SlideShare a Scribd company logo
13
Most read
16
Most read
18
Most read
1/20
by Anry(@anry_1225)
数学カフェ Advent Calendar 2017 12.18
〜圏論に於ける準同型定理の表現〜
2/20
今回、本当に詰め込みすぎて、分かりにくさMAXの
できになってしまっています。申し訳ございません。
今後、復習のために修正して投稿をしようと思いま
す。数学に慣れていない方々、申し訳ございません。
3/20
数学カフェとの出逢い 〜Mathカフェ行ったら人生変わったwww〜
始まりは、2016年7月の数学カフェ圏論回。圏論に興味があった私は、自分
の浅学さには思い切って目をつぶり、共に勉強してくれる仲間を求めて参加し
た。驚くべきことに、なかなかの広さの講義室が満室になるほどの人が、みん
な熱心に高等数学の講義を聴いてメモを取っている。しかも最も驚いたの
は、”勉強”しなくていいはずの社会人が参加し、講義までしているということ
であった。講義は5時間くらい行われた。
「…なんて狂ったイベントなんだ ((((゜Д゜;))ゴクリ」
まずもっての私の感想は、これである。勘違いしないでほしい、褒め言葉で
ある。圏論回はとても勉強になった。以降の勉強の励みにもなったし、多くの
数学仲間とも知り合えた。(数学カフェの中の人がすんごくいい人で、浅学な
私にも優しく接してくださり、多くの方々と接する機会を与えてくださった)
それからというもの、数学カフェに何度もお世話になることになる。スピン
オフのセミナーやイベントにも参加したり、予習回のセミナーまで担当させて
頂けたり、数学漬けの日々を送ることになった。
4/20
数学を勉強していると、面白いことに、普段の思考まで整理され、日常的な
意見さえも論理的になってきた。自分の研究分野(心理学)の研究計画や、論
文構成も理路整然となっていくのがわかる。研究や人間に対する審美眼も養わ
れ、物事の本質がはっきりと立ち現れて見えるのだ。
この1年で、私は見違えるほど自らが成長したと思う。これまでは自分の知
らない知識が出てきたら狼狽し、まるでコミュ症の童貞が初対面の女性に出
会ったようにしどろもどろであった。それが今や、すべての知識は定義から成
る論理体系の中の一つであると知り、臆することなく学ぶ癖がついた。もうど
んな難しい理論であったとしても、理解できるという確信がある1)。数学カ
フェは、私の人生を変えてくれた。心から感謝している。
今回は私が初めて参加した数学カフェ圏論回にちなんで、圏論にまつわる記
事を寄稿させていただく。
2017.12.18 Anry
数学カフェとの出逢い 〜Mathカフェ行ったら人生変わったwww〜
5/20
準同型定理 @集合論
前提1) 𝑋, ~ :集合、写像による同値関係
( 𝑓: 𝐴 → 𝐵 、 𝑎, 𝑎′ ∈ 𝑋 に対して𝑓 𝑎 = 𝑓(𝑎′)が成り立つ関係)
前提2)商写像 𝑞: 𝐴 → 𝐴/~
𝑓: 𝐴 → 𝐵, 𝑓 𝐴 ⊂ 𝐵の時
𝐴 →
𝑞
𝐴/~ →
𝑓
𝐵 𝑓 = 𝑞; 𝑓
という合成ができる 𝑓 がただ一つ存在する。
そして、その終域が𝑓(𝐴) となる
𝑓: 𝐴/~ → 𝑓(𝐴)は、全単射となる。
証明はまた今度!!
6/20
圏@圏論
1)対象(Object)の集まり
2) 射(Morphism・Arrow)の集まり
3) 𝑓: 𝐴 → 𝐵という射があるときの
射𝑓に関するドメイン(Domain): dom 𝑓 = 𝐴
射𝑓に関するコドメイン(Codomain): cod 𝑓 = 𝐵
( A、 𝐵における射の集まりをC(A, 𝐵)と書く)
定義:圏𝐂は以下を満たす
7/20
