Sangyo2008 07

情報産業・職業論 ⑦ 第 2 部　第 2 回　「所有」から「使用」への権利ビジネス　―音楽産業を事例に― Opening Theme 『絶唱カラオケマンの歌』山本まさゆき 1992 年，詞・曲 : 山本正之

JASRAC 守ろう著作権 ! 「悪者扱い」される JASRAC( ネットではカスラックなる蔑称も ) 社団法人日本音楽著作権協会音楽著作権の集中管理機構音楽著作物使用のあらゆる局面で「著作権使用料」を取り立て JASRAC の活動が日本人に著作権の重要性を知らしめてきた功績も

JASRAC の仕組み著作権管理 ( 信託 ) 業務文化庁長官による認可事業

「禁止」が原則の著作権例外として列挙された適用除外の「公正利用 ( フェアユース ) 」以外は，著作権者の明示的な許諾 ( 同意 ) がない限り，著作物を使用することが禁止許諾とは「契約」であり，当事者間の合意ところが「誰に許諾を求めればいいのか」 ( 著作権者が誰なのか ) さえ不明なケースが多い

集中許諾システム著作権者から財産権を信託されている楽曲 ( 国内外合計 720 万曲 ) に関しては， JASRAC が権利者として許諾 ( 権利管理の集中 ) 。申し込み，規定の使用料を支払えば著作物を利用できる強制許諾なので，著作権者の意向に左右されることなく，使用希望者を差別待遇することもない他の著作物分野にはないシステム

支分権著作権 ( 財産権 ) の内容は，著作物の利用態様ごとにそれぞれ支分権として著作権法に規定されており，著作者はそれぞれの態様による利用についての独占的排他的権利を有する複製権，上演権・演奏権，上映権，公衆送信権，口述権，展示権，頒布権，譲渡権，貸与権，翻訳権・翻案権，二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

JASRAC ができないこと映画， CM ，ゲームなどでの利用は使用料の算定が難しいので， JASRAC ではなく原権利者と相対取引のケースも JASRAC に信託しない権利者もいる支分権単位で別の管理会社に信託することも ( 著作権管理業における競争 ) JASRAC は経済権のみ行使。「著作者人格権」は判断できない ( 人格権は譲渡や信託の対象にならないため )

JASRAC 使用料徴収額推移

レコード産業の生産額推移一九九八年度の六〇七四億円をピークに、二〇〇六年度は四〇八四億円まで縮小

ダウンロード (2006) 数量：千回　金額：百万円

CD 不況でも音楽は動ぜず ( シングル )CD からネットワークへ，頒布メディアは遷移したが，「著作権使用料徴収額」は増加基調 ( 他の分野に先駆けて，ノン・パッケージへの移行が進む ) 「 ( 複製物の ) 頒布・所有」だけでなく，「多様な局面での使用」で報酬を得るという著作権ビジネスが成立しているから

小室哲哉被告みずからが所有していない音楽著作権を譲渡すると偽り，兵庫県内の投資家から５億円をだまし取った詐欺容疑で逮捕・起訴される ( 釈放済み ) 「事業失敗」や「浪費」の果てに，金銭的に行き詰まり，窮余の策としての詐欺 ? 　「落ちたヒットメーカー」などとバッシング

音楽著作権の分類譲渡・共同使用抵当

音楽著作権の流れ著作者->音楽出版社に著作権を譲渡音楽出版社-> JASRAC に著作権を信託 JASRAC-> 権利者として「使用料」を徴収し，音楽出版社に分配する音楽出版社は手数料を控除して，著作者に「使用料」を還元する ( 著作者は出版社に対して報酬を請求する権利を持つ )

音楽の著作者のフトコロ著作者 ( 小室哲哉 ) は 806 曲の使用料を還元される権利を死後 50 年まで有するただし「抵当権設定」が可能なので，税金未納・慰謝料未払いなどで「差し押さえ」が可能出版権は区分所有 (5 ％とか ) が可能なので，小室哲哉が保有する企業が全曲分を所有するケースはありうる原盤権からも著作者への還付はある

ＣＤの売上分配　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　歌唱印税 =0.75 ％ ( 芸団協 = 隣接権 ) 作詞作曲印税＝各 2.75 ％ (JASRAC) 原盤印税 (5 ～ 10 ％ ) の還付

アーティストの収入 (1) 作詞・作曲印税 (JASRAC) (2) 歌唱印税 ( 芸能実演家団体協議会 ) (3) 原盤印税の還付 ( 原盤制作会社 ) (4) 二次使用著作権使用料 (JASRAC) (5) テレビ， CM などの出演料 ( 所属プロダクション ) (6) 公認グッズのロイヤルティー ( 同 )

