的観点
PPTX
川崎市における 環境情報・写真データを用いた コミュニティ活性化の研究
「日本におけるオープンデータ」 の系譜学に向けて
「オープンデータ1.0」の評価とオープンデータ活用推進基本法の構想
シンポジウムⅡ:個人情報・マイナンバー・ビッグデータ 「個人」に関する社会課題 と電子行政
行政機関が保有するデータの新規公開促進に向けた「オープンデータラウンドテーブル」の考察
インターナショナル・オープンデータ・デイin掛川 プレイベント
データビジネス現在進行系
信用スコアとは 概要、問題点、情報社会学的観点
川崎市における 環境情報・写真データを用いた コミュニティ活性化の研究

What's hot (12)

PPTX
Open Data / MyData
PDF
私たちが住んでいる街と歩むオープンデータ
PDF
私たちが住んでいる街と歩むオープンデータ
PPTX
官民データ活用に向けた「地方豪族企業」の考察
PPTX
2012 sts学会-「参加型民主主義」のための情報導線―道はついたのか
PPTX
地方豪族論in札幌
PDF
20140325e aac ワークショップaoki
PDF
20140309社会情報学会関西支部第1回研究会aoki
PPTX
【UDC2015】地域課題の「設定」とオープンデータ - 庄司昌彦
PPTX
知識が生まれる場の作り方
PPTX
地域成長マネー供給の新たな核「地方豪族」
PPTX
オープンデータ最新動向(2014年11月13日版)
Open Data / MyData
私たちが住んでいる街と歩むオープンデータ
私たちが住んでいる街と歩むオープンデータ
官民データ活用に向けた「地方豪族企業」の考察
2012 sts学会-「参加型民主主義」のための情報導線―道はついたのか
地方豪族論in札幌
20140325e aac ワークショップaoki
20140309社会情報学会関西支部第1回研究会aoki
【UDC2015】地域課題の「設定」とオープンデータ - 庄司昌彦
知識が生まれる場の作り方
地域成長マネー供給の新たな核「地方豪族」
オープンデータ最新動向(2014年11月13日版)
Ad

Similar to オープンガバメントの系譜学に向けて (20)

PDF
OpenDataKyoto(20130420)
PPTX
141030オープンデータ 監査人
PPTX
210512opengovernment101
PPT
Okumura
PDF
OpenGLAM(20130813)
PDF
20140530 第10回gisコミュニティフォーラム
PDF
7th_LinkedData(20131008)
PDF
Nii(20110106)
PDF
20100610 opengov h_okumura
PDF
Jeita(20100914)
PDF
千葉から始まるネット市民革命-ネット選挙運動とガバメント2.0-|庄司昌彦【国際大学GLOCOM 主任研究員】
PPT
201306 オープンデータ
PDF
「オープンガバメント」時代の 政府情報アクセスとアーカイブズに関する 予備的考察(古賀崇)
PDF
YODS(20121124)
PDF
Nii(20100722)
PDF
20131020 オープンデータビジネス〜世界の最先端事例とビジネスモデルを紹介〜
PDF
Yokohama stream(20101026)
PDF
オープンガバメントと危機管理 20121031
PDF
JEITA(20110301)
PDF
Politics
OpenDataKyoto(20130420)
141030オープンデータ 監査人
210512opengovernment101
Okumura
OpenGLAM(20130813)
20140530 第10回gisコミュニティフォーラム
7th_LinkedData(20131008)
Nii(20110106)
20100610 opengov h_okumura
Jeita(20100914)
千葉から始まるネット市民革命-ネット選挙運動とガバメント2.0-|庄司昌彦【国際大学GLOCOM 主任研究員】
201306 オープンデータ
「オープンガバメント」時代の 政府情報アクセスとアーカイブズに関する 予備的考察(古賀崇)
YODS(20121124)
Nii(20100722)
20131020 オープンデータビジネス〜世界の最先端事例とビジネスモデルを紹介〜
Yokohama stream(20101026)
オープンガバメントと危機管理 20121031
JEITA(20110301)
Politics
Ad

More from Masahiko Shoji (18)