4)dom 𝑓 = 𝑐𝑜𝑑 𝑔となるような
𝑓と𝑔の射の合成𝑓; 𝑔(図式順記法)
これらは以下の結合律を満たす:
任意の射 𝑓: A → 𝐵, 𝑔: 𝐵 → 𝐶, ℎ: C → 𝐴 に対し
𝑓; 𝑔 ; ℎ = 𝑓; (𝑔; ℎ)
5)以下を満たす、各対象𝐴に対する恒等射𝑖𝑑 𝐴: 𝐴 → 𝐴
任意の射𝑓: 𝐴 → 𝐵に対し、𝑖𝑑 𝐴; 𝑓 = 𝑓 かつ 𝑓; 𝑖𝑑 𝐵 = 𝑓
定義:圏𝐂は以下を満たす
圏@圏論
8/20
数式アレルギーの方は赤文字だけ追いましょう
(対象、射、ドメイン、コドメイン、射の合成、恒等射)
…これが圏𝐶の構成要素2)です
圏@圏論
9/20
例:しりとりの圏
(キマイラ飼育記「http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20060821/1156120185」より)
ちなみにこの図は@ta_to_coさん、
@delta2323_ さんらに助けてもらい
ながら描きました。心からの感謝!
(アイヌになってるのがミソ)
圏@圏論
10/20
モノ射 @圏論
定義
𝐂:圏
射 𝑓: 𝐵 → C がモノ射であるとは
同じく圏𝐂の射 𝑔: 𝐴 → 𝐵, ℎ: A → B において
𝑔; 𝑓 = ℎ; 𝑓 ならば 𝑔 = ℎ
𝐴 𝐵 𝐶
𝑓𝑔
ℎ
11/20
モノ射 @集合論
𝕊𝑒𝑡(集合圏)ではモノ射は単射(i. e. 𝑓 𝑎 = 𝑓(𝑎′) ⟹ 𝑎 = 𝑎′)
<証明(十分条件:モノ射⟸単射)集合論の世界から>
𝑓: 𝐵 → 𝐶が単射であり、モノ射ではないとする。
(すなわち 𝑔, ℎ: A → B が 𝑔; 𝑓 = ℎ; 𝑓 であるが 𝑔 ≠ ℎ であるとする。)
Aの元𝑎を2つの異なる写像で移すとすると𝑔 𝑎 ≠ ℎ(𝑎)となる。
単射である𝑓との合成を考えると𝑓(𝑔 𝑎 ) ≠ 𝑓(ℎ 𝑎 )となるため
単射の定義に矛盾する。
よって𝑔 = ℎでなければならず、十分条件を満たす。
12/20
𝕊𝑒𝑡(集合圏)ではモノ射は単射(i. e. 𝑓 𝑎 = 𝑓(𝑎′) ⟹ 𝑎 = 𝑎′)
<証明(必要条件:モノ射⟹単射)圏論の世界から>
𝑓: 𝐵 → 𝐶がモノ射であり、単射ではないとする。
(すなわち異なる 𝑏, 𝑏′ ∈ B が 𝑓(𝑏) = 𝑓(𝑏′)であるとする。)
ここでA = 𝑎 シングルトン 単元集合 とする。
𝑔: 𝐴 → 𝐵を𝑎から𝑏への、ℎ: 𝐴 → 𝐵を𝑎から𝑏′への射とする( 𝑔 ≠ ℎ )
モノ射である𝑓との合成を考えると𝑓(𝑔 𝑎 ) = 𝑓(ℎ 𝑎 )となり
モノ射の定義に矛盾する。
よって𝑔 = ℎでなければならず、必要条件を満たす。
モノ射 @集合論
13/20
エピ射 @圏論
定義
𝐂:圏
射 𝑓: A → 𝐵 がエピ射であるとは
同じく圏𝐂の射 𝑔: 𝐵 → 𝐶, ℎ: B → 𝐶 において
𝑓; 𝑔 = 𝑓; ℎ ならば 𝑔 = ℎ
𝐴 𝐵 𝐶
𝑓 𝑔
ℎ
14/20
エピ射 @集合論
𝕊𝑒𝑡(集合圏)ではエピ射は全射
(i. e. 𝑓: 𝐴 → 𝐵のとき∀𝑏 ∈ 𝐵ならば
∃𝑎 ∈ 𝐴となるような𝑓(𝑎) → 𝑏が存在する)
証明略!!(すいません)
15/20
(エピ-モノ分解) @圏論
定義
𝐂:圏
射 𝑓: 𝐴 → B は以下のような標準的分解ができる
e: エピ射、 𝑚: モノ射
A →
𝑒
𝐶 →
𝑚
𝐵
@集合論 @圏論
16/20
この、圏論に於けるエピモノ分解は
集合論に於ける準同型定理といえる
𝑓: 𝐴 → 𝐵, 𝑓 𝐴 ⊂ 𝐵の時
以下の合成ができる 𝑓 が
ただ一つ存在する
𝐴 →
𝑞
𝐴/~ →
𝑓
𝐵
𝑓 = 𝑞; 𝑓
射 𝑓: 𝐴 → B は以下の分解ができる
(e: エピ射、 𝑚: モノ射)
𝐴 →
𝑒
𝐶 →
𝑚
𝐵
ローグエピ
