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2012年3月23日
平成23年度
「業務最適化のための業務モデリングに関する調査研究」
調査研究2:制度に基づく手続き情報の標準モデル化と検証
報告書
報告資料
1
0.目次
0.目次
1.調査の概要
(1)本調査研究の目的
(2)本調査研究における実施内容の概要
2.モデリングの検証
(1)検討対象手続の選定
(2)モデリングツールの選定
(3)検討
A.記載対象の抽出
B.法律の個別分析
C.法律の全体分析
D.課題、提言等
3.標準モデル化動向の整理
(1)調査概要
(2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
(3)BRMの活用状況調査のまとめ
報告書 本編
P. 1
P. 3
P. 4
P. 5
P. 6
P. 7
P. 11
P. 12
P. 15
P. 82
P.109
P.120
P.121
P.123
P.199
2
0.目次
<別紙>
・モデリング結果
-別紙2(3)B①_1_特定家庭用機器再商品化法(第3章_小売業者の収集及び運搬)
-別紙2(3)B①_2_特定家庭用機器再商品化法(第4章_製造業者の引取)
-別紙2(3)B②_1_特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収業者の登録)
-別紙2(3)B②_2_特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン破壊業者の許可申請)
-別紙2(3)B②_3_特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収手続)
-別紙2(3)B③_1_省エネ法(工場等)
-別紙2(3)B③_2_省エネ法(輸送)
-別紙2(3)B④_1_育児介護休業法(育児休業)
-別紙2(3)B④_2_育児介護休業法(介護休業)
-別紙2(3)B⑤_1_鉱業法_鉱業権の許可(旧法)
-別紙2(3)B⑤_2_鉱業法_許可基準(旧法)
-別紙2(3)B⑤_3_鉱業法_鉱業権の許可(現行法)
-別紙2(3)B⑤_4_鉱業法_許可基準(現行法)
-別紙2(3)B⑥_e-Gov「経済産業大臣に対する申出」
-別紙2(3)B⑦_行政手続法(申請に対する処分)
-別紙2(3)B⑧_1_消費生活用製品安全法(EnterpriseArchitect版_重大製品事故の報告等)
-別紙2(3)B⑧_2_消費生活用製品安全法(ARIS-Express版_重大製品事故の報告等)
-別紙2(3)B⑨_e-Gov「特別用途食品の許可」
-別紙2(3)B⑩_中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(経営革新計画書の申請・承認)
-別紙2(3)C②_1_比較A.法律と手引書の違い(フロン破壊業者の許可申請_手引書ベース)
-別紙2(3)C②_2_比較A.法律と手引書の違い(フロン破壊業者の許可申請_法令ベース)
-別紙2(3)C③_1_比較B.モデル作成者の違い(経験が少ない担当者)
-別紙2(3)C③_2_比較B.モデル作成者の違い(経験が多い担当者)
-別紙2(3)C⑤_1_適合判断の表現(ゲートウェイカスケード接続)
-別紙2(3)C⑤_2_適合判断の表現(サブプロセス化)
<参考>
・【参考1 】検討対象手続の選定 初期の検討
・【参考2 】ヒアリング結果
報告書 別紙、参考
P.201
P.202
P.206
33
1.概要
1.概要
(1)本調査研究の目的
(2)本調査における実施内容の概要
44
(1)本調査研究の目的
1.調査の概要
業務・システムの最適化を進めるためには、業務を正確に表現し検討を行うための業務分析手法を導入していくことが重要
である。現在、政府においては業務・システム最適化指針に示された手法で業務分析を行うことが多いが、指針が策定されて
から時間が経過しており、新しい手法が台頭すると共に、業務を実現するためのプラットフォームが変化してきている。
電子政府で先行する米国政府においては、積極的にこれらの新しい環境に応じた業務モデリング手法を活用しており、政
府内部の業務分析を高度化すると共に、業務モデリングツール・マーケットの活性化や、民間に対する先進事例の蓄積を図っ
ている。
行政機関にとって、アカウンタビリティの確保、行政機関間のインタオペラビリティの確保の観点からも、標準化され可視化
ができる業務モデリングツールは非常に重要である。また、これらの新しい手法やツールの特徴として、業務モデリングからシ
ステム構築までが連携して行えることがある。 業務モデリングの成果物をシステムに展開できることは、開発期間の短期化、
品質向上等にも繋がっていく。
業務を正確に分析しモデルとして表記することと共に重要なのが、業務の標準モデル化である。米国政府が推進する
Enterprise Architectureでも参照モデルとして業務のひな形の検討を行っている。民間においても取引手順を標準モデル化し
たSCOR(Supply Chain Operation Reference model)が整備され、取引手順の意識の共有やシステム開発に役立てている。
標準モデルを整備することは、業務見直しなどの効率化を実現すると共に、誤手続きの防止等が可能になると考えられてい
る。
本事業は、政府内の業務・システムの最適化や調達プロセスにおける、新しい業務モデリング手法による高度化の
可能性、導入の可能性の検証を行うことを目的とする。
特に、行政の業務の基本となる、法律・手続き可視化の可能性を検証することを重点的に扱う。
具体的には、検証対象に選定した法律・手続きについて、業務フローのモデル化の実践を通じで、モデル化の課題
や効果を検討する。
55
(2)本調査研究における実施内容の概要
1.調査の概要
行政の制度は条文などの文字情報で表現されているが、手続きを表しているものについては業務のプロセス、フローとしてモデル
による表記を行うことが可能であると推測される。そこで制度の業務プロセス表記を試行し、制度の可視化を図り、制度可視化の効
果や、制度可視化時に表現しきれない事項などの制約などの検証を行った。また、米国政府の業務参照モデル(BRM)等のプロセス
面での活用に関する現状を調査し、その普及や活用状況を元に、制度可視化への示唆を整理した。
以下に実施内容の概要を記す。
大項目 小項目 概要
【1】
制度表記手
法としての
モデリング
手法の検証
(1)検討対象手続の選定
総務省が運営するe-Govの行政手続き案内検索などにある政府機関の手続・法律を選択
する。10種程度の手続・法律を行う。
(2)使用モデリングツール
の選定
検討に用いるモデリングツールを決定する。3種類のツールを使用。
(3)選定した手続の検討
手続根拠の法令などを参照しながら、選択した制度・法律をBPMNで記述する。
制度をモデリング手法で可視化した時に表現しきれない制約などの検証を行う。
(4)ヒアリング調査の実施 学識経験者や本件に関係する実務関係者など3名を実施。
(5)BPELで出力したイメー
ジの整理
BPMNで記述したモデルを、BPELによってエキスポートする。
BPELでエキスポートを行う場合の利点と欠点の整理を行う。
【2】
標準モデル
化動向の整
理
(1)米国政府BRM等に関
する調査
米国政府の業務参照モデルについて、業務の標準モデルという観点から普及や活用状況
を調査する。米国7機関程度へのヒアリングを実施。標準モデル化についての示唆を整理
する。
(2)民間や海外の類似事
例調査
業務参照モデルについて、海外での民間・公共の類似事例を調査し、整理する。
【3】報告書作成
上記の結果を踏まえて、課題の整理や今後の取り組み方向性検討などを実施し、本報告
書にまとめる。
66
2.モデリングの検証
2.モデリングの検証
(1)検討対象手続の選定
(2)モデリングツールの選定
(3)検討
7
強い制約
弱い制約
法令
法律
政令
省令
ガイドライン
手引書
手続書
公表物
(民間向け)
内部資料
(政府等公共向け)
(1)法律のみ
(2)法令のみ
(3)公表物
(1)検討対象手続の選定
2.制度表記手法としてのモデリング手法の検証
本調査では行政に関する制度についてモデリングを行った。対象とする制度を選定するにあたり法令並びに法令に関連のある文書の
分析を行う。法令には法律、政令、省令が存在する。その他法令に関連する資料としてガイドライン、手引書といった民間向けに公表さ
れている文書がある。また政府等公共向けには手続書といった内部資料が存在する。法制度としての制約力は法律が最も強く、次に政
令、省令の順に制約力を有する。公表物、内部資料の制約力は法令に比較すると弱い。
本調査では法律のみを対象とするのか、法令のみを対象とするのか、公表物を含めたものを対象とするのか、の検討を行い、
幅広く深堀調査を行うため法令、公表物を含めた文書を調査対象とすることにした。なお、今回は公表されている文書のみに限定した
(省庁内部の非公開文書は取上げない)。
今回の対象範囲
8
(1)検討対象手続の選定 ①法律の分析
2.モデリングの検証
本調査は「広く浅く検証を行うが、数を絞った一部の法令については深く分析する」という方針で作業を進めることとした。
本調査で対象とする法令を選定するにあたり以下の選定基準を設け、それぞれの評価を行った。
①手続きの量 (量が少ないものは対象外。但し条文数があまりにも多いものは対象外とする。)
②条件等表記バリエーションの存在有無 (分岐、複数関係者とのやりとり、並行、等の機能が含まれているものを選定)
③消費者寄り、経済産業省周辺の手続き (理解、評価を行いやすいものを選定)
④周知度の高さ、説明資料の豊富さ (公表物等が存在するものを選定)
また法律の条文からトップダウンでモデリングを行うだけではなく、実際に具体的に用いられている手続きからモデリングを
行う為にe-Govから手続選定を行った。
法律を選定する際には以下の選定比較表を用い評価を実施した。選定した内容は次葉をご参照いただきたい。
9
No 法律名 位置付け
モデリング
対象
所管省庁 ツール 備考
1
特定家庭用機器再商品化法
(家電リサイクル法)
全体深堀 全体 経済産業省
Enterprise
Architect
2
特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実
施の確保等に関する法律
(フロン回収破壊法)
全体深堀
法令、手引書検証
部分
経済産業省
環境省
Enterprise
Architect
比較作業(A)
3
エネルギー使用の合理化に関する法律
(省エネ法)
全体深堀 部分 経済産業省 Intalio BPMS
4
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行
う労働者の福祉に関する法律
(育児介護休業法)
全体深堀 部分 厚生労働省 ARIS Express
5 鉱業法 法律・新旧比較 鉱業出願 経済産業省
Enterprise
Architect
直近に改正された
法律
6
経済産業大臣に対する申出(e-Gov)
(根拠法:家庭用品品質表示法)
e-Gov
個人から行政への申
請
経済産業省
環境省
Enterprise
Architect
7 行政手続法 モデラーの違い
7条「申請」について
の手続
総務省 ARIS Express 比較作業(B)
8 消費生活用製品安全法 ツールの違い 事故発生時の対応 経済産業省 ★ 比較作業(C)
9
特別用途食品の許可(e-Gov)
(根拠法:健康増進法)
e-Gov 複数省庁が関連 消費者庁
Enterprise
Architect
10 中小企業の新たな事業活動の促進に関する法
律 申請に関する検証
9条「申請」について
の手続
経済産業省 ARIS Express 標準化の検討
(1)検討対象手続の選定 ②選定した法律
2.モデリングの検証
★:Enterprise ArchitectとARIS Expressでモデリングを実施。
※比較作業(A)、(B)、(C)は次葉ご参照
今回、調査対象とした法律は下記の通りである。
10
本調査ではモデリング表記について、個々の法律モデル化の評価・分析に加えて、以下の比較作業を
実施した。
比較作業(A) : 法令等のみを元にしたモデルに加えて、公表されている手引書等の情報を加えて修正した
モデルを別途作成。
- 法律のみのモデル、政令、省令を加えたモデル、を作成し比較を行う。
- 法律のみのモデルは抽象度の高いものになるので、どの部分との比較を行いたいかと
いう観点より作業内容を決定する。
比較作業(B) : 属性の異なる複数の作業者が同一の対象をモデル化を実施。
-特定のプロセス(法律の一部)に対しBPMN有識者成果物とBMMN非有識者成果物との比較
を行う。
比較作業(C) : 同一のモデル(全く同じモデル)を複数のツールで作成
- 特定のプロセス(法律の一部)に対し2つのツールで同じ作業者がそれぞれのモデルを作成
し比較を行う。
(1)検討対象手続の選定 ③比較作業
2.モデリングの検証
1111
(2)モデリングツールの選定
2.モデリングの検証
販売会社名 Intalio スパークスシステムズジャパン Software AG
製品シリーズ名 BPMS Enterprise Architect ARIS
製品細目 Community Edition デスクトップ版 ビジネスモデリング版 ARIS Express
特徴
無償
80%オープンソース
UMLモデリングツー
ルとしても高評価
BPEL変換が可能な
ソフトとしては安価
無償
文法確認機能の有無 ○ × ○ ×
業務シミュレーション機能の有無 ○ × × ×
コストシミュレーション機能の有無 ○ × × ×
プロトタイプやウォークスルーでの検
証機能の有無
○ × × ×
BPMN対応バージョン 2.0 1.1、2.0 1.1、2.0 2.0
システム形態
PC用
アプリケーション
PC用
アプリケーション
PC用
アプリケーション
PC用
アプリケーション
XPDL若しくはBPEL対応機能の有無 ○(BPEL) × ○(BPEL) ×
ツール市販の有無 無償配布有り 市販有り 市販有り 無償配布有り
今回の利用目的 BPMN作成、BPEL化 BPMN作成 BPEL化 BPMN作成
モデリングに使用するツールは無償若しくは安価なもので、且つIT業界で比較的利用者の多いツールを選定した。
選定したツールは以下の通り。
12
A.記載対象の抽出 ①関連政令の抽出
2.モデリングの検証 (3)検討
記載対象とした法律の条文から、関連する法律、政令、省令、手引書等を抽出した。抽出した内容に対し、モデ
リング記述対象となる条文や記載箇所の選別、記載単位の決定を行った。
法律と政令、省令の対応関係の
整理を行ったケース
13
記載対象とした法律の条文に対し、モデルを表記する際、どのようにタスクとして表記するかの検討を行った。
(実施方法)
1.条文をプロセス上にタスクとして表現できるかどうか、条件が付随するかどうかを条、項、号、毎に判定する
2.施行令、施行規則の参照箇所を三段対照表より調べてタスクの表現に影響するもののみ該当条文を記載する
3.条文をタスクにした場合の主語を判定する(主務大臣、製造業者等、等)
4.1タスクを表現するものを1つにグルーピングして採番し、表右側の主体別の列上にタスクを記載していく。
条番号 タイトル 法文
モデリン
グ可否
区分 条件 概要
不適な
事由 主語
<T1>
小売業
タスク
<T2>
主務大
臣タスク
<T3>
製造業
者タスク
<T4>
市町村
タスク
<T5>
指定法
人タスク
<T6>
その他
のタスク
第一章 総則
2
主務大臣は、前項に規定する勧告を受けた製造業者
等が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとら
なかったときは、当該製造業者等に対し、その勧告に
係る措置をとるべきことを命ずることができる。
プロセス ●
主務
大臣
T2-12
第二十九条
指定引取場
所の配置等
製造業者等は、指定引取場所の設置に当たっては、
地理的条件、交通事情、自らが製造等をした特定家
庭用機器の販売状況その他の条件を勘案して、特定
家庭用機器廃棄物の再商品化等に必要な行為の能
率的な実施及び小売業者、第三十二条第一項に規定
する指定法人又は市町村による特定家庭用機器廃棄
物の当該製造業者等への円滑な引渡しが確保される
よう適正に配置しなければならない。
プロセス
製造
業者
等
T3-11
2
製造業者等は、指定引取場所を指定したときは、当該
指定引取場所の位置について、主務省令で定めると
ころにより、遅滞なく、公表しなければならない。これを
変更したときも、同様とする。
プロセス ●
施行規則
第16条
製造
業者
等
T3-12
施行規
則参照
第三十条
市町村長等
による申出
市町村の長及び小売業者は、製造業者等が指定引
取場所を適正に配置していないことにより、当該製造
業者等が第十七条の規定により引き取るべき特定家
庭用機器廃棄物の当該製造業者等への引渡しに著し
い支障をきたす事態が生ずるおそれがあると認めると
きは、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対
し、その旨を申し出ることができる。
プロセス ●
施行規則
第17条
市町
村の
長及
び小
売業
者
T9-1
施行規
則参照
T9-1
施行規
則参照
① ③② ④
記述するタスクの単位を法令の
条文と対応付けて整理したケース
A.記載対象の抽出 ②タスク表記の検討
2.モデリングの検証 (3)検討
14
No 言い回し 例 BPMNでの表記案
1 ~とする。 定めるものとする。 通常のプロセスで表現
2 ~しなければならない。 協力しなければならない。 通常のプロセス(~する)で表現
3 ~することができる。 命ずることができる。 ① ゲートウェイで判断
② する場合、しない場合を記載
4 ~してはならない。 拒んではならない。
A.記載対象の抽出 ③BPMN表記法検討
2.モデリングの検証 (3)検討
各条文を以下の10種の区分を
使って分類。区分プロセスの条
文をモデリングする。
(区分)
・法の目的
・例外処理
・用語定義
・適用除外
・プロセス
・項目定義
・条件定義
・役割定義
・参照条文
・罰則規定
seq 区分名 判断基準・例
1
法の目的 目的  「この法律は(略)ことを目的とする。」
基本理念  主語がない。  「~なことから、~しなければならない。」
2 例外処理
3
用語定義 この法律に基づいて○○とは(略)をいう。
この法律に基づいて○○は以下の各号に当てはまるものをいう。(以下は略)
4 適用除外 ・法律の適用範囲自体を定める文言がある場合。
5
プロセス (1)文頭が主語 (国は、中小企業は、)
(2)文末は「~する」という形で役割を定める(以下、○○という、というように明確に指定される)
(3)発動条件は、概ね明確に条件(~のとき)やタイミング(年1回等)まで定義される。
6
項目定義 上位の条文に「以下の各号」とあり、号以下で列挙される。
※ データ項目中心と思いますが、プロセスも存在するかもしれません。
7
条件定義 1)場合 ~のとき○○する
2)タイミング ○月、○日、
3)制約 ○○するには~しなければならない
○○するには~に考慮するものとする
※ 「以下のとき、○○する」と集約され、個別条件は 「6.項目定義」 の形式で列挙されるケースあり
8
役割定義 (1)文頭が主語 (国は、中小企業は、)
(2)文末は「~する」という形で役割を定める(努力や義務、「その他必要な」など曖昧)
(3)発動条件はない。ある場合は、明確な条件(~のとき)やタイミング(年1回等)まで定義されない。(国
は、~のとき、○○を行う)
(4)許可するもの 「~を行うことができる。」
9
参照条文 1)必要な事項は、主務省令で定める。
2)○○法を準用する
10 罰則規定 1)次の各号のいずれかに該当する者は、~の罰金に処する。
法律上の表記の文面をBPMN上でどの
ように扱うかの考え方を整理。
法律に用いられる特定の言い回しの表記方法を検討する。また各条文に対し、区分を設け表記するか否かの検討を
行った。
15
Ⅰ.法律の構成
「特定家庭用機器再商品化法」(以下、家電リサイクル法)は経済産業省、及び環境省が所管する法律である。1998年(平成
10年)12月1日より一部が施行、2001年(平成13年)4月より全面施行された。同法律では下記内容が記載されている。
総則(第1章) 、 基本方針等(第2章) 、 小売業者の収集及び運搬(第3章) 、
製造業者等の再商品化等の実施(第4章) 、 指定法人(第5章) 、 雑則(第6章) 、 罰則(第7章)
当該法律は特定家庭用機器廃棄物の適正かつ円滑な収集及び運搬並びに再商品化等を実施することを目的とし、製造業者
等、小売業者、排出者らに対する義務、制度、措置について記載されている。