PPTX
マイナンバーカードの交付について 地方の現状および制度全般への意見
PPTX
パーソナルデータと公益性
PPTX
新型コロナウィルス対応の初動においてシビックテックが果たした役割と中長期的課題
PPTX
東京オープンデータデイコメント(SDGsとか行政DXとか)
PDF
ラウンドテーブル「広域秋葉原とeスポーツの持つ可能性」
PPTX
テクノロジーと地域の「ヒト・モノ・カネ」の未来
PPTX
広域秋葉原作戦会議プロジェクトの問題意識と目的
PPTX
国内における地域SNSの事例数の推移とその背景
PPTX
官民データの利活用社会に向けて
PPTX
Open Knowledge Japan
PPTX
オープンデータの本質と活用事例
PPTX
環境情報・写真データを用いた コミュニティ活性化支援に関する共同研究 ~川崎タイムマシン~ 「環境」×「川崎の過去・現在」を対話する
PPTX
「認知症の人にやさしい地域づくり」評価指標の作成と活用
PPTX
オープンデータとSNSは 地域の交通課題、地域活性化に どう活用できるか
PPTX
Open Mind, Open Knowledge, Open Society
PPTX
ハッカソンを考える
PPTX
ICTと都市文化(ICPC情報通信政策研究会議2015)
PPTX
情報公開とオープンデータ
マイナンバーカードの交付について 地方の現状および制度全般への意見
パーソナルデータと公益性
新型コロナウィルス対応の初動においてシビックテックが果たした役割と中長期的課題
東京オープンデータデイコメント(SDGsとか行政DXとか)
ラウンドテーブル「広域秋葉原とeスポーツの持つ可能性」
テクノロジーと地域の「ヒト・モノ・カネ」の未来
広域秋葉原作戦会議プロジェクトの問題意識と目的
国内における地域SNSの事例数の推移とその背景
官民データの利活用社会に向けて
Open Knowledge Japan
オープンデータの本質と活用事例
環境情報・写真データを用いた コミュニティ活性化支援に関する共同研究 ~川崎タイムマシン~ 「環境」×「川崎の過去・現在」を対話する
「認知症の人にやさしい地域づくり」評価指標の作成と活用
オープンデータとSNSは 地域の交通課題、地域活性化に どう活用できるか
Open Mind, Open Knowledge, Open Society
ハッカソンを考える
ICTと都市文化(ICPC情報通信政策研究会議2015)
情報公開とオープンデータ