17/20
数学ができない・文系ということで尻込みしてる人たちへ
どうも、こないだ、平方完成を忘れて解の公式さえ導出できなかった
博士学生です。そんな奴だって数学やっていいんです。
文系の方々にとっては、数学〜〜って感じの解析系からやるより、論
理学からやった方が楽しいんじゃないかなって思います。高校数学ま
でって、初等幾何・解析よりの内容が多いと思うんですよ。私は大学数
学を学んでから、数学がとても楽しいと思うようになりました。
数学の中で、感激する話を持つこともお勧めです。私が初めて「スゲ
〜〜〜〜!!」って思った数学の話は、極限と連続の話、そう、εーδ論
法の話でした。その体験は、ずっと勉強のモチベーションを支えてくれ
ています。数学を通して見る世界って、とても美しいです!!!
𝐴 𝐵 𝐶
𝑓 𝑔
ℎ
18/20
数学は情熱があれば必ず応えてくれる
数学は才能がないとできない?若いうちにやらないと意味がない?私は、
そういう意見には大反対です。哲学者のカント、そしてヘルムホルツは、
数学の概念は生まれつき備わっていると言いました3)。どんなに難しい数
学の山も、踏みしめる一歩一歩はそんなに高くありません。我々には、足
がちゃんとついています。時には、登り方がわからない崖だったり、心臓
破りの急勾配があったりします。それでもしっかり足腰を鍛えれば、共に
歩む仲間や指導者がいれば、垣間見える山頂の美しい数学体系があれば、
必ず、登りきることができると思います。
ローグエピ
𝐴 𝐵 𝐶
𝑓 𝑔
ℎ
19/20
注釈
1. どんなに複雑な理論体系であっても、理解は基本的に誰にでも
できると思っている。ただそれにどれだけ時間がかかるのかは
わからないし、理解は創造と区別して述べている。
2. 構成要素をさらに細かくする述べ方もある。例えば射の合成を
演算として要素とみなすなど。
3. 数学の概念というよりは、1階の述語論理、あるいは数え上げ
や比較など、初等数学的な概念、というべきか。これについて
はヘルムホルツの訳書 (Love, M.F. (interpreted) (1977). Numbering
and measuring from an epistemological viewpoint. In Epistemological
Writings (pp. 72-114). Springer Netherlands.)、カントの「プロレゴ
メナ」を勧める。
加えて、いつも私のめちゃくちゃな数学の質問に快く答えてくださる
数学クラスタの方々(特にこの記事においては
ありさん、Oonoさん、s.t.さん、Umezakiさん、Yamashitaさん)
そして、私にたくさんの機会を与えてくださった数学カフェの中の人
本当にありがとうございました
あとあと、これを見ているかわかりませんが
檜山先生、大人のための数学教室「和」さんにも
心から感謝申し上げます
20/20
参考資料
(URLは全て2017.12.19現在のもの)
松本 眞. (2013). 代数系への入門.(http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/~m-mat/TEACH/daisu-
nyumon.pdf)
檜山正幸のキマイラ飼育記.(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/)
Mac Lane, S. (1971). Category theory for the working mathematician.
Pierce, B. C. (1991). Basic category theory for computer scientists. MIT press.