排出者から小売業者までの特定家庭用機器廃棄物の流れが「小売業者の収集及び運搬」、特定家庭用機器廃棄物の再商品
化までの流れが「製造業者等の再商品化等の実施」、再商品化や引取を製造業者に代わって行う指定法人については「指定法
人」に記載されている。その他の章には目的、条件、制約、規則に関する項目が記載されている。
関連法令として資源の有効な利用の促進に関する法律、政令、府省令、などが存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (1/8)
16
Ⅰ.法律の構成
【家電リサイクル法】
補足
*関連法令
・現行法
-資源の有効な利用の促進に関する法律
-廃棄物の処理及び清掃に関する法律
・現行政令
-特定家庭用機器再商品化法施行令
-地球温暖化対策の推進に関する法律施行令
-特定物質の規制等によるオゾン層の保護に
関する法律施行令
・現行府省令
-特定家庭用機器再商品化法施行規則
1.総則(第1条~第2条)
-目的、定義の記載
2.基本方針等(第3条~第8条)
-基本方針と小売業者や製造業者らの責務
3.小売業者の収集及び運搬(第9条~第16条)
-小売業者の引取に関する取り決め
5.指定法人(第32条―第42条)
-指定法人の指定と運営に関する取り決め
6.雑則(第43条~第57条)
7..罰則(第58条~第62条)
目的が記載さ
れておりプロ
セスではない
ので対象外と
した
条件、制約、
規則等が主と
して記載され
ているため対
象外とした
※赤破線で囲まれている箇所から主たるプロセスを今回
モデリング表記した
リサイクルの
実施プロセス
でなく法人の
指定や監督
が主として記
載されている
ため対象外と
した
4.製造業者等の再商品化等の実施(第17条~第31条)
-製造業者による引取と再商品化に関する取り決め
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (2/8)
17
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は小売業者の収集及び運搬(第3章)と製造業者等の再商品化等の実施(第4章)としている。
総則、基本方針等には法律の目的が記載されており、プロセスではないと判断し、モデリング対象外とした。また第5章では
指定法人の指定や監督といった管理面が記載されており、第3章、第4章で排出者から小売業者を経て製造業者へと
特定家庭用機器廃棄物が渡されていく一連の流れとの関係性からモデリング対象外とした。また、第6章以降では主に条件、
制約、規則が記載されている。これらはプロセスではないと判断し、モデリング対象外とした。
以下にモデリングを実施した代表例を記載する。
ⅰ.特定家庭用機器廃棄物の受け渡しのモデリング結果
ⅰ-① 小売業者の収集及び運搬
小売業者の収集及び運搬をモデリングするとプールは「排出者」、「小売業者」、「製造業者等」、「指定法人」の4ケから構成さ
れる。開始のトリガーは「排出者」の特定家庭用機器の引取の求めとなる。小売業者が引取の求めに応じて、「特定家庭用機器
を引き取る」を実施する。それに伴い小売業者は排出者に対して「収集及び運搬に関する料金を請求する」こととなる。また、小
売業者は排出者に対して、法で定められた「引取料金を請求する」ことを行う。排出者は引取料金を支払うか、または料金を支
払い済みであることを証する書面を提示することとなる。後者は一般の消費者に「家電リサイクル券」として認知されている。
小売業者は特定家庭用機器の引き渡し先となる製造業者等または指定法人に対して特定家庭用機器の引き渡しを行う。
ⅰ-② 製造業者の引取
製造業者は「小売業者」から特定家庭用機器廃棄物の引取を行う。製造業者は再商品化等に際して、小売業者に対し「再商
品化等に必要な行為に関し料金を請求する」ことを行う。小売業者は引取料金を支払うか、または製造業者等に対して、料金を
支払い済みであることを証する書面を提示することとなる。
また、製造業者は本法の主たる目的でもある「特定家庭用機器廃棄物の再商品化」を行う。この行為に際しては「地球温暖化
対策の推進に関する法律施行令」「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律施行令」によって指定された特定の
種類の冷媒を回収することが本法において義務付けられている。
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (3/8)
18
Ⅱ.モデリング結果「小売業者の収集及び運搬」のプロセスモデル
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (4/8)
詳細は別紙2(3)B①_1_特定家庭用機器再商品化法(第3章_小売業者の収集及び運搬)参照。
Business Process 別紙2(3)B①_1_特定家庭用機器再商品化法(第3章_小売業者の収集及び運搬)
<<Pool>>製造業者等<<Pool>>小売業者排出者<<Pool>>
特定家庭用機器廃棄物の発生
終了
特定家庭用機器廃棄
物を排出する場所での
排出
収集及び運搬に関する
料金の請求を受ける
特定家庭用機器の引
取を求める
特定家庭用機器を引き
取る
引取料金を請求する
特定家庭用機器を引き
渡す
収集及び運搬に関する
料金を請求する
料金を受領していることを
証する書面があるか法9条
法9条
法9条
法12条
法10条
法11条
引取料金を支払う
料金を受領しているこ
とを証する書面を提示
する
引取後の対応
引取の求めを受ける
法9条
引取料金の請求を受け
る
収集及び運搬に関する
料金を受け取る
収集及び運搬に関する
料金を支払う
料金を受領しているこ
とを証する書面の提示
を受ける
引取料金を受領する
終了
特定家庭用機器を収集する
終了
リサイクル券がある
リサイクル券がない
19
Ⅱ.モデリング結果
詳細は別紙2(3)B①_2_特定家庭用機器再商品化法(第4章_製造業者の引取)参照。
「製造業者の引取」のプロセスモデル
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (5/8)
Bus iness Process 別紙2(3)B①_2_特定家庭用機器再商品化法(第4章_製造業者の引取)
<<Pool>>指定法人
<<Pool>>製造業者等
<<Pool>>小売業者排出者<<Pool>>
特定家庭用機器を引き
取る
引取料金を請求する
特定家庭用機器の引き
渡し先を判断する
引取主体は製造業者か?
収集及び運搬に関する
料金を請求する
法9条
法12条
法10条
法11条
終了
引取後の対応
終了
特定家庭用機器廃棄
物の再商品化
冷媒の回収・利用・譲
渡・破壊
第18条2
令3条
再商品化等に必要な行
為に関し、料金を請求
する
再商品化の料金の請
求を受ける
料金を支払う
料金を受け取る
当該製造業者等が同
条に規定する料金を受
領していることを証す
る書面を提示する
令7条
書面の提示を受ける
第18条1
排出方法を案内する
特定家庭用機器を指
定団体に引き渡す
特定家庭用機器を製
造業者等に引き渡す
法19条
特定家庭用機器廃
棄物を引き取る
引取の求めを受ける
法9条
開始 終了
EndEvent1
製造業者等
料金が未払いの場合
料金が支払い済みの場合
指定団体
20
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け家電リサイクル法の特徴についての分析を行う。
廃家電の再商品化制度を定めた法律であり、物の流れがわかりやすい。
家電リサイクル法は家電リサイクルに関係する排出者、小売業者、製造業者等の各主体に対して、その役割と
義務を説明し行為を促す法律である。製造された家電製品が再商品化されるまでの流れにおいて、いずれかの
主体の元に滞ることがあれば重い負担が生ずることとなり、環境負荷低減のための取り組みとして重要な持続性が
失われてしまうことになる。そのため、いわゆる「家電リサイクル券」を含めて理解しやすく、また、実際に取り組み
やすくするための工夫が法律の各所に見られる。特定家庭用機器廃棄物という実体を伴う物と、その処理費用とが
各主体を移転する部分に関して法手続き化された箇所はプロセスとしても連続性を持たせて記述することができた。
特に、再商品化の費用として排出者が支払った費用が一旦小売業者に移転し、小売業者からまた製造業者等に
移転する様子はパンフレット等にも記載される図であるが、条文に基づいて作成したモデリング結果においても
認識できる結果となった。
「同様」の条文はモデル上で共通化できるとは限らない
家電リサイクル法では例えば小売業者が引取の料金を公表するところ等において「同様とする」と記述された
箇所がある。小売業者の引取料金の公表では、引取料金を新たに設定する場合と、後から変更する場合との
それぞれにおいて、「あらかじめ公表しなければならない」という義務が課せられている。
当該部分のモデリングに際しては、新規に公表を行った後でないと変更は発生しないという制約に気づき、
「同様」を条文のように共通化して表現することは困難であった。共通化の方向性としてはループを使用する、
サブプロセスを使用するといった方法が考えられるが、「同様」のプロセスを共通としたとしても、後続のプロセスが
分岐するといった場合には当該条文を独立した複数のプロセスとして表現した方がわかりやすいケースも多いと
考えられる。本法律では「変更」について特有の後続処理がなかったため、「変更」を省略し「新規」のみを記述した。
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (6/8)
21
Ⅲ.モデリング分析
共通部品を探索する際、ボトムアップ的な探索が有効であった。
家電リサイクル法では小売業者と製造業者に対して主務大臣による指導を定めている箇所がある。そのうち、
小売業者においては引取料金が、製造業者においては再商品化の料金が適正な水準にない場合に行う指導では、
両者とも「料金」が「適正でない」という部分が似通っており、その指導に関する条文をモデリングした結果も同様な
プロセスとして描くことができた。条文上ではプロセスの類似性を検証することは煩雑な作業となるが、モデリング
結果であればその類似性は一目で判断することができる。類似する条文については、その条文同士を業務として
具現化する際に担当者、文書様式やシステム等を共通化し得る余地が大きいと考えられる。今回のアプローチの
ように条文を逐次的にモデリングし、その結果として得られたモデル上で類似性が窺われる箇所を
検証するというボトムアップな進め方であっても、共通部品となる候補を探索し得るものと考えられる。
共通部品を探索する際、トップダウン的な探索が有効であった。
家電リサイクル法では製造業者が再商品化を実施できない場合等には指定法人が代わって再商品化を行う
ことが定められている。この構造において、製造業者に対して定められた事項を指定法人が「準用」する箇所がある。
当該部分においてはモデリングの事前準備として条文の分析・整理を行う段階で「準用」という文言に着目する
ことによって、部品を共通化する等の方針を検討する事が可能である。
ただし、家電リサイクル法で準用箇所の1つである「法第20条 料金の公表等」と「法第34条 料金の公表等」は
それぞれ全社が製造業者等に対するもの、後者が指定法人に対するものであるが、当該条文で定められた事項は
「則第8条 公表は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法により行うものとする。」の
1プロセスでしかない。よって共通部品化することによるメリットがモデリングの作業者にとっても、モデルを
見る側にとっても実感し難い結果となった。もし準用箇所が複数プロセスから構成されていれば、当該部分を
サブプロセスに集約するといった方法で直観的に共通化されたことがわかりやすい結果が得られたであろう。
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (7/8)
22
Ⅲ.モデリング分析
プール間のメッセージフローに着目した合理的なサイクルの考案
家電リサイクル法では小売業者と製造業者等との間において、いくつかのメッセージフローが存在している。
一般にこうした制度において省庁側が事務手続きの相手となる場合には、様々な事業者は省庁の1箇所を窓口
として認識することとなる。または各地方拠点が事務を行う場合においても複数地域にまたがる事業者でなければ、
当該地域を担当する拠点の1箇所が窓口となる。この点では特に複雑さが見られない。
しかし小売業者と製造業者等のように複数の主体と複数の主体との間で文書等の送付が行われる場合には、
そのやり取りが複雑化しないかどうか注意する必要がある。仮定として、小売業者がm社存在し、製造業者が
n社存在するとして、小売業者が引き受けた書類を各製造業者に届けるといった場合を考えれば、その発送の
組み合わせは最大でm×nとなる。この流れを中間で一手に整理する代行者を設立した場合、小売業者m社は
すべて代行者に届けるだけで済むのでmとなり、代行者から製造業者への送付も同様にnとなるため全体での
組み合わせはm+nで済むこととなる。このような仕組みは家電リサイクル法の実際の運用でも指定引取場所という
形で存在している。他の事例では、例えば健康保険制度において健康保険組合と医療機関の間での請求支払の
仕組みに、また、インターネットショッピングにおいてECサイトとクレジットカード会社の間での決済代行という仕組みに
同じような構造が見られる。
この性質は、手続の窓口が単一ないし少数である省庁の場合には見られない現象であり、運用を始めるまで
事業者間の連携が複雑であるという問題点が見過ごされてしまう可能性がある。BPMNでは各主体毎にプールを設定し、
プールからプールへまたがる経路をメッセージフローとして記述する。法律の成立過程において法律案をモデル化し、
実施が義務化される事項の中から特に複数主体と複数主体との間でやりとりされるメッセージフローの量と性質を
事前検証することができれば、特に膨大な事務が想定される手続きについて指定法人等に見られるような事務効率化の
方策と合わせて導入することが可能となり、新たな制度を混乱なく導入する助けとなると考えられる。
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ①特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) (8/8)
23
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(以下、フロン回収破壊法)は経済産業省、及び
環境省が所管する法律である。2002年(平成14年)4月1日に施行された。同法律では下記内容が記載されている。
総則(第1章) 、 第一種特定製品からのフロン類の回収(第2章) 、 フロン類の破壊(第3章) 、 費用負担(第4章) 、
雑則(第5章) 、 罰則(第6章)
当該法律はオゾン層保護対策を進めるために、フロン類の廃棄、回収及び破壊処理を義務付ける制度、措置について記載さ
れている。
フロン類回収の手続等は「第一種特定製品からのフロン類の回収」、フロン類破壊の手続は「フロン類の破壊」、フロン類回収
の料金は「費用負担」に記載されている。その他の章には目的、条件、制約、規則に関する項目が記載されている。
関連法令として地球温暖化対策の推進に関する法律、政令、府省令、などが存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保
等に関する法律(フロン回収破壊法) (1/7)
24
Ⅰ.法律の構成
【フロン回収破壊法】
補足
*関連法令
・現行法
-地球温暖化対策の推進に関する法律
-特定物質の規制等によるオゾン層の保護に
関する法律
-使用済自動車の再資源化等に関する法律
・現行政令
-特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の
確保等に関する法律施行令
・現行府省令
-特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の
確保等に関する法律施行規則
-特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の
確保等に関する法律に係る民間事業者等が行う
書面の保存等における情報通信の技術の利用に
関する法律施行規則
1.総則(第1条~第8条)
-目的、用語の記載
2.第一種特定製品からのフロン類の回収(第9条~第24条)
-フロン類回収業者の登録、回収方法に関する取り決め
3.フロン類の破壊(第24条~第36条)
-フロン類破壊業者の登録、破壊に関する取り決め
4.費用負担(第37条)
-フロン類回収の料金に関する取り決め
5.雑則(第38条~第54条)
6.罰則(第55条~第60条)
目的が記載さ
れておりプロ
セスではない
ので対象外と
した
条件、制約、
規則等が主と
して記載され
ているため対
象外とした
※赤破線で囲まれている箇所から主たるプロセスを今回
モデリング表記した
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保
等に関する法律(フロン回収破壊法) (2/7)
25
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は第一種特定製品からのフロン類の回収(第2章)とフロン類の破壊(第3章)にした。
総則には法律の目的が記載されており、プロセスではないと判断し、モデリング対象外とした。また第4章以降では主に
条件、制約、規則が記載されておりプロセスではないと判断し、モデリング対象外とした。
以下にモデリングを実施した代表例を記載する。
ⅰ.フロン類の回収のモデリング結果
ⅰ-① フロン回収業者の登録
フロン回収業者の登録をモデリングするとプールは「第一種フロン類回収業を行おうとする者」と「都道府県知事」の2ケから
構成される。開始のトリガーは「第一種フロン類回収業を行おうとする者」の申請書提出となる。都道府県知事が「申請書」を受
付け、「基準に適合するか判断する」を実施する。適合する場合は「第一種フロン類回収業者登録簿に登録」を実施し、許可す
る旨を通知する。適合しない場合は、拒否する旨を通知する。
ⅰ-②フロン類回収手続
フロン類回収はフロン類回収業者へ直接フロン類を引き渡す場合、フロン類の引渡しを委託する場合、フロン類の引渡しを再
委託する場合がある。ここでは基本パターンとなりそうなフロン類の引渡しを委託する場合をモデリングする。フロン類回収をモ
デリングすると、プールは「第一種特定製品廃棄等実施者」、「第一種フロン類回収業者」、「フロン類破壊業者」、「都道府県知
事」の2ケから構成される。開始のトリガーは「第一種特定製品廃棄等実施者」のフロン類引渡しとなる。「第一種フロン類回収業
者」はフロン類の引取拒否の正当な理由がある場合は「引き取りを拒否する」を実施する。正当な理由がない場合は「主務省令
で定める基準に従いフロンを回収する」を実施し、「引取証明書を作成する」、「書面の写しを保存」等を実施し、「第一種特定製
品廃棄等実施者」に引取証明書を交付する。その後、「回収したフロンに再び冷媒として充てんしなかったものがあるか否か」等
の判断を行い、「運搬基準に従いフロン類を運搬する」を実施し、「第一種フロン類回収業者」に「フロン類を引き渡す」を実施し、
必要な記録を作成・保存する。
「第一種特定製品廃棄等実施者」は「第一種フロン類回収業者」から「引取証明書を受領する」、「引取証明書を保存する」を実
施し、引取証明書の内容が不適切、もしくは引取証明書に虚偽の内容がある場合は都道府県知事に報告する。
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等
に関する法律(フロン回収破壊法) (3/7)
26
2.モデリングの検証 (3)検討
ⅱ.フロン類の破壊のモデリング結果
フロン破壊業者の許可申請をモデリングするとプールは「特定製品に冷媒として充てんされているフロン類の破壊を業として
行おうとするものと「主務大臣」の2ケから構成される。開始のトリガーは「特定製品に冷媒として充てんされているフロン類の破
壊を業として行おうとするものと「主務大臣」の申請書提出となる。主務大臣が「申請書」を受付け、「基準に適合するか判断す
る」を実施する。適合する場合は「フロン類破壊業者名簿を作成する」を実施し、許可する旨を通知する。適合しない場合は、拒
否する旨を通知する。
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等
に関する法律(フロン回収破壊法) (4/7)
27
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等
に関する法律(フロン回収破壊法) (5/7)
「フロン回収業者の登録」のプロセスモデル