オープンガバメントの系譜学に向けて

  • 1. オープンガバメントの系譜学に向けて 庄司昌彦Masahiko Shoji 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 主任研究員 一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン代表理事 1
  • 2. 疑問 • オープンマインドになれないのは何故か? • オープンガバメントで日本は遅れているのか? • オープンガバメントのコンセプトは外来だから 日本に根付かないのか? • 日本でオープンガバメントはどのように 取り組まれてきたか? • 日本には自発的な統治の経験はなかったか? 2
  • 3. オープンデータの系譜学に向けて • Jonathan Gray – Open Knowledge 政策・研究ディレクター – ロンドン大学ロイヤルホロウェイ • 3つのアプローチ – 歴史的:オープンデータの系譜学 – 経験的:オープンデータの社会学 – 理論的:オープンデータの規範分析 Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data” http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data 3 By Jonathan Gay, CC-BY-SA
  • 4. Research Questions • オープンデータのアイディアはどこから来たのか? • どのように今日の多様な意味体系を形成したか? • 誰がどう、何のためにコンセプトを用いているか? • オープンデータのコンセプトは、透明性、説明責任、 民主主義、正義、市民社会と国家について理論化する 広範な試みにどんな役割を果たしているか? • それが民主政治に何をもたらすのか? Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data” http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data 4
  • 5. いくつかのスレッドの提案 • 公共部門の情報、オープンデータと経済成長 – 1990年代-2000年代初頭のPSI政策議論、地理空間情報等 • イノベーション、見えざる手、プラットフォームとしての政府 – 米国政府(2003)、O’Reily(2010)、Steinbergほか(2007) 等 • 透明性、効率性、公共部門改革とネオリベラリズム – クリントン・ゴア政権”Reinventing Government”プログラム等 • オープンソース、オープンアクセスとシビックハッキング – 地理空間情報、オープンストリートマップ等 • アドボカシーとジャーナリズムのためのオープンデータ Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data” http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data 5
  • 7. 日本の政治行政改革の背景 • 鉄の三角形 – 中央省庁がアジェンダ設 定・利害調整で強い影響力 – 業界と密接に連携し許認 可・行政指導で利害を調整 – 与党が承認し国会審議へ – 開発主義期の産業政策では 効率的・効果的 • 90年代以降の変化 – 特定非営利活動促進法(98年) – 情報公開法(99年) – 国家公務員倫理法(00年) – 連立政権(93年~)常態化、 与党間調整 – 内閣機能の強化 – 情報化による国民の知識生 産や協力行動の活性化 7 参考:チャルマーズ・ジョンソン 『通産省と日本の奇跡』(1982年) 行政
  • 8. 日本の電子政府施策の展開 コミュニティ 行政 政治 バックオフィス フロントオフィス 選挙 世論形成 政府の取組み 行政
  • 9. 「eデモクラシー論」 • 「ミネソタeデモクラシー」(1994年中間選挙) – スティーブン・クリフト • 「ICTを活用してデモクラシーを再生・発展させていくこと、すな わちICTによって市民の参画を促し、政治や行政の活動の質を高め ていくこと」 • 期待 – 双方向性や公開性、多数参加などの情報技術の特性を生かす – 政策形成過程の改善 • さまざまな立場の人々の政策形成への参加 • より多くの人々が納得する合意の形成 • 政策形成過程の透明化 – 討議民主主義(deliberative democracy)や公共圏(public sphere) 9 政治
  • 10. 政治 創発民主制 Emergent Democracy • 伊藤譲一(2003年) – (ツールの進化に伴うインターネットの)覚醒は、企業や政府 に権力が集中した結果として腐敗した民主制が、本来もってい た基本的属性を支援する(略)政治モデルの構築を促進するこ とになるだろう。 – 新しい技術は、より高度の秩序をもたらし、その結果として、 複雑な諸問題に対処しつつ現行の代表民主制を支援、変更、も しくは代替しうるような、新しい形の民主制が創発してくる可 能性がある。 – 新しい技術はまた、テロリストや専制政治体制をエンパワーす る可能性ももっている。これらのツールには、民主制を高度化 する力もあれば劣化させる力もあるため(略)、よりよい民主 制のためにこれらのツールが開発されるよう、できるだけ影響 力を発揮しなくてはならない。 Version1.3 公文俊平訳を参照(2003年3月) http://www.glocom.ac.jp/project/odp/library/75_02.pdf 10
  • 11. 11 社会関係資本Social Capital • R.パットナム – 南北イタリアと 米国の研究 – 協調行動(小集団活動) の創発がカギ – 協調行動を活発に する社会的特徴 • 信頼 • 互酬性 • 市民参加の ネットワーク – 橋渡し型と結束型 社会
  • 12. 人のつながりと地域活性化のモデル 12 社会 (つながりを深める) + (つながりを作る) 内部の一体感や 安心・信頼の醸成 外部のコミュニティや 人 との連携 地域にさまざまな中間集団・協力行動が生まれ、 活動が活発化し、安心、楽しさ、発見が生まれる 生活利便性向上、イベント、安全・安心、まちづくり、顧客開拓・販売促進、観光客誘致等
  • 13. 歴史の中の小集団 • 鎌倉~室町以降の(惣)村と都市 – 寄合から惣掟(インフラ管理等)、農業生産性向上、 年中行事、芸能(田楽、茶の湯、連歌等)が発達 – 18世紀後半には、1500の村で常設舞台による歌舞伎 – 19世紀半ば、村は全国に64,000ヶ所存在 • 寺子屋・私塾から郷学(17c~19c) – 教育、娯楽、生活と社会運営に必要な知識インフラ – 地域の豪農を中心に、村の文明開化を目指して教師を招聘 – 民権への芽生え→地域で集団討議や共同学習を重ねる – 1880年代、十‐数百人の結社・学習集団は全国2000以上 13 社会 参考:国立歴史民俗博物館展示 池上英子『美と礼節の絆日本における交際文化の政治的起源』, NTT出版, 2005
  • 14. 掛川市の市民力と金融 • 地域SNS先進地、オープンデータにも着手 • 生涯学習都市→小集団活動 • 「市民総代会・地区集会」 – 各地区から役員などが集まり、地域が抱える課題な どについて、市長・幹部職員等と意見交換 – 意見や要望は、重要度・緊急度に応じ翌年の施策や 予算編成に反映。市の考え方を『市長・区長交流控 帖(市民総代会の記録)』としてまとめ配布 14 社会
  • 15. 掛川市の市民力と金融 • 地域金融の文化伝統 – 掛川信用金庫: • 日本最古の信用金庫。尊徳の弟子、岡田良一郎が地域振興の ため1879(M12)年に設立した勧業資金積立組合が前身 – 寄付による掛川城天守閣再建: • 総額12億円中、個人が5億円、市民が5億円を寄付し賄う – 寄付による新幹線駅建築: • 総額110億円中、市民寄付30億円。38000世帯=1軒10万円 報徳思想:「経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、 いずれ自らに還元される」 15 社会