More Related Content

PDF
Rolling Hashを殺す話
PPTX
Chokudai search
PDF
色々なダイクストラ高速化
PDF
グラフネットワーク〜フロー&カット〜
PDF
プログラミングコンテストでの動的計画法
PDF
確率論基礎
Rolling Hashを殺す話
Chokudai search
色々なダイクストラ高速化
グラフネットワーク〜フロー&カット〜
プログラミングコンテストでの動的計画法
確率論基礎

What's hot (20)

PDF
最急降下法
PDF
因果推論の基礎
PDF
ドロネー三角形分割
PDF
Variational AutoEncoder
PDF
強化学習の基礎的な考え方と問題の分類
PDF
直交領域探索
PDF
プログラミングコンテストでのデータ構造
PDF
幾何コンテスト2013
PDF
PRMLの線形回帰モデル(線形基底関数モデル)
PDF
楕円曲線入門 トーラスと楕円曲線のつながり
PDF
プログラミングコンテストでのデータ構造 2 ~動的木編~
PDF
PFI Seminar 2012/03/15 カーネルとハッシュの機械学習
PDF
Trianguler
PDF
大規模グラフアルゴリズムの最先端
PDF
[DL輪読会]Control as Inferenceと発展
PDF
双対性
PDF
最小カットを使って「燃やす埋める問題」を解く
ZIP
今さら聞けないカーネル法とサポートベクターマシン
最急降下法
因果推論の基礎
ドロネー三角形分割
Variational AutoEncoder
強化学習の基礎的な考え方と問題の分類
直交領域探索
プログラミングコンテストでのデータ構造
幾何コンテスト2013
PRMLの線形回帰モデル(線形基底関数モデル)
楕円曲線入門 トーラスと楕円曲線のつながり
プログラミングコンテストでのデータ構造 2 ~動的木編~
PFI Seminar 2012/03/15 カーネルとハッシュの機械学習
Trianguler
大規模グラフアルゴリズムの最先端
[DL輪読会]Control as Inferenceと発展
双対性
最小カットを使って「燃やす埋める問題」を解く
今さら聞けないカーネル法とサポートベクターマシン
Ad

Similar to 数学カフェAdvent calendar2017 12_18〜圏論に於ける準同型定理〜 (20)

PDF
Cat at Young Pioneer's Presentation 2014/7/26
PDF
Scala 初心者が米田の補題を Scala で考えてみた
PDF
x^2+ny^2の形で表せる素数の法則と類体論
PDF
introductino to persistent homology and topological data analysis
PDF
表現論 ゼミ資料
PDF
モナモナ言うモナド入門
PDF
Introduction of introduction_to_group_theory
PDF
シンギュラリティを知らずに機械学習を語るな
PDF
2016年度秋学期 応用数学(解析) 第2回 無限にも大小がある (2016. 10. 6)
PDF
Math20160415 epsilondelta
PDF
Fundations of information geometry chap0
PPTX
圏論は、随伴が全て
PDF
Math club public
PDF
Coq関係計算ライブラリの開発と写像の性質の証明
PDF
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第2回 無限にも大小がある (2014. 10. 2)
PDF
グレブナー基底輪読会 #1 ―準備体操の巻―
PDF
PDF
自動定理証明の紹介
PDF
Introduction to Categorical Programming
PDF
Limit as adjointment
Cat at Young Pioneer's Presentation 2014/7/26
Scala 初心者が米田の補題を Scala で考えてみた
x^2+ny^2の形で表せる素数の法則と類体論
introductino to persistent homology and topological data analysis
表現論 ゼミ資料
モナモナ言うモナド入門
Introduction of introduction_to_group_theory
シンギュラリティを知らずに機械学習を語るな
2016年度秋学期 応用数学(解析) 第2回 無限にも大小がある (2016. 10. 6)
Math20160415 epsilondelta
Fundations of information geometry chap0
圏論は、随伴が全て
Math club public
Coq関係計算ライブラリの開発と写像の性質の証明
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第2回 無限にも大小がある (2014. 10. 2)
グレブナー基底輪読会 #1 ―準備体操の巻―
自動定理証明の紹介
Introduction to Categorical Programming
Limit as adjointment
Ad

数学カフェAdvent calendar2017 12_18〜圏論に於ける準同型定理〜