「フロン破壊業者の許可申請」のプロセスモデル
詳細は別紙参照
・別紙2(3)B①_1_特定家庭用機器再商品化法(第3章_小売業者の収集及び運搬)、
・別紙2(3)B①_2_特定家庭用機器再商品化法(第4章_製造業者の引取)
28
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等
に関する法律(フロン回収破壊法) (6/7)
「フロン回収手続」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B②_3_特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収手続)参照。
29
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受けフロン回収破壊法の特徴についての分析を行う。
登録、申請のプロセスが類似している。
フロン回収業者の登録のプロセスモデル、フロン破壊業者の許可申請のプロセスモデルを比較すると、申請を行うもの、
許可を行うもの、等のプールは異なる。しかし、申請者の申請が開始のトリガーとなり、審査を行うものが審査を行った後に
申請者に結果を通知するというプロセスはほぼ同様になった。
法令をもとにしたプロセスモデリングが容易である。
フロン回収手続のプロセスモデルを見ると、アクティビティ、ゲートウェイの多くを条文から抽出し記載することができた。当
プロセスモデルは、第一種フロン類回収業者の引取義務(第20条第1項、第2項)、引取証明書(第20条の2第2項、
第3項~第5項)、第一種フロン類回収業者の引渡義務(第21条第1項、第2項)、回収量の記録等(第22条第1項)の条文を
もとにモデリングを実施した。これら条文は一見すると、別々のプロセスのように見えるが、注意深く条文の関係性を見る
ことで条文のつながりを見つけることができ、一連のプロセスとして記載することができた。
B.法律の個別分析 ②特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等
に関する法律(フロン回収破壊法) (7/7)
30
Ⅰ.法律の構成
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(以下、省エネ)は経済産業省、資源エネルギー庁が所管する法律である。
1979年(昭和54年)10月1日に施行された。(前身の熱管理法は、本法の施行により廃止。)同法律では下記内容が記載
されている。
総則(第1章) 、 基本方針等(第2章) 、 工場等に係る措置等(第3章)、 輸送に係る措置(第4章) 、
建築物に係る措置等(第5章)、 機械器具に係る措置(第6章) 、 雑則(第7章) 、 罰則(第8章)
当該法律はエネルギー有効利用を行う為に工場・事業場、輸送、建築物、機械器具に係る事業者等に対する措置について
記載されている。
国(省庁)と事業主との申請等のやりとりは業種別に「工場等に係る措置等」、「輸送に係る措置」、「建築物に係る措置等」、
「機械器具に係る措置」の各章に記載されている。その他の章には目的、条件、制約、規則に関する項目が記載されている。
関連法令として政令、エネルギー算出基準を記載した府省令等が存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (1/7)
31
Ⅰ.法律の構成
【省エネ法】
1.総則(第1条~第2条)
-目的の記載
2.基本方針等(第3条~第4条)
-エネルギーの使用の合理化に関する基本方針の
記載
補足
3.工場等に係る措置等(第5条~第51条)
-工場、事業場を設置して事業を行う者に対する
エネルギー使用の合理化に関する取り決めの記載
7.雑則(第82条~第92条)
8.罰則(第93条~第99条)
※赤破線で囲まれている箇所を今回モデリング表記した
条件、制約等
が記載されて
おりプロセス
ではないので
対象外とした
*関連法令
・現行政令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律施行令
・現行府省令
- 厚生労働省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律施行規則
-エネルギー管理士の試験及び免状の交付に関する規則
-エネルギー管理講習に関する規則
-自動車のエネルギー消費効率の算定等に関する省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律に規定する
指定試験機関を指定する省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律に規定する
指定講習機関を指定する省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律第75条
第1項の規定に基づく建築物に係る届出等に関する省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律の規定に
基づく立入検査をする職員の携帯する身分を示す
証明書の様式を定める省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律の規定に
基づく立入検査をする職員の携帯する身分を示す
証明書の様式を定める省令
-エネルギーの使用の合理化に関する法律の規定に
基づく登録建築物調査機関等に関する省令
4.輸送に係る措置(第52条~第71条)
-輸送事業者、荷主に対する エネルギー使用の
合理化に関する取り決めの記載
5.建築物に係る措置等(第72条~第76条)
-輸送事業者、荷主に対する エネルギー使用の
合理化に関する取り決めの記載
6.機械器具に係る措置(第77条~第81条)
-住宅・建築物の建築主、住宅・建築物の所有者・
管理者、住宅供給事業者(住宅事業建築主)に
対する エネルギー使用の合理化に関する取り決め
の記載
工場等~、輸
送等とほぼ同
一のプロセス
が記載されて
いるので対象
外とした
目的、方針等
が記載されて
おりプロセス
ではないので
対象外とした
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (2/7)
32
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は「工場等に係る措置等」(第3章)、「輸送に係る措置」(第4章)とした。「総則」、「基本方針等」
には法律の目的、基本方針が記載されており、プロセスではないと判断し、モデリング対象外とした。「建築物に係る措置等」と
「機械器具に係る措置は輸送に係る」はプロセスをモデリングした内容が「輸送に係る措置」と同一の形となると判断し、
モデリング対象外とした。「雑則」、「罰則」は主に条件、制約、規則が記載されておりプロセスではないと判断し、モデリング
対象外とした。
ⅰ.工場等に係る措置等のモデリング結果
工場等に係る措置等をモデリングするとプールは「事業者」、「経済産業大臣」、「事務所管大臣」の3ケから構成される。
事業者は年度当初にエネルギー利用量を算出し省エネ法適用対象事業者か否かを調査する。事業者は省エネ法適用対象
事業者と判断した場合には経済産業大臣にエネルギー使用状況届出を提出する。経済産業大臣はエネルギー使用届出書を
受領後、事業者に弁明通知書を送付する。事業者が事業の停止、廃業を行う場合やエネルギー利用量が基準値内に収まると
見込める場合には、事業者は省エネ法適用外の申請を弁明通知書を用いて経済産業大臣に申請する。
経済産業大臣は事業者からの届出を審査し省エネ法適用事業者否かを判断し、審査結果を事業者に通知する。この際、
経済産業大臣は事業者に対し特定事業者、特定連鎖化事業者、第1種/第2種エネルギー管理指定工場のどれに該当する
かを指定し、同指定内容を事業者に通知する。
事業者は指定された区分に従って必要となるエネルギー管理者を選任し選任果を経済産業大臣に通知する。
事業者は選任通知を行った後、定期報告書と中長期計画書を作成し、経済産業大臣と事務所管大臣に定期報告書と
中長期計画書を送付する。
関連法規として各種府省令は存在するがエネルギー利用量の算定基準についての記載が多くプロセスで表現するものは
見当たらない。また当施策に対しては資源エネルギー庁・省エネルギーセンターが作成した手引書「省エネ法の概要」が
刊行されているので、表記上必要なプロセスは法律条文からだけではなく手引書に記載されているプロセスも加味して作成
している。
工場等に係る措置等に関する年間のプロセスモデルは上記の1パターンにて表記できる。
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (3/7)
33
2.モデリングの検証 (3)検討
ⅱ.輸送に関する措置のモデリング結果
輸送に関する措置のモデリングは工場等に係る措置等のモデリングとかなり類似している。輸送に関する措置では、
①プール・プール数が違う、②エネルギー使用状況ではなく輸送能力で適用を判断する、③国からの弁明通知書の送付は
行われない、④区分が少ない、⑤エネルギー管理者の選任は必要ない、ということが挙げられる。
輸送に関する措置をモデリングするとプールは事業者、国土交通大臣の2ケから構成される。事業者は年度当初に輸送
能力を算出し省エネ法適用対象事業者(=特定貨物輸送事業者)か否かを調査する。事業者は省エネ法適用対象事業者と
判断した場合には輸送能力届出書を提出する。ただし事業者が事業の停止、廃業を行う場合や輸送量が基準値内に収まる
と見込める場合には、事業者は事業者指定取消申出を国土交通大臣に申請する。
国土交通大臣は事業者からの届出を審査し省エネ法適用事業者否かを判断し、審査結果を事業者に通知する。
事業者は定期報告書と中長期計画書を作成し、国土交通大臣に定期報告書と中長期計画書を送付する。
関連法規として各種府省令は存在するがエネルギー利用量の算定基準についての記載が多くプロセスで表現するものは
見当たらない。また当施策に対しては資源エネルギー庁・省エネルギーセンターが作成した手引書「省エネ法の概要」が
刊行されているので、表記上必要なプロセスは法律条文からだけではなく手引書に記載されているプロセスも加味して作成
している。
輸送に係る措置に関する年間のプロセスモデルは上記の1パターンにて表記できる。
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (4/7)
34
Ⅱ.モデリング結果
「工場等に係る措置等」のプロセスモデル
「輸送に係る措置」のプロセスモデル
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (5/7)
類似
エネルギー
管理者の選任
弁明書
事務所管大臣
表記が同一になっている
箇所をサブプロセス化して
同一部分、相違部分を明
示的に表記することも考
えられる。
詳細は別紙参照
・別紙2(3)B③_1_省エネ法(工場等)
・別紙2(3)B③_2_省エネ法(輸送)
35
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け省エネ法の特徴についての分析を行う。
国への届出が盛込まれており、手続きなどの説明のある法律にて構造が若干複雑である。
省エネ法は制度を説明するだけではなく、事業者と国との手続きも記載されている実務的な法律である。制度の
説明だけを行う法律に比べ、構造は若干複雑になる。また事業者の所属する業種によって書類を提出する府庁が
異なる。個別の施策により、プール数も変わる。
また事業主の属する業種によって提出する書類も変わってくる。
同一プロセスと相違するプロセス。
工場等に係る措置等のモデリング結果と輸送に関する措置のモデリング結果は大部分は同一ではあるが、工場等に
係る措置等のモデリング結果の方がプロセス、分岐条件、書類が多く、若干複雑な形になっている。表記が同一になって
いる箇所をサブプロセス化して同一部分、相違部分を明示的に表記することも考えられる。但し単純に同一部分、相違
部分を元にサブプロセス化を行う場合には、サブプロセス化を行う箇所とサブプロセス化を行わない場所の表記で粒度
レベルが相違する可能性が高い。同一表記箇所のサブプロセス化を行う際には、表記に関する粒度レベルのガイド
ラインを設けサブプロセス化を行う必要がある。
表記方法の見直しが考えられる表記箇所。
同一の書類を複数の省庁に送付している箇所が工場等に係る措置等のモデリング結果に存在する。表記として冗長感が
あるので表記方法の見直しが考えられる。(手続きそのものの見直しを実施する、ということも考えられる。)視点を変えると
モデリング結果で表記に冗長感がある場合にはプロセスそのものが冗長的であるとも考えられる。モデリング結果に冗長感
がある箇所に対し、プロセス妥当性を検証する、という運用を行うことが考えられる。(詳細は次葉ご参照。)
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (6/7)
36
事
業
者
経
済
産
業
大
臣
事
業
所
管
大
臣
・冗長感あり →
-対応案1:表記方法を変更し
まとめて表記できる
ようにする
-対応案2:送付プロセスを見直し
2ヶ所への送付をなくし
1ケ所への送付を可と
する。(案:経産省から
事業所管省庁に電子
データを送付する仕組み
を構築して対応、等)
同一内容 同一内容
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ③エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) (7/7)
Ⅲ.モデリング分析 ・・・冗長感のある箇所への対応
37
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下、育児介護休業法)は厚生労働省が
所管する法律である。1992年(平成4年)4月1日に施行された。同法律では下記内容が記載されている。
総則(第1章) 、 育児休業(第2章) 、 介護休業(第3章) 、 子の看護休暇(第4章) 、 子の看護休暇(第5章) 、
所定外労働の制限(第6章) 、 時間外労働の制限(第7章) 、 .深夜業の制限(第8章) 、
事業主が講ずべき措置(第9章) 、 対象労働者等に対する支援措置(第10章) 、 紛争の解決(第11章) 、
雑則(第12章) 、 罰則(第13章)
当該法律は労働者と事業者との間で発生する育児、介護に関する休業、休暇、勤務時間に関する制度、措置について
記載されている。
労働者と事業主との申請等のやりとりは「育児休業」、「介護休業」の各章に記載されている。その他の章には目的、条件、
制約、規則に関する項目が記載されている。
関連法令として国家公務員、地方公務員に対する法律、政令、府省令、最高裁判所規則等が存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ④育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律(育児介護休業法) (1/6)
38
Ⅰ.法律の構成
【育児介護休業法】
1.総則(第1条~第4条)
-目的の記載
2.育児休業(第5条~第9条)
-育児休業に関する利用者本人の申請、事業者の
審査、公務員に関する取り決めの記載
補足
3.介護休業(第11条~第16条1)
-介護休業に関する利用者本人の申請、事業者
の審査、公務員に関する取り決めの記載
12.雑則(第53条~第61条)
13.罰則(第62条~第68条)
※赤破線で囲まれている箇所を今回モデリング表記した
条件、制約、
規則等が記
載されており
プロセスでは
ないので対象
外とした
*関連法令
・現行法
- 国会職員の育児休業等に関する法律
- 国家公務員の育児休業等に関する法律
- 地方公務員の育児休業等に関する法律
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を
行う労働者の福祉に関する法律
- 裁判官の育児休業に関する法律
・現行政令
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う
労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の
一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の
整備に関する政令
- 防衛省の職員の育児休業等に関する政令
・現行府省令
- 厚生労働省令
- 人事院規則19-0(職員の育児休業等)
- [本法令] 育児休業、介護休業等育児又は家族
介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
- 船員に関する育児休業、介護休業等育児又は
家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
施行規則
- 防衛省の職員の育児休業等に関する省令
4..子の看護休暇(第16条2~第16条4)
5.介護休暇(第16条5~第16条7)
6.所定外労働の制限(第16条8~第16条9)
7.時間外労働の制限(第17条~第18条)
8.深夜業の制限(第19条~第20条)
9.事業主が講ずべき措置(第21条~第29条)
10.対象労働者等に対する支援措置(第30条~第52条)
11.紛争の解決(第52条2~第52条6)
目的が記載さ
れておりプロ
セスではない
ので対象外と
した
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ④育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律(育児介護休業法) (2/6)
39
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は「育児休業」(第2章)と「介護休業」(第3章)にした。総則には法律の目的が記載されており、
プロセスではないと判断し、モデリング対象外とした。また第4章以降では主に条件、制約、規則が記載されておりプロセスでは
ないと判断し、モデリング対象外とした。
ⅰ.育児休業のモデリング結果
育児休業をモデリングするとプールは「労働者」と「事業主」の2ケから構成される。開始のトリガーは「育児休業取得の
申請」となる。その後労働者は「育児休業を申出る」を実施。事業主が「育児休業の申出」を受付け、「申込みを審査する」を
実施。事業主は「審査結果」を労働者に通知し、労働者は「審査結果を確認する」を実施する。事業主が行う「申込を審査
する」プロセスはサブプロセスとして展開され、労働者が申出に対し条件を満たしているか(「雇用された期間が1年以上か」、
「養育する子が1歳になる時点で雇用が継続される見込みか」)を判断し、「申請を却下する」のか「申請を認可する」のか、
「申込結果を判断する」を実施している。
育児休業の期間延長申請や育児休業の取消申請も法律に記載されている。この申請をプロセス表記した場合でも、
育児休業の申出と同様に労働者と事業主の間で申請・審査のやりとりを行うプロセスとなるので、取消申請のプロセス表記は
育児休業のプロセスと同一の形となる。今回は同一の形となるので育児休業の期間延長申請や育児休業の取消申請の
表記は割愛した。
関連法規には厚生労働省省令があるが、同省令第四条には「養育子の死亡、負傷、疾病」、「配偶者の死亡、負傷、疾病」、
「別居、離婚、養子適用」等個別条件発生時の審査判断基準が記載されているが、プロセスの形が変わる内容ではない。
その他の法律、省令でも公務員法と育児介護休業法とを関連付ける内容等でありプロセスの形は変わらない。
育児休業に関するモデルは上記の1パターンにて表記できる。
B.法律の個別分析 ④育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律(育児介護休業法) (3/6)
40
2.モデリングの検証 (3)検討
ⅱ.介護休業のモデリング結果
介護休業のプロセスは育児休業のプロセスと同一である。
介護休業をモデリングするとプールは労働者と事業主の2ケから構成される。開始のトリガーは「介護休業取得の申請」と
なる。その後労働者は「介護休業を申出る」を実施。事業主が「介護休業の申出」を受付け、「申込みを審査する」を実施。
事業主は「審査結果」を労働者に通知し、労働者は「審査結果を確認する」を実施する。
事業主が行う「申込を審査する」プロセスはサブプロセスとして展開され、労働者が申出に対し条件を満たしているか
(「雇用された期間が1年以上か」、「開始日から起算して93日後時点で雇用が継続される見込みか」)を判断し、「申請を
却下する」のか「申請を認可する」のか、「申込結果を判断する」を実施している。
介護休業の取消申請も法律に記載されている。この申請をプロセス表記した場合でも、介護休業の申出と同様に労働者と