宇多田ヒカル’ 02 年収入 9 億円 CD 売上 573 万枚・ 133 億 5000 万円浜崎あゆみ ( 115 億 8000 万円 ) を抑え， CD セールス No.1 に返り咲きあゆの推定年収は 10 億 2730 万円 ( 歌手 1 位 : 全国 37 位 ) 11 traveling(s) 3 光 (s) 5 SAKURA ドロップス (s) 6 DEEP RIVER (A)

宇多田ヒカルの所属レコード会社： EMI( ヴァージンレコーズ←レーベル ) 音楽出版社： ( デビュー時 ) ソニー・ミュージックパブリッシング->イーエムアイ音楽出版プロダクション：有限会社ユースリーミュージック ( 宇多田照實社長 )

トライアングル体制レコード会社＝専属実演家契約音楽出版社＝著作権譲渡契約プロダクション＝マネジメント契約

音楽出版社とは音楽の著作物を管理し，原盤に録音し，著作権の利用の開発 (TV 番組や CM とのタイアップ ) を図ることを業とする者作詞・作曲家は音楽出版社に権利を譲渡し，その利用の対価 ( 報酬 ) を受け取る ( 出版社が 25 ～ 33 ％の管理料を徴収 ) 複数の音楽出版社が共同で版権管理も原盤製作会社と共同原盤権も

原盤製作会社自ら資金を提供してスタジオを借り，スタジオ・ミュージシャンやエンジニアの協力を得て，マスターテープ ( 原盤 ) を製作し「原盤権」を取得一次使用者であるレコード会社に「複製権」を許諾して著作権使用料 (10 ～ 15 ％ ) を受領「単独原盤」と「共同原盤」

宇多田ヒカルの場合音楽出版はイーエムアイ音楽出版とユースリー・ミュージックが共同管理 ( 管理割合は不明 ) 。『 SAKURA ドロップス』 (TBS 系ドラマ『 First Love 』主題歌 ) のみ，日音 (TBS 系音楽出版社 ) と U3 原盤製作はレコード会社 ( 東芝 EMI)← 現在では珍しいケース

放送ブランケット契約：放送局の放送事業収入 ( 売上高 ) の一定の掛け率 ( 通常の局は 1.5 ％ ) を音楽著作権使用料とみなす放送局は JASRAC に対して，使用した楽曲のデータを提供する (JASRAC が権利者に分配する場合の基礎データ ) IP マルチキャストなど“ネット放送“はブランケットの対象にならない

レンタルＣＤ貸与権。月間貸与回数に応じて芸団協および JASRAC に使用料を支払う-> 歌唱者と著作者。レコード会社 ( 隣接権者 ) には納品時に徴収 ( サーチャージ方式，アルバム 330 円，シングル 85 円 ) 貸与禁止期間。アルバムは翌々週土曜日，シングルは火～水発売は当該週の水曜 ( アルバム扱いのケースも )

カラオケカラオケ :7395 億円市場 ( 微減 ) 店舗面積・定員などで事業者が使用料を支払い

ネットワーク配信使用料インタラクティブ配信。最低使用料月額 5000 円。ダウンロード型は情報料の 7.7 ％または 3.85 円～ 7.7 円ストリーム型は月間情報料 ( 広告料 ) の 1 ～ 3.5 ％。個人の「非商用配信」も， 1 曲月額 150 円 (10 曲 1000 円 ) で利用可能。 http://www.jasrac.or.jp/network/

私的録音録画補償制度 ● 録音機器標準価格の 65 ％相当額の 2% 。ただし上限 1,000 円 ● 記録媒体標準価格の 50% 相当額の 3% MD ， DAT ，録音用 CD-R(W)

JASRAC 大賞（ 02 年度）分配額 2 位 ( 銀賞 ):traveling ， 5 位 :DISTANCE ， 7 位 :SAKURA ドロップス着メロ 1 位 :SAKURA ～， 6 位 : traveling ， 7 位 :DISTANCE レンタル 7 位 : 光， 8 位 :SAKURA ～カラオケ 14 位 :SAKURA ～有線放送リクエスト 10 位― SAKURA ～

宇多田ヒカルの稼ぎの内訳印税収入 (7 ％と仮定 )― 9 億 3450 万円使用料収入― 10 億円程度家族で経営する U3 ミュージックが版権管理をしているので，宇多田ヒカルにどれだけの給与を支払うかは随意 ( さらに個人資産管理会社がある可能性も )

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