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単純性皮下膿瘍に対する
トリメトプリム・スル
ファメトキサゾール(ST
合剤)
とプラセボとの比較
・米国では、皮下膿瘍による救急受診がMRSAの
出現に伴い増加しつつある。切開排膿を受け
る患者における抗菌薬の補助的投与の役割は
明らかにされていない。
・また1993年から2005年の間、皮膚・軟部組織
感染のER受診件数が120万から340万件に増え、
これらの多くの原因は皮下膿瘍であった。さ
らにこの期間中community associated
MRSA(CA-MRSA)が世界の国々で皮膚・軟部組
織感染の最も多い起炎菌となった。
・一般的に切開排膿は皮下膿瘍のstandard治療
であり、抗菌薬の併用の効果についてはいま
だに議論されており、以前の小規模のstudyは
抗菌薬を投与してもプラセボとの差がないと
いう結論だった。
・切開排膿のみでも80%の治癒率があるため、
抗菌薬投与の有効性を検討するため、大規模
のstudyが必要であった。
・トリメトプリム・スルファメトキサゾール
(ST合剤)はCA-MRSAが原因となる皮膚・軟
部組織感染に対して頻繁に使われている抗菌
薬である。
・2009年4月から2013年4月の間、身体診察・
US検査で皮下膿瘍と思われる皮膚病変(ただ
し直径2cm以下で出現して1wk未満のもの)
を主訴に救急外来を受診した12歳以上の患者
を対象とした。
・他施設の救急外来におけるdouble-blind RCT
で、切開排膿+ST合剤の7日間treatment
courseと切開排膿+プラセボを比較した。
・皮下膿瘍と診断してから、皮膚病変を切開排
膿して、ST合剤またはプラセボの7日間コー
スを処方した(一日トリメトプリム320mg・
スルファメトキサゾール1600mg分2)
・治療期間中のDay4とDay8、治療終了時の
Day10、Test-of-cureのDay14、そして
extended test-of-cureのDay49にfollow upを
行った。
・Primary outcomeはDay14のfollow up visitに
皮下膿瘍が臨床的に治癒していること。
・Secondary outcomeは追加切開排膿処置、新
しい皮膚病変の出現、家庭内の新感染と定義
された。
・本studyに参加した1265人中、1247人
(98.6%)は無作為にST合剤群もしくはプラ
セボ群に振り分けられ、処方された薬剤を最
低1回服用した。その1247人の中で807人
(64.7%)はコンプライアンスを100%守った
とされており、214人(17.2%)が76から90%
のコンプライアンス率となった。
・45.3%の参加者にMRSAが検出され、この中で
97.4%の場合はST合剤sensitiveなMRSAであっ
た。
・Clinical cureについて: 最低1回服用した群
に関しては臨床的治癒率はST合剤群では
80.5%、プラセボ群は73.6%だった。
・75%のコンプライアンス以上の群ではST合剤
群の92.9%、プラセボ群の85.7%の臨床的治癒
となった。
・Secondary outcomeにおいてもST合剤群はプ
ラセボ群に比べたら有意に優れている(追加
切開排膿処置:3.4%vs8.6%、新しい皮膚病変
の出現:3.1%vs10.3%、家庭内の新感染:
1.7%vs4.1%)
・Adverse effects:全体的にST合剤群とプラセ
ボ群の副作用発生率はほぼ等しく、認めた場
合でも軽度であった。もっとも多い副作用は
消化器関連のもの(下痢など)で命にかかわ
るようなeventはなかった。
・以前に行われた小規模Studyは皮下膿瘍に対
して切開排膿に加え、抗菌薬投与は本来の
standard治療とは有意な差を示さなかった。
・しかし今回の大規模studyにおいて皮下膿瘍
に対して切開排膿に加え、ST合剤投与
(320mgトリメトプリム・1600mgスルファメ
トキサゾール)を受けた群の治癒率が有意に
高いことが分かった。
・またST合剤投与を受けた参加者にも副作用の
発生率が低く、あったとしても軽度。
・ST合剤は安価で安全性の高い抗菌薬であり、
切開排膿との併用で、より効果的な皮下膿瘍
のtreatmentである。
・Limitations:糖尿病などの持病のある患者は
対象とされていたものの、Studyに関わった一
部の医師はこういったhigh riskの患者に参加
してほしくなかったというselection bias
・皮下膿瘍の水疱内をMRSA minimum
inhibitory concentrationにまで達するために、
一日160mgトリメトプリム・800mgスルファ
メトキサゾール分2は十分だが、今回のstudy
では効果性をより確実に検討するため、その2
倍を使用した。
・切開排膿という処置は施行者の技術によって
効果性が変わる。(今回のstudyでは施行者た
ちが事前に同じ切開排膿処置トレーニングを
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