事業主の間で申請・審査のやりとりを行うプロセスとなるので、取消申請のプロセス表記は介護休業のプロセスと同一の
形となる。今回は同一の形となるので介護休業の取消申請の表記は割愛した。
関連法規には厚生労働省省令第29条があるが、同省令には「介護者の死亡」、「申出者の死亡、負傷、疾病」、「離婚」
等個別条件発生時の審査判断基準が記載されているが、プロセスの形が変わる内容ではない。
その他の法律、省令でも公務員法と育児介護休業法とを関連付ける内容等でありプロセスの形は変わらない。
介護休業に関するモデルは上記の1パターンにて表記できる。
B.法律の個別分析 ④育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律(育児介護休業法) (4/6)
41
Ⅱ.モデリング結果
「育児休業」のプロセスモデル 「介護休業」のプロセスモデル
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ④育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律(育児介護休業法) (5/6)
同一のモデルとなる
詳細は別紙参照
・別紙2(3)B④_1_育児介護休業法(育児休業)
・別紙2(3)B④_2_育児介護休業法(介護休業)
42
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け育児介護休業法の特徴についての分析を行う。
制度を説明する法律にて構造がシンプルである。
育児介護休業法は制度を説明する種類の法律である。国の支援や罰則についての記述もあるがプロセス、条件、
制約、規制ということに関しては、労働者と事業者との間で必要最低限の法手続を記載したものである。当法律は
労働者や事業者が、国(各省庁)や地方自治体に申請・届出を行うことの無いものである。その為、提出書類に関する
記載も無いので法律プロセスとしては非常にシンプルな構造となっている。
当法律を実際に運営する際に事業者が労働者とやりとりを行う書類についても、当法律では具体的には定義して
おらず、各事業者にて運営書類を定義することになる。
上記法律上の特徴より、法律の構造は極めてシンプルに表現できる。
類似する施策をとりまとめた法律にて準用を多数利用。
育児介護休業法は「育児休業」と「介護休業」を中心に条文が記載されている。「育児休業」、「介護休業」の何れも
労働者から事業者に休業を申請する、という点では一致しており、法律条文も類似する内容で記載されている。また
条文では最初に「育児休業」に関し記載されているが、「介護休業」以降の章において同様なプロセス、条件、制約、
規則が定義する場合には「第XX条の規定は、XXXXXについて準用する。」という表現が多々用いられている。
当法律では「準用」という言葉を使うことで各施策が類似していることを表現しているが、結果、育児介護休業法の
プロセスをモデリングすると「育児休業」と「介護休業」とも同一の形となった。
B.法律の個別分析 ④育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律(育児介護休業法) (6/6)
43
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
「鉱業法」は経済産業省が所管する法律である。明治期からの旧鉱業法が1950年(昭和25年)に全面改正される形で
制定され、直近では2011年(平成23年)7月22日に改正法が施行された。同法律では下記内容が記載されている。
総則(第1章) 、鉱業権(第2章) 、 租鉱権(第3章) 、 勧告及び協議(第4章) 、 鉱物の探査(第4章の二) 、
土地の使用及び収用(第5章) 、 鉱害の賠償(第6章) 、 不服申立て(第7章) 、 補則(第8章) 、 罰則(第9章)
当該法律は、鉱物資源の合理的開発を行うことを目的としており、登録を受けた一定の鉱区において、登録を受けた
鉱物を掘採し取得する権利を採掘者に対して「鉱業権」として定めるという制度を中心として記載されている。
1950年(昭和25年)の制定以後、本格的な改正がなされてこなかったことから、
(1)資源政策上、適切でない主体の鉱区設定や出願が存在。
(2)当面の開発意欲のない者などによる実態を伴わない申請が存在。
(3)無秩序な資源探査活動の実施。
といった問題が生じており、2011年(平成23年)に以下の3点を含む改正法が施行された。
①鉱業権の設定等に係る許可基準の追加
②鉱業権の設定等に係る新たな手続制度の創設(先願主義の見直し)
③鉱物の探査に係る許可制度の創設
関連法令として鉱山保安法、土地収用法、政令、府省令、などが存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (1/12)
44
Ⅰ.法律の構成
【鉱業法】
補足
*関連法令
・現行法
-鉱山保安法
-土地収用法
・現行政令
-鉱業法施行令
-鉱業登録令
-鉱業法関係手数料令
-鉱業法第6条の2の鉱物を定める政令
等
・現行府省令
-鉱業法施行規則
-鉱業登録令施行規則
等
1.総則(第1条~第10条
-目的、定義の記載
2.鉱業権(第11条~第70条)
-鉱業権の設定、変更、登録、鉱業の実施
5.土地の使用及び収用(第101条~第108条)
8.補則(第136条~第146条)
9.罰則(第147条~第152条)
※赤破線で囲まれている箇所から主たるプロセスを今回
モデリング表記した
4.1 勧告及び協議(第88条~第100条)
4.2鉱物の探査(第100条の二~第100条の十一)
6.鉱害の賠償(第109条~第125条)
7.不服申立て(第126条~第135条)
3.租鉱権(第71条~第87条)
直近の改正
箇所のうちの
一部を対象
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (2/12)
45
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は直近の改正箇所である第21条(設定の出願)から第29条(許可の基準)とした。改正前では
第21条から第35条に相当する。条文の数だけを見れば記載内容が削減されたように見受けられるが、実際には旧法の
第29条から第35条までが新法の第29条(許可の基準)の項、号に整理されており、削除された条文はない。同時に、
経済産業省から発出された法改正の趣旨を説明する資料において「①鉱業権の設定等に係る許可基準の追加」とされた
ように許可の基準が項目数で5つ増えている。
ⅰ.鉱業権の許可プロセス全体のモデリング結果
鉱業権の設定を受けようとする者が願い出る対象が新法と旧法で変わっている。新法では経済産業大臣に願い出ることと
なっているが、旧法ではその対象が経済産業局長となっている。しかし別の条文では経済産業大臣は経済産業局長に対して
この部分を委任できることとなっていることから、モデリングを進めるにあたって新法、旧法のいずれも認可する側の主体を
「経済産業局長」にすることとした。
また、後述する「許可基準」は多くの判定基準を含んでおり、これを同一モデル上に展開すると可読性が落ちる懸念が
あったためサブプロセスとして切り出している。これにより全体のモデリング結果を比較した場合に大きな変化は見られ
なくなった。
ⅱ.鉱業権の許可プロセス「許可基準」部分のモデリング結果
鉱業権の設定を受けようとする者からの出願に対して、経済産業大臣(経済産業局長)が行う許可の基準が新法と旧法で
異なっている。許可が単純に追加されただけではなく、旧法の条文の一部を移動させることも行われたため、新旧対応表では
その変更の影響を読み取ることが難しい。しかし新旧のそれぞれの法律についてモデリングを行った結果、許可基準が
どのように変わったかを直感的に把握できるようになった。新旧の変更部分がより把握しやすいように以下の工夫を行った。
1)旧法のモデリングに際してはタスクを配置する際に元となった条文の並び順を無視し、新法をモデリングした際の
条文番号の並びに沿うように配置することとした。これにより2枚のモデルを見比べた際に旧法では存在しなかった
空白部分に新法のタスクが出現したようになり、追加された許可基準が目立つようになっている。
2)上述の配置における工夫と並行し、新法で追加された許可基準に相当するタスクの色を変えている。
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (3/12)
46
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (4/12)
平成23年の改正以前の「鉱業権の許可」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑤_1鉱業法_鉱業権の許可(旧法)参照。
Business Process 鉱業法_鉱業権の許可(旧法)
<<Pool>>鉱業出願人<<Pool>>経済産業局長<<Pool>>関係都道
府県知事
<<Pool>>土地の
所有者
鉱業権の出願を
しようとする
書類(願書・鉱床説明
書)を提出する
第21条2項
書類を受け付ける
協議を依頼する
協議依頼を受ける
協議を行う
協議を行う
終了
石灰石、ドロマイト、耐火粘土、砂
鉱等地表に近い部分に存する鉱物
について採掘出願があり、その鉱
物の掘採により土地の利用を妨害
すると認めるとき
出願があった旨を通知
する
出願の通知を受ける
終了
土地の所有者の氏名
又は名称及び住所を
記載した書面の提出を
命ずる
鉱害を防止する方法を調査するた
め必要があると認めるとき
事業の設備に関する設
計書の提出を命ずる
事業の設備に関する設
計書の提出の命令を
受ける
許可判定を行う
終了
必要でない
認める
必要
必要ない場合
認めない
必要ある
場合
47
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (5/12)
平成23年の改正以前の「鉱業権の許可」の「許可基準」サブプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑤_2鉱業法_許可基準(旧法)参照。
Business Process 許可判定を行う
<<Pool>>経済産業局長
許可判定を行う
許可基準の判定 申請期間の判定
その出願に係る試掘出願地が願書の発
送の時においてその目的とする鉱物と
同種の鉱床中に存する鉱物の鉱区と重
複しないこと。
その出願に係る採掘出願地が願書の発
送の時において次のいずれにも該当し
ないこと。
その目的とする鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の他人の鉱
区又は自己の採掘鉱区と重複
すること。
その目的とする鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の自己の試
掘鉱区と重複する場合におい
て、その重複する部分でなお試
掘を要すること。
その目的とする鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の自己の試
掘鉱区と重複する場合におい
て、現に当該試掘鉱区に係る鉱
区税の滞納があること。
その出願に係る鉱業出願地がその目的
となつている鉱物と異種の鉱床中に存
する鉱物の他人の鉱区と重複し、又は
その目的となつている鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の他人の鉱区と隣接
する場合においては、当該鉱業出願地
における鉱物の掘採が他人の鉱業の実
施を著しく妨害するものでないこと。
その出願に係る鉱業出願地における鉱
物の掘採が、経済的に価値があり、か
つ、保健衛生上害があり、公共の用に
供する施設若しくはこれに準ずる施設
を破壊し、文化財、公園若しくは温泉資
源の保護に支障を生じ、又は農業、林
業若しくはその他の産業の利益を損じ、
公共の福祉に反するものでないこと。
試掘権がその存続期間の満了前に消滅し、又は試掘鉱区の
減少があつた場合において、その試掘権の目的となつていた
鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的とする試掘出願があ
つたとき(その試掘出願地がその消滅した試掘権の鉱区又は
試掘鉱区の減少した部分に該当するときに限る。) その試掘
権の消滅又は試掘鉱区の減少の日から六十日(試掘権の残
存すべき期間又は残存する期間が六十日に満たないときは、
その期間)
採掘権が第五十五条の規定により取り消された場合におい
て、その採掘権を取り消された者以外の者による当該採掘権
の目的となつていた鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的
とする鉱業出願があつたとき(その鉱業出願地がその取り消さ
れた採掘権の鉱区に該当するときに限る。) その取消しの日
から六十日
第十五条第一項の規定による禁止が解除された場合におい
て、その禁止を解除された鉱物を目的とする鉱業出願があつ
たとき(その鉱業出願地がその禁止を解除された地域に該当
するときに限る。) その解除の日から三十日
終了
法29条
法30条
法31条
法35条
法32条の1
法32条の2
法33条
法30条
法31条(前半)
法31条(後半)
48
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (6/12)
現行の「鉱業権の許可」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑤_3鉱業法_鉱業権の許可(現行法)参照。
Business Process 鉱業法_鉱業権の許可(現行法)
<<Pool>>鉱業出願人<<Pool>>経済産業局長(経済産業大臣より受任)<<Pool>>関係都道
府県知事
<<Pool>>土地の
所有者
鉱業権の出願を
しようとする
書類(願書・鉱床説明
書)を提出する
第21条2項
書類を受け付ける
協議を依頼する
協議依頼を受ける
協議を行う
協議を行う
終了
地表に近い部分に存する鉱物につ
いて採掘出願があり、その鉱物の
掘採により土地の利用を妨害する
と認めるとき
出願があった旨を通知
する
出願の通知を受ける 終了
土地の所有者の氏名
又は名称及び住所を
記載した書面の提出を
命ずる
鉱害を防止する方法を調査するた
め必要があると認めるとき
事業の設備に関する設
計書の提出を命ずる
事業の設備に関する設
計書の提出の命令を
受ける
許可判定を行う
終了
必要でない
認める
必要
必要ない場合
認めない
必要ある
場合
49
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (7/12)
現行の「鉱業権の許可」の「許可基準」サブプロセスモデル
Business Process 許可判定を行う
<<Pool>>経済産業局長(経済産業大臣より受任)
許可判定を行う
許可基準の判定 申請期間の判定
法29条1項
法29条2項
その出願に係る鉱業出願人が鉱物の合
理的な開発を適確に遂行するに足りる
経理的基礎及び技術的能力を有するこ
と。
その出願に係る鉱業出願人が十分な社
会的信用を有すること。
その出願に係る鉱業出願人が次のいず
れにも該当しないこと。(条件略)
その出願に係る鉱業出願地が第三十八
条第一項の規定により指定された特定
区域(特定区域の変更があつたときは、
その変更後のものとし、その願書の発
送の時の属する日以前に、同条第七項
の規定により公示されたものに限る。)
と重複しないこと。
その出願に係る試掘出願地が願書の発
送の時においてその目的とする鉱物と
同種の鉱床中に存する鉱物の鉱区と重
複しないこと。
その出願に係る採掘出願地が願書の発
送の時において次のいずれにも該当し
ないこと。
その目的とする鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の他人の鉱
区又は自己の採掘鉱区と重複
すること。
その目的とする鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の自己の試
掘鉱区と重複する場合におい
て、その重複する部分でなお試
掘を要すること。
その目的とする鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の自己の試
掘鉱区と重複する場合におい
て、現に当該試掘鉱区に係る鉱
区税の滞納があること。
その出願に係る鉱業出願地がその目的
となつている鉱物と異種の鉱床中に存
する鉱物の他人の鉱区と重複し、又は
その目的となつている鉱物と同種の鉱
床中に存する鉱物の他人の鉱区と隣接
する場合においては、当該鉱業出願地
における鉱物の掘採が他人の鉱業の実
施を著しく妨害するものでないこと。
その出願に係る鉱業出願地における鉱
物の掘採が、経済的に価値があり、か
つ、保健衛生上害があり、公共の用に
供する施設若しくはこれに準ずる施設
を破壊し、文化財、公園若しくは温泉資
源の保護に支障を生じ、又は農業、林
業若しくはその他の産業の利益を損じ、
公共の福祉に反するものでないこと。
前各号に掲げるもののほか、その出願
に係る鉱業出願地における鉱物の掘採
が内外の社会的経済的事情に照らして
著しく不適切であり、公共の利益の増進
に支障を及ぼすおそれがあるものでな
いこと。
試掘権がその存続期間の満了前に消滅し、又は試掘鉱区の
減少があつた場合において、その試掘権の目的となつていた
鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的とする試掘出願があ
つたとき(その試掘出願地がその消滅した試掘権の鉱区又は
試掘鉱区の減少した部分に該当するときに限る。) その試掘
権の消滅又は試掘鉱区の減少の日から六十日(試掘権の残
存すべき期間又は残存する期間が六十日に満たないときは、
その期間)
採掘権が第五十五条の規定により取り消された場合におい
て、その採掘権を取り消された者以外の者による当該採掘権
の目的となつていた鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的
とする鉱業出願があつたとき(その鉱業出願地がその取り消さ
れた採掘権の鉱区に該当するときに限る。) その取消しの日
から六十日
第十五条第一項の規定による禁止が解除された場合におい
て、その禁止を解除された鉱物を目的とする鉱業出願があつ
たとき(その鉱業出願地がその禁止を解除された地域に該当
するときに限る。) その解除の日から三十日
終了
法29条1項の一
法29条1項の二
法29条1項の三のイ・ロ・ハ
法29条1項の四
法29条1項の五
法29条1項の六
法29条1項の七
法29条1項の八
法29条1項の九
法29条2項の一
法29条2項の二
法29条2項の三
法29条1項の六のイ
法29条1項の六のロ
法29条1項の六のハ
詳細は別紙2(3)B⑤_4鉱業法_許可基準(現行法)参照。
50
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け鉱業法の特徴について分析を行う。
「委任」の範囲選定への活用可能性
BPMNではプールやスイムレーン上にアクティビティを記載する。この特徴により、ある作業はどの主体が行うかという点が
非常にわかりやすくなる。しかしその反面、1つの作業について第一義的な担当者として考えられる主体が存在しており、
場合によってその主体から別の主体へと作業が委ねられるという「委任」についてはモデリングが難しかった。
今回は新旧の法律での相違点を明確化することに主眼を置き、また、モデリングの対象プロセスの全体が委任されて
いることから便宜的に経済産業大臣を経済産業局長と読み替えてモデリングを行っている。仮に、認可のプロセスのうちの
一部分だけが委任可能であるような場合を表現しようとすれば、委任を行う場合と委任を行わない場合とで同じ条文について
複数のダイヤグラムを生成するといった作業が必要になると考えられる。
なおこれによりモデリング作業の工数増が想起されるわけであるが、デメリットばかりではなく、委任を行う場合と
行わない場合とのモデルを見比べることで実務の負荷の違いを想定することができるというメリットもあると考えられる。
特に新法または法改正の条文案を作成している段階や、それらが成立し実務の設計に落とし込もうという段階にあっては、
法律の条文レベルで作成したモデルが実務設計のための議論の土台として活用し得ると考えられる。
例えば今回モデリングの対象では経済産業大臣から経済産業局長へ委任されるケースであったが、これは一般に各地方で
発生した事務手続きがその地方の経済産業局長に委任されるものと考えられる。これについて委任の実施有無や実施の
範囲を全国で統一する必要はなく、地方ごとの申請量や職員数等の実態を勘案して委任の範囲の広狭を最適化することが
可能であれば、事務負担の平準化や事務品質の向上に貢献し得るのではないかと考えられる。その検討の方法としては
条文そのものから行うよりも、モデルを作成した上で行うことが合理的であると考えられる。
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (8/12)
51
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け鉱業法の特徴について分析を行う。
基準の追加部分についての説明力の向上
新旧鉱業法の条文を文章のみで比較しようとすると、条文はほぼそのままであっても条文番号が移動した項目がある
こともあり、難しく感じるところがある。法律の改正に際しては主管省庁から新旧対応表が公表されることが一般的であるが、
新旧対応表は条文番号に応じた新規、変更、削除を可視化しているために記載事項が移動したようなケースにあっては
表現が難しい。「第n条に移動」という記載方法も可能であるとは考えられるが、鉱業法の場合においては削除と新規という
対応がなされている。鉱業法の場合において出願者は民間の事業者等であって法律に通じているとは限らないことから、
法改正の発表を受けて自身に及ぼす影響を分析するために条文の点検に時間を要する可能性がある。(次葉、新条文・
旧条文参照)
新旧対応表とは別に法改正についてポイントを絞って解説する資料も公表されている。こちらの資料は個別の条文の
どのような部分が変わったかまで立ち入って説明をするという性格ではなく、1枚程度の分量で許可基準の追加以外の
変更点も含めた改正の全容を説明するために用意されている。出願者にとっては影響の有無と概要を把握することで
役立つと思われるが、一方で具体的な影響についてその内容まで把握できるほど詳細な説明はされていない。(次々葉、
説明資料参照)
新旧対応表は加除について厳密に説明しており、ポイント解説資料については全容を説明している。BPMNは特に
厳密に読む必要がなければ、特に文法に通じていなくともモデルに書かれた内容を比較的容易に理解することができる。
よって新旧対応表に基づいて今回作成したモデルのように変更の範囲を可視化した資料を作成すれば、影響を受ける側に
対しての親切な情報提供手段として活用し得ると考えられる。ポイント解説資料のように改正の概要を周知する位置づけの
資料との相性が良いと思われる。
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (9/12)
52
B.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (10/12)
新条文
旧条文
「鉱業法の一部を改正する等の法律案新旧対照条文」より抜粋
http://www.meti.go.jp/press/2011/12/20111220001/20111220001-6.pdf
新条文に追加された部分
※旧条文に存在するものが削除され
ここに追加された条文と、まったく新規に
追加された条文とがある
53
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (11/12)
「改正鉱業法について~改正鉱業法が平成24年1月21日施行されました~」関東経済産業局 資源エネルギー環境部 鉱業課
http://www.kanto.meti.go.jp/webmag/topics/1202topics.html
説明資料①
説明資料②
54
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
B.法律の個別分析 ⑤鉱業法 (12/12)
新条文旧条文
※赤枠は追加された条文
55
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
経済産業大臣に対する申出(e-Gov)の根拠となる法令は消費者庁が所管する「家庭用品品質表示法」である。1962年(昭
和37年)10月1日に施行された。当法律は経済産業省が所管していたが、2009年(平成21年)9月に消費者庁の発足に伴い、
消費者庁に移管された。同法律では下記内容が記載されている。
目的(第1条) 、 定義(第2条) 、 表示の標準(第3条) 、 指示等(第4条) 、
表示に関する命令(第5条~第8条) 、 命令の変更又は取消し(第9条) 、 命令の要請(第9条の2)
内閣総理大臣又は経済産業大臣に対する申出(第10条) 、 消費者委員会への諮問(第11条~第17条)
手数料(第18条) 、 報告及び立入検査(第19条) 、 独立行政法人製品評価技術基盤機構による立入検査(第20条)
機構に対する命令(第21条) 、 内閣総理大臣への資料提供等(第22条) 、 権限の委任(第23条)
都道府県が処理する事務(第24条) 、 罰則(第25条~第28条)
当該法律は一般消費者が製品の品質を正しく認識し、一般消費者の利益を保護するために、品質表示に際して定めるべき表
示標準、違反時の指示・命令等について記載されている。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ⑥経済産業大臣に対する申出(e-Gov) (1/5)
56
Ⅰ.法律の構成
【家庭用品品質表示法】
補足
*関連法令
・現行法
特になし
・現行政令
-家庭用品品質表示施行令
・現行府省令
-家庭用品品質表示施行規則
-家庭用品品質表示法の規定に基づく権限の
委任に関する省令
・目的(第1条)
・定義(第2条)
・表示の標準(第3条)
・指示等(第4条)
・表示に関する命令(第5条~第8条)
・命令の変更又は取消し(第9条)
・命令の要請(第9条の2)
・内閣総理大臣又は経済産業大臣に対する申出(第10条)
・消費者委員会への諮問(第11条~第17条)
・手数料(第18条)
・報告及び立入検査(第19条)
・独立行政法人製品評価技術基盤機構による立入検査(第
20条)
・機構に対する命令(第21条)
・内閣総理大臣への資料提供等(第22条)
・権限の委任(第23条)
・都道府県が処理する事務(第24条)
・罰則(第25条~第28条)
※経済産業大臣に対する申出(e-Gov)に関連するプロセ
スを今回モデリング表記した
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑥経済産業大臣に対する申出(e-Gov) (2/5)
57
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
e-Govで「経済産業大臣に対する申出」の根拠となる法令を調査し、e-Govの「書面による手続及び電子申請システムによる
手続の共通情報」の「手続根拠」をもとに法令の原文に当り関係する条文を抽出しモデリングを実施した。
e-Govで「手続根拠」として記載されている家庭用品品質表示法第1条第1項をもとに関係する条文を洗い出したところ、内閣
総理大臣又は経済産業大臣に対する申出(第10条第1項、第2項)が該当した。これらをモデリング記述の対象範囲とした。
ⅰ.経済産業大臣に対する申出が関連する法令のモデリング結果
経済産業大臣に対する申出をモデリングするとプールは「国民」、「消費者庁長官」、「経済産業大臣」の3ケから構成される。
開始のトリガーは「国民」の申出となる。「国民」は品質表示が販売業者に係わるものの場合は「消費者庁長官」、それ以外は
「経済産業大臣」に申出を行う。「消費者庁長官」、又は「経済産業大臣」は申出を受付け、必要な調査を実施し申出の内容が事
実の場合は違反に対する措置をとる。
B.法律の個別分析 ⑥経済産業大臣に対する申出(e-Gov) (3/5)
58
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑥経済産業大臣に対する申出(e-Gov) (4/5)
「経済産業大臣に対する申出」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑥_経済産業大臣に対する申出(e-Gov)参照。
59
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け経済産業大臣に対する申出(e-Gov)の特徴についての分析を行う。
国民目線での申請手続きが把握できる。
プロセスモデルを見ると品質表示が販売業者に係わる場合は消費者庁長官、それ以外は経済産業省に申出を行うこと
が把握できる。プロセスモデルは文章よりも全体の流れが可視化できるため、国民にとって手続がわかりやすいというメ
リットがあるといえる。
省庁間の役割が明確化できる。
当法律は経済産業省が所管していたが、2009年(平成21年)9月に消費者庁の発足に伴い、消費者庁に移管されたこと
もあり、消費者庁長官、経済産業大臣がプールとして定義される。プロセスモデルを作成すると各省庁の役割分担を
可視化することが可能となる。
B.法律の個別分析 ⑥経済産業大臣に対する申出(e-Gov) (5/5)
60
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
「行政手続法」は総務省が所管する法律である。1994年(平成6年)10月1日に施行された。同法律では下記内容が記載され
ている。
総則(第1章) 、 申請に対する処分(第2章) 、 不利益処分(第3章) 、 行政指導(第4章) 、 届出(第5章) 、
意見公募手続等(第6章) 、 補足(第7章)
当該法律は行政運営の公正の確保と透明性の向上のために、処分、行政指導、届出に関する手続における制度、措置につ
いて記載されている。
申請に対する審査基準、標準処理時間、審査、応答等は「申請に対する処分」、不利益処分の基準、手続、等は「不利益処
分」、行政指導の手続等は「行政指導」、届出の定義は「届出」、意見公募の手続は「意見公募手続等」、地方公共団体の措置
は「補足」に記載されている。その他の章には目的、条件、制約、規則に関する項目が記載されている。
関連法令として行政不服審査法、政令、府省令、などが存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ⑦行政手続法 (1/5)
61
Ⅰ.法律の構成
【行政手続法】
補足
*関連法令
・現行法
-行政不服審査法
-行政事件訴訟法
・現行政令
-行政手続法施行令
・現行府省令
特になし
1.総則(第1条~第4条)
-目的、用語の記載
2.申請に対する処分(第5条~第11条)
3.不利益処分(第12条~第31条)
4.行政指導(第32条~第36条)
5.届出(第37条)
※赤破線で囲まれている箇所から申請処分に関するプロ
セスを今回モデリング表記した
6.意見公募手続等(第38条~第45条)
7.補足(第46条)
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑦行政手続法 (2/5)
62
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は申請に対する処分(第2章)にした。
当法律は行政手続きの基本となっている。モデリング記述の対象範囲は最も基本的な手続きである申請に関する申請に対する
処分(第2章)にした。
ⅰ.申請に対する処分のモデリング結果
申請に対する処分をモデリングするとプールは「行政庁」と「申請者」の2ケから構成される。開始のトリガーは「申請者」の申請
書提出となる。行政庁が「申請書」を受付け、記載洩れがないか等の「申請書の形式審査」を実施する。形式審査の結果、申請
書に不備がある場合は申請者に補正を求める。申請書に不備がない場合は申請内容に関する審査を行い、公聴会の開催要
否を判断し、公聴会が必要な場合は「公聴会を開催する」を実施する。その後、許認可・拒否の判断を実施し、申請者に通知す
る。なお、拒否の場合で拒否理由の書面記載が必要な場合は「書面に拒否理由を記載する」を実施する。
B.法律の個別分析 ⑦行政手続法 (3/5)
63
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑦行政手続法 (4/5)
「申請に対する処分」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑦_行政手続法(申請に対する処分)参照。
64
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け行政手続法の特徴についての分析を行う。
審査プロセスが詳細に記載されている。
行政庁は申請書を受領した後は記載事項の不備確認等の形式的な審査を行う。申請書に不備がある場合は申請者
に申請書の補正を求める。不備がない場合は、申請書の内容について審査を行い、必要に応じて公聴会を実施し、許可、
拒否を判断し、その結果を申請者に書面を交付する。
他の法令の申請プロセスを見ると、申請者が申請書を提出した後に、審査する側が審査を行い審査結果を申請者に交
付するといった単純な記載が多い。
それに比べると、形式的な審査を行い書類に不備があれば申請者に申請書の補正を求める等、詳細な記載がされて
いる。
複数の作業者によるモデリングの違い
「C.法律の全体分析 ③比較B.モデル作成者の違い」を参照
B.法律の個別分析 ⑦行政手続法 (5/5)
65
2.モデリング検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
「消費生活用製品安全法」は経済産業省が所管する法律である。1973年(昭和48年)に制定された後、2006年(平成18年)と
2007年(平成19年)に改正され、2007年の改正法は2009年4月1日より施行された。同法律では下記内容が記載されている。
総則(第1章) 、 特定製品(第2章) 、 特定保守製品等(第2章の2) 、 製品事故等に関する措置(第3章) 、
雑則(第4章) 、 罰則(第5章)
当該法律は一般消費者の生活の用に供される製品を「消費生活用製品」とし、消費生活用製品による一般消費者の生命又
は身体に対する危害の発生の防止を図るため、特定製品の製造、輸入及び販売を規制するとともに消費生活用製品の安全性
の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進し、もって一般消費者の利益を保護することを目的としている。
第2章「特定製品」には、国による消費生活用製品の安全規則が定められており、PSCマーク制度として知られるところである。
第2章の2「特定保守製品等」には、製品の経年劣化による事故を未然に防止するため、長期使用製品に対して安全点検・表
示を求める制度について定められている。
第3章「製品事故等に関する措置」には、重大製品事故が発生した場合、事故製品の製造・輸入事業者は、国に対して事故発
生を報告するよう義務付けることが定められている。
関連法令として政令、府省令、などが存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (1/7)
66
Ⅰ.法律の構成
【消費生活用製品安全法】
補足
*関連法令
・現行法
以下の法で所管される製品は本法の対象外
-船舶安全法
-食品衛生法
-消防法
-毒物及び劇物取締法
-道路運送車両法
-高圧ガス保安法
-武器等製造法
-薬事法
・現行政令
-消費生活用製品安全法施行令
・現行府省令
-消費生活用製品安全法施行規則
-経済産業省関係特定製品の技術上の
基準等に関する省令
1.総則(第1条・第2条)
-目的、定義の記載
2.特定製品(第3条~第32条)
-基準並びに販売及び表示の制限
-事業の届け出、検査機関
2-2.特定保守製品等(第32条)
-特定保守製品の点検その他の保守の体制
-経年劣化に関する情報の収集と提供
4.雑則(第40条~第57条)、
5.罰則(第58条~第62条)
※赤破線で囲まれている箇所から主たるプロセスを今回
モデリング表記した
事故の情報
がどのように
報告・開示さ
れるか想起し
やすいことか
ら選定した
3.製品事故等に関する措置(第33条~第39条)
-情報の収集及び提供の責務
-重大製品事故の報告等
2.モデリング検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (2/7)
67
Ⅱ.モデリング結果
モデリング記述の対象範囲は重大製品事故の報告等(第35条~第37条)とした。
本法のモデリングの目的は、2つのツール( Enterprise ArchitectとARIS Express)を用いて同じ条文をモデリングした際の
モデリング結果においてどのような差異が発生するかを検証することである。差異を明確化させるべく、手続きには全体の
流れは単純ながらも、複数の主体が関与する条文を選定することとした。本法記載箇所では「輸入製造事業者」、
「消費者庁(内閣総理大臣から委任)」、「経済産業省」、「所掌する大臣」、「製品評価技術基盤機構」の5つの主体が関与して
おり、手続き全体の流れは容易であると判断している。
以下にモデリングの代表例を記載する。
ⅰ.重大製品事故の報告等のモデリング結果
ⅰ-① 輸入製造事業者から消費者庁(内閣総理大臣)への報告
輸入製造事業者は重大製品事故が発生したことを知った時には内閣総理大臣への報告を行う必要がある。内閣総理大臣は
これを消費者庁に委任しているため、報告先は消費者庁となる。以降は消費者庁を起点として記述する。
ⅰ-② 消費者庁を起点とする情報共有
消費者庁は「経済産業省」、「危害の発生および拡大を防止する事務を所掌する大臣」、との間で重大製品事故に関する
情報共有を行う。このうち、所掌する大臣については通知を行うのみである。経済産業省との間では第一報を通知するとともに、
必要に応じて調査の必要性を協議することとなる。また、経済産業省が必要と判断した場合は「製品評価技術基盤機構」に
対して調査が命ぜられる。これらの調査結果は消費者庁より公表され、消費生活用品の使用に伴う危険の回避に寄与する。
2.モデリング検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (3/7)
68
Ⅱ.モデリング結果
「事故発生時の報告」のプロセスモデル(Enterprise Architectで作成)
詳細は別紙2(3)B⑧_1_消費生活用製品安全法(EnterpriseArchitect版_重大製品事故の報告等)参照。
2.モデリング検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (4/7)
Business Process 別紙2(3)B⑧_1_消費生活用製品安全法(Ent erpriseArchit ect 版_重大製品事故の報告等)
消費者庁・経<<Pool>>
済産業省
製造・輸<<Pool>>
入事業者
事故報告する
事故発生
消費者庁<<Pool>>経済産業省<<Pool>>
報告の受領
報告の通知
法35条の1
通知の受理
法35条3
公表内容の協議
公表内容の協議
法36条2
法56条1
内閣総理大臣よ
り、消費者庁長官
に権限を委任
施行令第13条1
経済産業大臣を主
務大臣に
<<Pool>>
他府省(事
務所掌)
他の法律によって防
止されるべきものと
認めるか
報告の通知
通知の受理
法35条4
危険の回避に資する事
項の公表
施行令10条
他の法律は「有害物質を含有する家庭
用品の規制に関する法律」
公表の必要がある
と認めるか
調査の必要があ
ると認めるか
安全性に関する調査
技術上の調査の
必要があると認め
るか
<<Pool>>NITE
安全性に関する技術上
の調査
技術上の調査の指示
指示の受領
技術上の調査結果の
受領
終了
法36条3
法36条1
法36条4
終了
終了
終了
技術上の調査結果の
報告
公表内容の決定
他の法律に基づく危害
の発生および拡大を防
止する事務の実施
終了
調査の必要があると
認めるか
調査を開始する
調査を開始する
技術上の調査結果の
報告
終了
終了
調査の開始
認める
認める
認める
認める
認めない
認めない
認めない
認めない
認める認めな
い
69
Ⅱ.モデリング結果
「事故発生時の報告」のプロセスモデル(Aris Expressで作成)
輸入製造事業者内閣総理大臣主務大臣機構所管する大臣
【第三十五条1】
当該消費生活用製品の名
称及び型式、事故の内容並
びに当該消費生活用製品を
製造し、又は輸入した数量
及び販売した数量を内閣総
理大臣に報告しなければな
らない。
【第三十五条2】
直ちに、当該報告の内容に
ついて、主務大臣に通知する
【第三十五条3】
必要性の判定
【第三十五条4】
直ちに、当該報告の内容について、
当該政令で定める他の法律の規
定に基づき危害の発生及び拡大を
防止する事務を所掌する大臣に通
知する
当該報告に係る重大製品事故による一
般消費者の生命又は身体に対する危害
の発生及び拡大が政令で定める他の法律
の規定によつて防止されるべきものと認め...
【第三十六条1】
必要性の判断
その他重大製品事
故が生じたことを知つ
た場合
第三十五条1項に関
する報告を受ける
【第三十六条1】
当該重大製品事故に係る消費生
活用製品の名称及び型式、事故
の内容その他当該消費生活用製
品の使用に伴う危険の回避に資す
る事項を公表するものとする。
【第三十六条2】
協議を行う
協議を要する
【第三十六条2】
協議を行う
【第三十六条3】
調査を行う
調査を要する
【第三十六条3】
必要性の判定
【第三十六条3】
調査を行う
【第三十六条3】
必要性の判定
調査を要する
【第三十六条4】
消費生活用製品の安全性に関す
る技術上の調査を行わせる
【第三十六条4】
必要性の判定
調査を要する
調査の命を受ける
通知を受ける
協議が不要
協議を要する場合
調査が不要
調査が不要
通知を受ける
重大製品事故が生
じたことを知つたとき
調査が不要
調査報告を受ける
調査結果を報告する
2.モデリング検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (5/7)
詳細は別紙2(3)B⑧_2_消費生活用製品安全法(ARIS-Express版_重大製品事故の報告等)参照。
70
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け消費生活用製品安全法の特徴についての分析を行う。
ツールの操作感に起因する相違点
BMPNは仕様として定まっているものであり、片方のツールで表現したモデルがもう片方では表現できないことは
基本的に考えにくい。ツールの性格・特徴に起因する相違点としては、以下の3点が挙げられる。
1)主観的な感想となるが、ARIS Expressではグリッドへの配置がストレスなく実施でき、作成されたモデルも整然と
並んだような印象を受ける。対してEnterpriseArchitectではグリッドへの配置機能があるものの、シーケンスフローや
メッセージフローの配置や位置修正においてグリッドへの配置感が悪いと感じられることがあった。また、何種類か
用意されている自動整形の機能のうち、どれを用いれば良いのかが直感的にわからず、試行錯誤を必要とした。
2)モデリングは試行錯誤を要する作業であり、ツールは操作者の意思を可能な限りスムーズに、ストレスなく画面上に
反映することが重要である。一度配置した部品について、ARIS Expressは複数の部品を選択して再配置をする操作が
機敏に応答してストレスなく実施することができた。更に、指定箇所に対して縦横のいずれかの方向に任意の幅で
余白を追加する機能が準備されている。当初想定していたプロセスが変更となり、後から中間に新たなプロセスを
追加することは少なくないため、頻繁に活用した機能であった。
対するEnterpriseArchitectでは複数の部品を選択して移動する際に若干ながら操作の応答が悪化することがあり、
例えばタスクの部品を動かそうとしてプールが移動してしまうようなことが何度か発生した。ただし、両ツールとも
全体を通じまったく気にならないレベルであった。
3)EnterpriseArchitectでは「プロジェクト」という概念がある。1つのプロジェクトには複数のダイヤグラム(モデル)を
管理することができる。これにより、1つのダイヤグラムで作成したサブプロセス等の部品を同じプロジェクト内の
まったく別のダイヤグラム上で使用することができる。
ARIS Expressでは1つのファイルで1つのダイヤグラムを管理する方式であるため、ファイルをまたがった部品の
再利用の方法が用意されていないと思われる。
2.モデリング検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (6/7)
71
Ⅲ.モデリング分析
「協議」の表現について
消費者庁と経済産業省との間での協議について、BPMNの表現としては協議に関わる両者のタスク間を2本の
メッセージフローで相互に接続するという方法がある。BPMNには「あまり習熟していない者が見てもそのモデルが
表現したいことを大枠で把握しやすい」という特徴があるが、協議のような記述は一般的には読み解きにくいもので
あるように感じられた。そのため、EnterpriseArchitectでの記述は「消費者庁と経済産業省」が一体となったプールを
設置し、協議事項はそのプール上で処理されるような方法を試みた。このような記載方法はBPMNに習熟していない
読み手にとっては伝わりやすいものの、概念レベルで作成したモデルを実際の処理に近いレベルに落とし込んで
いく過程で、誰が実際に処理をするのかという点等が課題となりモデリングが行き詰まってしまう恐れがある。
この試行を通じて得られたモデルの比較を行った結果として、モデリングはBPMNに準拠して進め、読み手に
伝わりにくい可能性がある箇所についてはBPMNで許容された方法により日本語による補足を追加することが
望ましいと思われる。
2.モデリング検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑧消費生活用製品安全法 (7/7)
72
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
特別用途食品の許可(e-Gov)の根拠となる法令は厚生労働省、消費者庁(表示基準の企画立案、執行)が所管する
「健康増進法」である。2003年(平成15年)5月1日に施行された。当法律は厚生労働省が所管していたが、2009年(平成21年)
9月1日に消費者庁の発足に伴い、表示基準の企画立案、執行については消費者庁に移管された。同法律では下記内容が
記載されている。
総則(第1章) 、 基本方針等(第2章) 、 国民健康・栄養調査等(第3章) 、 保険指導等(第4章) 、
特定給食施設等(第5章) 、 特別用途表示、栄養表示基準等(第6章) 、 雑則(第7章) 、 罰則(第8章)
当該法律は国民の健康の増進を推進するため、国民、国及び地方公共団体、健康増進事業実施者の責務について記載され
ている。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ⑨特別用途食品の許可(e-Gov) (1/5)
73
Ⅰ.法律の構成
【健康増進法】
補足
*関連法令
・現行法
特になし
・現行政令
-健康増進施行令
・現行府省令
-健康増進施行規則
-健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に
関する内閣府例
1.総則(第1条~第6条)
-目的、用語の記載
2.基本方針(第7条~第9条)
3.国民健康・栄養調査の実施(第10条~第16条)
4.保険指導等(第17条~第19条の4)
5.特定給食施設の届出(第20条~第25条)
※特別用途食品の許可(e-Gov)に関連するプロセスを今
回モデリング表記した
6.特別用途表示の許可(第26条~第33条)
-特別用途表示の登録、更新、取消などの取り決め
7.雑則(第34条~第35条)
8.罰則(第36条~第40条)
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑨特別用途食品の許可(e-Gov) (2/5)
74
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
e-Govで「特別用途食品の許可」の根拠となる法令を調査し、e-Govの「書面による手続及び電子申請システムによる手続の
共通情報」の「手続根拠」をもとに法令の原文に当り関係する条文を抽出しモデリングを実施した。
e-Govで「手続根拠」として記載されている健康増進法第26条第1項をもとに関係する条文を洗い出したところ、特別用途表示
の許可(第26条第1項~第7項)、試験の義務(第26条の6)、権限の委任(第35条第3項)が該当した。これらをモデリング記述
の対象範囲とした。
ⅰ.特別用途食品の許可が関連する法令のモデリング結果
特定用途食品の許可をモデリングするとプールは「特別用途表示をしようとする者」、「都道府県知事」、「消費者庁長官」、「登
録試験機関」、「厚生労働大臣」の5ケから構成される。開始のトリガーは「特別用途表示をしようとする者」の申請書提出となる。
「都道府県知事」を経由し、「消費者庁長官」が受け付け、「登録試験機関」に許可試験の実施させる。「消費者庁長官」は試験
結果を受け、許可を与えようとする場合は「厚生労働省」に意見を求め、異論がなければ許可を行う。許可試験で却下となった
場合、「厚生労働省」から許可に異論があった場合は申請を却下する。
B.法律の個別分析 ⑨特別用途食品の許可(e-Gov) (3/5)
75
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑨特別用途食品の許可(e-Gov) (4/5)
「特別用途食品の許可」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑨_特別用途食品の許可(e-Gov)参照。
76
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け特別用途食品の許可(e-Gov)の特徴についての分析を行う。
複数省庁の関連性が可視化できる。
当法律は厚生労働省が所管していたが、2009年(平成21年)9月1日に消費者庁の発足に伴い、表示基準の企画立案、
執行については消費者庁に移管されたこともあり、消費者庁長官、厚生労働省がプールとして定義される。プロセスモデル
として表記することで複数省庁の関係性が可視化できる。
省庁間の業務負荷が把握できる。
上述のように複数省庁の関係性が可視化した後に、各省庁の処理にどの程度の時間を要するかも併せて把握すること
で、省庁間の業務負荷を把握することが可能になると思われる。業務負荷を低減するために必要となるシステム化等の施
策立案に繋がる可能性がある。
システム要件定義におけるプロセスモデルの有効活用の可能性がある。
また複数省庁の関係性が可視化できると、システム要件定義時にプロセスモデルを見ることにより各省庁間の
システム連携の必要性を把握することが可能になる。システム要件として、サービス定義、データ連携の必要性を把握でき、
複数省庁間の連携要件の漏れを防ぐことができると考えられる。
B.法律の個別分析 ⑨特別用途食品の許可(e-Gov) (5/5)
77
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅰ.法律の構成
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」は経済産業省が所管する法律である。2005年(平成17年)4月13日に施
行された。同法律では下記内容が記載されている。
総則(第1章) 、 創業及び新規中小企業の事業活動の促進(第2章) 、
中小企業の経営革新及び異分野連携新事業分野開拓の促進(第3章) 、
中小企業の新たな事業活動の促進のための基盤整備(第4章) 、 雑則(第5章) 、 罰則(第6章)
当該法律は利用者にとって分かりやすい施策体系を実現するために、中小企業経営革新支援法、中小企業の創造的事業
活動の促進に関する臨時措置法、新事業創出促進法の3法律を整理統合され作成された。
創業及び新規中小企業の事業活動の促進(第2章)、中小企業経営革新及び異分野連携新事業分野開拓の促進(第3章)、
中小企業の新たな事業活動の促進のための基盤整備(第4章)でそれぞれ各施策の規定、及び中小企業の申請手続きに
ついて記載されている。
関連法令として、政令、府省令、などが存在する。
法律の構成や関連法令に関する一覧を次葉にまとめている。
B.法律の個別分析 ⑩中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律 (1/5)
78
Ⅰ.法律の構成
【中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律】
補足
*関連法令
・現行法
特になし
・現行政令
-中小企業の新たな事業活動の促進に関する
法律施行令
・現行府省令
-中小企業の新たな事業活動の促進に関する
法律施行規則
-中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に
規定する情報関連人材育成事業を定める省令
1.総則(第1条~第3条)
-目的、用語の記載
2.創業及び新規中小企業の事業活動の促進
(第4条~第8条)
3.中小企業の経営革新及び異分野連携新事業分野開拓の
促進(第9条~第15条)
4.中小企業の新たな事業活動の促進のための基盤整備
(第16条~第32条)
5.雑則(第33条~第38条)
6.罰則(第39条)
※赤破線で囲まれている箇所から経営革新計画の承認に
関するプロセスを今回モデリング表記した
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑩中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律 (2/5)
79
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅱ.モデリング結果
当法律は中小企業等を支援するものであるため、中小企業の経営革新及び異分野連携新事業分野開拓の促進(第3章)、
中小企業の新たな事業活動の促進のための基盤整備(第4章)は中小企業の申請、及び主務大臣の承認の記載が多い。
モデリング記述の対象範囲は各種申請の中から「中小企業の経営革新及び異分野連携新事業分野開拓の促進(第3章)」の
経営革新計画の承認(第9条)にした。
ⅰ.経営革新計画の承認のモデリング結果
経営革新計画の承認をモデリングするとプールは「中行企業者等」と「行政庁」から構成される。開始のトリガーは「中小企業
者等」の経営革新計画書提出となる。行政庁が「経営革新計画書」を受付け、「審査を行う」を実施する。審査の結果、承認、却
下を中小企業者等に「通知する」を実施する。
B.法律の個別分析 ⑩中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律 (3/5)
80
Ⅱ.モデリング結果
2.モデリングの検証 (3)検討
B.法律の個別分析 ⑩中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律 (4/5)
「経営革新計画の承認」のプロセスモデル
詳細は別紙2(3)B⑩_中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(経営革新計画書の申請・承認)参照。
81
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.モデリング分析
モデリング結果を受け経営革新計画の承認の特徴についての分析を行う。
申請のプロセスが類似している。
「中小企業の経営革新及び異分野連携新事業分野開拓の促進(第3章)」の経営革新計画の承認(第九条)の他に
以下申請が記載されている。
—異分野連携新事業分野開拓計画の認定(第11条)
—経営基盤強化計画の承認(第16条)
上記、異分野連携新事業分野開拓計画の認定(第11条)、中小企業の新たな事業活動の促進のための基盤整備
(第4章)の条文を確認すると、経営革新計画の承認(第9条)とほぼ同様になっている。
B.法律の個別分析 ⑩中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律 (5/5)
82
条文では、「勧告」と「命令」のように類似するが強制力が異なる用語を状況に応じて使い分けている。類似するが
強制力の異なる用語もBPMN上、サブプロセスとして記述すれば、記述内容の再利用性が高まると考えられる。)
例として、以下に、家電リサイクル法で「勧告」、「命令」を使用している箇所を示す。<法律>
(家電リサイクル法)
主務大臣は、前項に規定する勧告を受けた小売業者が、正当
な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合におい
て、特に必要があると認めるときは、当該小売業者に対し、そ
の勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
2
主務大臣は、小売業者が前条第一項の規定により公表した料
金が、特定家庭用機器廃棄物の収集及び運搬を能率的に行っ
た場合における適正な原価を著しく超えていると認めるときは、
当該小売業者に対し、期限を定めて、その公表した料金を変更
すべき旨の勧告をすることができる。
第14条
料金に対す
る勧告等
主務大臣は、前項に規定する勧告を受けた製造
業者等が、正当な理由がなくてその勧告に係る
措置をとらなかったときは、当該製造業者等に対
し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずる
ことができる。
2
主務大臣は、製造業者等が前条第一項の規定
により公表した料金が特定家庭用機器廃棄物の
再商品化等に必要な行為を能率的に実施した場
合における適正な原価を著しく超えているとき、
又は製造業者等が特定家庭用機器廃棄物の引
取りに際し同項の規定により公表した料金の額
以外の額を請求しているときは、当該製造業者
等に対し、期限を定めて、その公表した料金を変
更すべき旨の勧告をすることができる。
第21条
料金に対する勧
告等
勧告
命令
主務大臣は、前項に規定する勧告を受けた小売業者が、正当
な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、当
該小売業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ず
ることができる。
2
主務大臣は、正当な理由がなくて前条に規定する引取り又は
引渡しをしない小売業者があるときは、当該小売業者に対し、
当該引取り又は引渡しをすべき旨の勧告をすることができる。
第16条
勧告及び命令
主務大臣は、小売業者に対し、第九条に規定する特定家庭用
機器廃棄物の引取り又は第十条に規定する特定家庭用機器
廃棄物の引渡しの実施を確保するため必要があると認めると
きは、当該引取り又は引渡しの実施に関し必要な指導及び助
言をすることができる。
第15条
指導及び助言
指導及び助言
勧告
命令
<相違点>
14条2項には「特に必要があると認めるときは」という重
みの付帯条件があるが他にはない。
(14条2項、16条2項、21条2項)
<類似点>
主語は「主務大臣」で同じ。同じく「勧告をすることがで
きる」旨を定めている。
(14条1項、16条1項、21条1項)
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 記述方法の共通化(1/2)
83
主務大臣
対象者
勧告 命令改善なし
前葉で説明した条文の箇所に対し、モデリングを実施する。モデリング結果は以下の通りでありサブプロセス化
を行うことでモデリング結果の再利用が見込めことが分かる。
家電リサイクル法のモデルのうち第14条1項2項に関連する部分を抜粋
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 記述方法の共通化(2/2)
84
<準用の例>
家電リサイクル法では製造業者と指定法人がともに廃家電の再商品化を担う。そのため条文では製造業者に規定
された事項を指定法人が「準用」する箇所が複数個所存在する。
準用とされた箇所がサブプロセスである場合、準用する側を「参照サブプロセス」を用いて描くことができる。これに
より、元となる条文(準用される条文)を変更する場合にダイヤグラム上で利用箇所を点検すれば、その影響を把握
しやすくなると考えられる。
<法>
第34条
料金等の
公表等
指定法人は、主務省令で定めるところにより、前条第2号及び
第3号に掲げる業務に関する料金その他主務省令で定める事項に
ついて、あらかじめ、公表しなければならない。これを変更するとき
も、同様とする。
<則>
第21条
指定法人
の料金の
公表
第8条の規定は、法第34条第1項の規定による公表について準用
する。
<則>
第8条
製造業者
等の料金
の公表の
方法
法第20条第1項の規定による公表は時事に関する事項を掲載
する日刊新聞紙に掲載する方法により行うものとする。
<法>
第20条
料金の公
表等
製造業者等は、主務省令で定めるところにより、前条に規定する
料金について、あらかじめ、公表しなければならない。これを変更
するときも、同様とする。
製造業者
指定法人
準用
(家電リサイクル法)
法に公表の義務を
規定
則に公表の方法を
規定(日刊新聞紙
への掲載)
法に公表の義務を
規定
則で上記を準用
(則8条を参照)
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 「準用」の取扱い(1/2)
85
家電リサイクル法に対し、参照サブプロセスの使用が見込める箇所を以下に例示する。(料金の公表)
家電リサイクル法のモデルのうち第20条1項に関連する部分を抜粋
元となる条文(則8条)を表すサブ
プロセス
※説明上、上の図では便宜的に
受信タスクとして表現している
家電リサイクル法のモデルのうち第34条1項に関連する部分を抜粋
準用する条文(則21条)を表すサ
ブプロセス
※説明上、上の図では便宜的に
受信タスクとして表現している
条文上では『準用』
モデル上では『参照』
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 「準用」の取扱い(2/2)
86
<同様の例>
経済産業省に対する申請事項について、新規に届け出を行った場合と、その後変更を行った場合にプロセスが
同一となる場合には、条文は『これを変更するときも、同様とする。』と記載される。
上記形式の条文は、BPMNでサブプロセスとして記述する、または包含ゲートウェイを利用する等のいくつかの
記述方法が考えられる。いずれの方法であっても、条文で「同様」として記載文言を圧縮しているのと同様に、
モデル上でも記載する部品点数を減らすことが可能になると考えられる。
第20条 料金の公表等
製造業者等は、主務省令で定めるところにより、前条に規
定する料金について、あらかじめ、公表しなければならな
い。これを変更するときも、同様とする。
第13条
料金の公表
等
小売業者は、主務省令で定めるところにより、第11条に
規定する料金について、あらかじめ、公表しなければなら
ない。これを変更するときも、同様とする。
第29条2
指定引取場
所の配置等
製造業者等は、指定引取場所を指定したときは、当該指定
引取場所の位置について、主務省令で定めるところにより
、遅滞なく、公表しなければならない。これを変更したときも
、同様とする。
第34条
料金等の公
表等
指定法人は、主務省令で定めるところにより、前条第2号
及び第3号に掲げる業務に関する料金その他主務省令で
定める事項について、あらかじめ、公表しなければならな
い。これを変更するときも、同様とする。
右記のケースでは
オリジナル4本、「同
様とする」4本で4
セット8本のプロセス
を作成する。
(家電リサイクル法)
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 「同様」の取扱い(1/2)
87
Business Process BPMN 2.0 Business Process View
<<Pool>>
料金を決定する
料金を公表する
料金を変更する
家電リサイクル法の第13条について、例示のために簡略化したモデルを作成
Business Process BPMN 2.0 Business Process View
<<Pool>>
料金を決定する 料金を公表する
Business Process BPMN 2.0 Business Process View
<<Pool>>
料金を変更する 料金の変更について公
表する
新規の場合と変更の場合とを
別々のダイアグラムに表現
「料金を公表する」が新規の
場合と変更の場合との共通
部品として表現される例
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 「同様」の取扱い(2/2)
家電リサイクル法に対し、プロセスの集約が見込める箇所を以下に例示する。(料金の公表)
88
章 条 条文見出し C R U D
第2章 第9条 第一種フロン類回収業者の登録 ○ - - -
第10条 登録の実施 ○ - - -
第11条 登録の拒否 ○ - - -
第12条 登録の更新 - - ○ -
第13条 変更の届出 - - ○ -
第14条 第一種フロン類回収業者登録簿の閲覧 - ○ - -
第15条 廃業等の届出 - - - ○
第16条 登録の抹消 - - - ○
第条 登録の取消し等 - - - ○
~ ~
第3章 第25条 フロン類破壊業者の許可 ○ - - -
第26条 許可の基準 - - - -
第27条 許可の更新 - - ○ -
第28条 変更の許可等 - - ○ -
第29条 廃業等の届出 - - - ○
第30条 許可の取消し等 - - - ○
~ ~
C:作成(Create)
R:読み出し(Read)
U:更新(Update)
D:削除(DELETE)
届出系の業務処理を、届出データのCRUDで整理できないかを検討する。
新規届出、変更届出、廃業届出、等でBPMNダイアグラムをパターン化できないか、を検討する。
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 CRUDを用いた整理(1/2)
89
届出系の“C:作成”に該当するプロセスを比較してみると、類似するプロセスであると判断できる。
新規届出、変更届出、廃業届出、の分類時にCRUDの観点で分類することは有効と考えられる。
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ①標準化の検討 CRUDを用いた整理(2/2)
行政手続法「申請に対する処分」 中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律「経営革新計画書の申請・承認」
フロン回収破壊法「フロン破壊業者の許可申請」 フロン回収破壊法「第一種フロン類回収業者の登録」
• 申請関連のプロセスモデルを比較すると、行政手続法の審査は申請書の記載洩れ等の形式的な審査
と内容の審査の二段階の審査があり、審査プロセスが詳細になっている。
• 他3つのプロセスモデルを見ると、極めて類似している。
90
条文見出し 条 項 号 条文
フロン類破
壊業者の
許可
第25条
1
特定製品に冷媒として充てんされているフロン類の破壊を業として行おうとする者は、その業務を行う事業所ごとに、主務大
臣の許可を受けなければならない。
2
前項の許可を受けようとする者は、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に主務省令で定める
書類を添えて、これを主務大臣に提出しなければならない。
1 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
~ ・・・
6 その他主務省令で定める事項
許可の基
準
第26条 1
主務大臣は、前条第1項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
1
その申請に係る前条第2項第4号及び第5号に掲げる事項が主務省令で定めるフロン類破壊施設に係る構造、破壊の能力
並びに使用及び管理に関する基準に適合するものであること。
2 申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
~ ・・・
ハ 第30条の規定により許可を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
ヘ 法人であって、その役員のうちにイからホまでのいずれかに該当する者があるもの
<法律>
同一の手続に関する説明において、法律と手引書では記載されている内容にかなりの相違が見受けられる。
フロン類破壊業者の許可に関わる法律について両者の相違の検証を行う。
C.法律の全体分析 ②比較A.法律と手引書の違い(1/3)
2.モデリングの検証 (3)検討
91
フロン類破壊業者の許可に関わる手引書は以下の内容である。(手引書から一部抜粋)
法律、政令の引用
法律、政令の解説
法律、政令には記載の
無い内容
法律、政令の内容を具
体化した記載
法律には記載の無い内
容
<手引書>
C.法律の全体分析 ②比較A.法律と手引書の違い(2/3)
フロン回収破壊法
フロン類の破壊に
関する運用の手引き
(第 6 版)
平成18年3月24日
経済産業省
製造産業局オゾン層
保護等推進室
環境省地球環境局
環境保全対策課
フロン等対策推進室
2.モデリングの検証 (3)検討
92
C.法律の全体分析 ②比較A.法律と手引書の違い(3/3)
法律に基づいて記載したモデリング結果と手引書に基づいて記載したモデリング結果では記載粒度に対し、かな
りの差異が発生することが分かる。
法令に基づいて記載したプロセスモデル
手引書に基づいて記載したプロセスモデル
2.モデリングの検証 (3)検討
93
C.法律の全体分析 ③比較B.モデル作成者の違い
プールを利用する場合は、プール内に開始イベントと終了イベントを表記する必要があるが、プロセスモデル経
験の少ない担当者はプールをレーンのように表記している。細かい表記ルールに関する違いが見られた。
2.モデリングの検証 (3)検討
プロセスモデル経験が少ない担当者
プロセスモデル経験が多い担当者
94
C.法律の全体分析 ④比較C.ツールの違い サブプロセスの扱い (Enterprise Architect)
Enterprise Architectではサブプロセスを階層化して管理することができる。大まかなプロセスを記述するモデル
から詳細なプロセスを記述するモデルまで別々にファイルを作成した場合、出来上がるファイル数が膨大となり管
理が煩雑になる懸念がある。細かなプロセスは上位のファイルにサブプロセスとして埋め込むことで、そのような煩
雑さが解消された。
以下の図は「許可判定を行う」という1つのサブプロセスがあり、サブプロセスの内容を別のダイヤグラムとして記
載した様子である。
2.モデリングの検証 (3)検討
サブプロセス
「許可判定を行う」
サブプロセスを具体化した
ダイヤグラム一式
95
C.法律の全体分析 ④比較C.ツールの違い パターン管理機能 ( ARIS Express )
ARIS Expressではよく使用するパターンを管理する「Fragments」機能がある。例えば下図の許可審査のパター
ンであれば、 Inclusive gatewayによって複数ある条件のすべてを満たしているかどうかをチェックする場合に使い
回すことができる。
なおこのFragmentsはわざわざ生成するのではなく、既に作成したモデルから部分を切り取ることによって増やし
ていくことができる。これにより外形上似たような構成のモデリング箇所を記述する場合にgatewayやtaskといった
単品の部品から書き始める手間が省略される。似たような箇所を持つモデルを思い出し、コピーする必要もない。
さほど目立って便利な機能ではないが、モデリングの実施者が頭の中に思い描くモデリング結果をツール上に実
現させていく過程において、モデリングツールの扱い自体に対して手間取ることは思考の中断を招き効率や品質
を低下させることにもつながる。ツールがこのような細やかな配慮を備えていることは重要である。その狙いや実
際の使用感から、情報システムのプログラミングの世界における「コードスニペット」と同種の支援機能であると言
える。
2.モデリングの検証 (3)検討
96
C.法律の全体分析 ④比較C.ツールの違い 文法チェック (Intalio)
2.モデリングの検証 (3)検討
モデリング作業中に
文法エラーを通知
IntalioはBPM関連の標準仕様であるBPMN1.1とBPEL2.0をサポートしているツールである。またオープンソース開
発環境として多数のユーザーに採用されているEuropa(Eclipse 3.3)に組み込まれ、また人気の高いWebサーバー
ソフトウェアApacheなどを提供しているApache Foundation公式のBPELプロセス・エンジンにも認められている。
Intalioではプロセスの設計とプロセスの実行の両方を行うことができる。
特徴として、モデリング作業中に文法エラーをリアルタイムに通知することが挙げられる。なお、プロセス実行機
能を有しているのでIntalioは文法チェックが他ツールに比べ厳しい。他ツールであれば許容される記述もIntalioで
はエラーとみなされることもある。Intalioの文法チェックに従えばモデリング成果物の標準化は行い易い一方で柔
軟な表現を行い難いということも特徴として挙げられる。
97
現時点における各モデリングツールに対する評価(感想レベル)は以下の通りである。
実際に各ツールを使って作業を行った作業者による評価。
複数の作業者の評価に基づいて、各評価軸について優れている、よく出来ているなどプラスの評価
が多かったものに「良」を記載。
操作性 機能性 学習容易性 ファイル出力
Intalio
BPMS
• 制約が多く直感的な入
力を行いにくい
• モデルのエラーの発見
数が多い
• リアルタイムで文法
チェックエラーを通
知する
• 日本語のマニュアル
類が少ない
良
• JPG出力が可能
Enterprise
Architect
良
• 応答が良い
• UNDOが効かない操
作がある 良
• 文法チェックが良い
• ファイル内に複数の
ダイヤグラムを収納
可能である
良
• 有償版であるためマ
ニュアルが充実
良
• PDF出力が可能
• 外部ソフトに対しメ
タファイル形式での
貼り付けが可能
ARIS 良
• 応答が良い
• グリッドが使いやすい
(スナップ感が良い)
良
• 事後のレイアウト調
整が容易
• Fragments(スニペ
ット)機能を備える
• ツールのメニューが
英語
• BPMN関連の英語ば
かりであったので気
にならない
良
• PDF出力が可能
• EMF出力が可能
(拡張メタファイル)
• 外部ソフトに対しメ
タファイル形式での
貼り付けが可能
C.法律の全体分析 ④比較C.ツールの違い ツールに対する評価
2.モデリングの検証 (3)検討
98
条文見出し 条 項 号 条文
第一種フロ
ン類回収業
者の登録
第9条
1
第一種フロン類回収業(第一種特定製品が整備され、又は第一種特定製品の廃棄等が行われる場合において当該第一種特定製品に
冷媒として充てんされている フロン類を回収することを業として行うことをいう。以下同じ。)を行おうとする者は、その業務を行おうとす
る区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
2
前項の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書に主務省令で定める書類を添えて、これを都道府県知事に提出
しなければならない。
1 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
~ ~
5 その他主務省令で定める事項
登録の実施 第10条
1
都道府県知事は、前条第2項の規定による登録の申請があったときは、次条第1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、前条
第2項第1号から第3号までに掲げる事項並びに登録年月日及び登録番号を第一種フロン類回収業者登録簿に登録しなければならな
い。
2 都道府県知事は、前項の規定による登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない。
登録の拒否 第11条
1
都道府県知事は、第9条第1項の登録を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するとき、同条第2項の規定による登録の申請
に係る同項第4号に掲げる事項が第1種特定製品からのフロン類の回収を適正かつ確実に実施するに足りるものとして主務省令で定
める基準に適合していないと認めるとき、又は申請書 若しくは添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要
な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
1 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
2
この法律の規定若しくは使用済自動車再資源化法 の規定(引取業者(使用済自動車再資源化法第2条第11項 に規定する引取業者を
いう。以下同じ。)、第二種フロン類回収業者(同条第12項 に規定するフロン類回収業者をいう。以下同じ。)又は自動車製造業者等(
同条第16項 に規定する自動車製造業者等をいう。以下同じ。)に係るものに限る。第26条第2号ロにおいて同じ。)又はこれらの規定に
基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
3 第17条第1項の規定により登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
( 続く )
条件分岐で表現
条文では複数の条件を並列的に記載されることが多い。(下記条例第11条ご参照)
BPMN表記時には複数の表現が可能であるので表現方法について検討を行う。
<法律>
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ⑤適合判断の表現(1/3)
99
条文見出し 条 項 号 条文
登録の拒否 第11条
1 4
第9条第1項の登録を受けた者(以下「第一種フロン類回収業者」という。)で法人であるものが第17条第1項の規定により登録を取り消
された場合におい て、その処分のあった日前30日以内にその第一種フロン類回収業者の役員であった者でその処分のあった日から2
年を経過しないもの
5 第17条第1項の規定により業務の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
6 法人であって、その役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの
2 都道府県知事は、前項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を申請者に通知しなければならない。
( 続き )
条件分岐で表現
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ⑤適合判断の表現(2/3)
【前葉と同一内容を記載】
条文では複数の条件を並列的に記載されることが多い。(下記条例第11条ご参照)
BPMN表記時には複数の表現が可能であるので表現方法について検討を行う。
100
フロン_第2章_第一種フロン類回収業者の登録(ゲートウェイカスケード接続)
フロン_第2章_第一種フロン類回収業者の登録(判断のサブプロセス化)
適合判断をBPMNで一律に全てを表現すると、条件分岐が多くなるためプロセスが見にくく、内容が分かりにく
くなる。下記の通り、判断のサブプロセス化を行うことによりプロセスの全体感が掴みやすくなることが分かる。
2.モデリングの検証 (3)検討 C.法律の全体分析 ⑤適合判断の表現(3/3)
101
BPMN2.0
BPEL生成
2.モデリングの検証 (3)検討
今回選定したモデリングツールのうち、Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)にはBPEL生成機能が
含まれているのでBPEL生成機能を検証する。
Ⅰ.BPEL生成初回
• Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)バージョン9.2.922で作成したBPMNからBPEL生成を行うと、エラーが発生。
• BPMNから単純にBPEL生成できないことが判明。
Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)バージョン9.2.922
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(1/8)
102
Ⅱ.判明したBPEL生成の制約
項目 BPEL1.1 BPEL2.0
モデリングに
おける制約
BPELプロセス要素およびすべてのサブプロセスには、開始イベントと終
了イベントが必要です。
– 開始イベント・終了イベントはサブプロセスの境界に配置される必要はあり
ません。
シーケンスフローのループには対応していません。アクティビティのルー
プのみに対応しています。シーケンスフローは、必ず1方向に流れるよう
にしてください。
複数のトリガを設定した中間イベントには対応していません。
マルチインスタンスのWhile並行ループには対応していません。
独立したサブプロセスには対応していません。
プールには、子要素を格納したり、シーケンスフローを関連づけたりする
ことはできません。
BPELプロセス要素およびすべてのサブプロセスには、開始イベントと終
了イベントが必要です。
– 開始イベント・終了イベントはサブプロセスの境界に配置される必要はあり
ません。
サブプロセスはループノードにすることはできません。中間イベントを配
置する必要があります。
イベントのサブプロセスはループノードとして振る舞うことはできません。
以下の要素に対する割り当てには対応していません。
– 開始イベントやイベントのサブプロセス
– 終了イベント
– サブプロセス
– 境界上にある中間イベント
– ゲートウェイ
– XORイベントのゲートウェイの直後に続くタスクや中間イベント
例外パスは、通常パスに戻らなければなりません。
– このルールにおける例外は、境界上にある補償中間イベントです。
– あるアクティビティから複数の例外パスが出る場合、そのすべてが、通常
パスの同じ場所に戻らなければなりません。
– 例外パスから別の例外パスに移動してはなりません。
例外パスにあるアクティビティには境界上の中間のイベントは利用でき
ません。
プールには、子要素を格納したり、シーケンスフローを関連づけたりする
ことはできません。
• 一般的に、BPMNダイアグラムからBPELには完全には自動変換できない。
• 具体例として、Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)バージョン9.2.922のヘルプファイルを見ると、BPELプロセスモ
デリングには以下制約がある。
2.モデリングの検証 (3)検討
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(2/8)
103
BPEL生成
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅲ.BPEL生成(制約考慮後)
• ツールのBPEL生成における制約を加味し、BPMNダイアグラムを単純化した上で、BPEL生成を実施。
• エラー無くBPEL生成されることを確認。
Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)バージョン9.2.922
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(3/8)
104
<?xml version="1.0"?>
<bpel:process name="SampleBPELProcess" suppressJoinFailure="yes“
queryLanguage="urn:oasis:names:tc:wsbpel:2.0:sublang:xpath1.0" xmlns:bpel="http://docs.oasis-open.org/wsbpel/2.0/process/executable"
xmlns:sb="www.samplebpelprocess.com" targetNamespace="www.samplebpelprocess.com">
<bpel:sequence>
<bpel:receive name="StartEvent2" createInstance="yes"/>
<bpel:scope name="基準に適合するか判断する"/>
<bpel:if name="適合するか否か">
<bpel:condition>適合</bpel:condition>
<bpel:sequence>
<bpel:empty name="フロン類破壊業者名簿を作成する"/>
<bpel:empty name="許可通知書を作成する"/>
</bpel:sequence>
<bpel:elseif>
<bpel:condition>不適合</bpel:condition>
<bpel:empty name="却下通知書を作成する"/>
</bpel:elseif>
</bpel:if>
<bpel:empty name="文書を交付する"/>
<bpel:exit/>
</bpel:sequence>
</bpel:process>
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅳ.生成されたBPELの具体的な内容
• 生成されたBPELを確認すると、XML形式でデータが表現されている。
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(4/8)
105
BPEL生成
Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)バージョン9.2.922
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅴ.制約事項の検証 ~プールなしでBPEL生成~
• Enterprise Architect Suiteでプールを表記せずに、BPEL生成を行うと問題なくBPELが生成される。
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(5/8)
106
Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)バージョン9.2.922
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(6/8)
Ⅵ.制約事項の検証 ~プールありでBPEL生成~
• Enterprise Architect Suiteでプールを表記して、BPEL生成を行うとエラーが発生してBPELが生成されない。
BPEL生成
2.モデリングの検証 (3)検討
107
技術要素
項目
BPEL XPDL
基本情報 概要
•Business Process Execution Language
の略称。
•Webサービスを呼び出して実行する手順を
記述するための言語。
•Webサービスの呼び出し( Invoke )、要
求の受信( receive )、結果の返信(
reply )といったアクティビティを組み合
わせて定義。
•XML Process Definition Languageの略称。
•ワークフロー製品間の各データファイルを相
互交換するために策定された標準形式。
主目的
•業務プロセスフローの制御
•Webサービスの制御
•BPMNダイアグラムのXML化(XPDL2.0は、
BPMNのファイルフォーマットとして使用する
ことを意図して作成された)
標準化団体 •OASIS •WfMC
技術仕様 データ形式 •XML •XML
BPMNとの親和性
•BPEL2.0でも変換できない要素がある。 •BPMNで表記されたプロセスを全てテキスト化
し、XMLで保存。
特徴
•BPMNでいうプールの情報がないため、ロ
ールが定義されない。
•システム的なデータフローに適している。
•BPMNでいうプールの情報があるため、ロール
が定義できる。
•複数のロールがあるワークフローに適してい
る。
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅶ.BPELとXPDLの違い
• BPELとXPDLの違いを整理し、下記表に記載した。
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(7/8)
108
2.モデリングの検証 (3)検討
Ⅶ.BPELとXPDLの違い
• BPEL、XPDLについての考察
C.法律の全体分析 ⑥BPEL(8/8)
BPEL(ツール)の制約
Enterprise Architect Suite(ビジネスモデリング版)でBPMNからBPEL生成を実施すると、プール内の人的タス
クはBPELに含まれない。今回使用していない他のツールには人的タスクを処理できるものもある。
人的タスクをBPELで扱うための標準仕様としてBPEL4Peopleの検討が進められているが、BPMNをBPELと
BPEL4Peopleの組み合わせに変換するための標準仕様は未定な状況である。
そのためBPMNからBPELを生成してシステム化することまで考慮した場合、ツールの選択を含めて、人的タスク
をどのようにシステムに組み込むかが検討課題となり、現段階では標準仕様が無いことから、選択したツールに
依存することとなる。
XPDLの可能性
XPDLはBPELとは異なり、BPMNで表記されたプロセスを全てテキスト化できる。プール内の人的タスクをXMLと
して保持するため、人的タスクについてもシステム化が可能となる。
また、XPDLのエクスポート、インポート機能を有するツール間では、BPMNを相互に移行することが可能となる。
システム化まで踏まえたモデリング手法
人にとって読みやすいモデルからXMLを自動生成しシステム化することを考慮すると、XPDL生成機能があるモ
デリングツールを利用することが望ましいといえる。ただし、XPDLを実行できるエンジンを導入する必要がある。
BPELエンジンを用いる場合には、最初のプロセスモデルは業務担当者にとって理解しやすい方法で記載し、そ
れに基づいて実装用のプロセスモデルはシステム担当者が別途記載するといった役割分担が考えられる。
109
法令や手続きの理解が容易になる。
文書と比較して、作業の流れが明確化される(作業手順が明確に決まっていないことも明らかになる)。
文書と比較して、関係者と役割が理解しやすくなる。
省庁間のメッセージのやり取りが明確になる(場合によってはオーバーヘッドが見える)。
文書と比較して、判断の基準やタイミングが理解しやすくなる。
法律から手続きまでを一つのモデルに記載した場合、それぞれのタスクが何を根拠としているのかが明確になる。
これらのメリットは、特に法律の読解に慣れていない人にとって大きくなる。
理解が容易になることは、様々なメリットに繋がる。
コミュニケーションの道具として使える。
関係者(例えば他省庁)への説明、業務の引継ぎ、関連団体への説明など。
法改正による変化や影響範囲の把握が容易になる。
条文上の変化が、作業プロセスにどのような変化をもたらすのかが、把握しやすくなる。
業務改善(BPR)の検討材料となる。
タスク毎の変更容易性や存在根拠が分かる。BPR後のプロセスとの比較が容易になる。
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ①モデル化の意義(1/2)
今回の検討の結果、法律、手続きのモデル化(プロセスモデル化)には、以下の意義があるものと考えられる。
110
改善、検証の観点からモデリング結果を評価する。
モデリングの成果物を参照することで、重複処理、順次処理等の不要プロセスを見出すことが可能になる。冗長
プロセスの修正検討に活用することが考えられる。
プロセスには本来プロセス自身が正常に運営されているか否かを検証する仕組みが組み込まれていることが望
まれる。設計中の法律、手続きに対しモデリングを行い、プロセスフローを逐一確認すれば検証機能が組み込ま
れているか否かが明らかになる。検証機能の有無を確認したり、どこに検証機能を組み込むべきか検討する際
に活用することが考えられる。
※ここでの検証機能はサービス利用率、申請率、誤登録発生率等のサービスKPIを指す。
代替手段検討、BCP検討に利用する。
プロセスモデルで表現を行うと、あるタスクが停止し、その影響を受けて停止してしまう後続タスクも明らかに
なる。法律、手続き等について代替手段やBCPの内容を検討する際のシミュレーションへの活用が可能になる。
2.モデリングの検証 (3)検討
モデル化の意義について、特にヒアリングの結果からは、以下のような活用方法があげられた。
D.課題、提言等 ①モデル化の意義(2/2)
111
プロセスモデルによって、モデル化可能な部分とモデル化できない部分がある。
作業や行動が記されている部分は「アクティビティ」や「タスク」とみなすことが出来るので、BPMNで表記できる。
法令には、プロセスモデルで表現するには不向きな記述も存在する。また、法令によって、プロセスモデル化に向
く記述の割合は大きく異なっている。
プロセスモデル向きでない記述として、代表的なものには、扱うデータ(帳票や画面上の項目)や適用され
るルール(罰則規定等)、法律の制定目的、用語の定義などがある
データモデル、ルールモデルでは記述の技法は確立されているので、プロセスモデルにこだわらなけれ
ば、これらの情報をモデル化することは可能である。
例えば、省庁の設置法は、省庁の業務範囲を既定しているものであってプロセスを含まないため、プロセ
スモデル化は非常に難しい。しかしながら、ここから、極めてハイレベルな機能構成図や、組織図を作成
することは可能である。
具体的な手続に含まれる書式などは、プロセスモデル化には向かないが、データモデルの素材としては
有用である。
プロセスモデルで記述できる部分はある程度の割合を占めるので、それをモデル化するだけでも十分に意義がある。
正確な割合が把握できているわけではないが、多くの法律には作業や行動が記されており、モデル化の対象に
なり得る。
条件分岐や複雑な工程など、条文からの理解が難しい箇所は作業や行動を伴うことが多いので、これらがモデ
ル化できる意義は大きい。
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ②モデル化の限界
今回の検討の結果、モデル化(プロセスモデル化)の限界については、以下が考えられる。
112
プロセス色濃い
強い制約
弱い制約
法令
法律
政令
省令
ガイドライン
手引書
手続書
公表物
(民間向け)
内部資料
(政府等公共向け)
プロセス色薄い
抽象的
具体的
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ③モデリングの活用・拡張の可能性(1/4)
【モデリングの活用方法・具体例】
行政の手続きには法令(法律、政令、省令、等)や民
間向け公表物(ガイドライン、手引書、等)や政府等公共
向け内部資料(手続書、等)が存在する。
前者の法令は法的に強い制約を有するものであるが抽
象的でプロセス色は薄い。
一方、後者の公表物や内部資料は法的には弱い制約し
か有していないが具体的でありプロセス色が強い。
法令と公表物・内部資料を対象としたモデリングにおい
て、成果物の位置付けは、対象の違いによって以下の
ように異なるものとして考えることが望ましい。
(法令)
・必要機能のハイレベルな整理
(必須タスクの一覧)
・レベルの高いDMMの代替品(根拠を伴う)
(公表物・内部資料)
・システム化への連続性を持つ業務フロー
モデル(BPELへの展開など)
・WFAの代替品
今後、法令のモデル化(プロセスモデル化)の利活用を拡大・拡張していくことについては、以下が考えられる。
113
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ③モデリングの活用・拡張の可能性(2/4)
(法令)
・必要機能のハイレベルな整理(必須タスクの一覧)
・レベルの高いDMMの代替品(根拠を伴う)
従来の業務・システム最適化計画では、DMM(機能構成図)やDFD(機能情報関連図)に記載された機能に
ついて、その機能が無ければならない理由までは明示されていない。したがって、現場の業務プロセスの変更
によって簡単に変更・削除が可能な機能とそうではない機能の区別をつけるのが難しい。今回の作業のように
法令に基づいて作成されたモデルでは、各タスクの存在根拠が法律なのか、政令なのか、省令なのか、現場
の手続き上定まっているものなのかを明示できる。法律に基づくタスクであれば、削除するためには法改正が
必要なのに対し、現場の手続き上定まっているタスクは、業務が滞りなく実施できることを前提とすれば、変更・
削除は容易に可能である。
(公表物・内部資料)
・システム化への連続性を持つ業務フローモデル(BPELへの展開など)
・WFAの代替品
比較的詳細な資料を基に作成したモデルは、現場の業務フローに近いものとなる。完全なものとするために
はヒアリングや実担当者による補記・修正が必要と思われるが、手引書や手続書が存在すれば、ある程度業
務フローに近いものが作成できる。実業務フローのレベルまで到達できれば、BPEL等のワークフローエンジン
にてソフトウェアに落とし込むことが可能となってくる。
114
手引書手引書
BPMNBPMN BPMNBPMN BPMNBPMN BPMNBPMN
法律法律 政令政令 省令省令 手引書、
事務手続書
手引書、
事務手続書
BPMNBPMN BPMNBPMN BPMNBPMN BPMNBPMN
法律法律 政令政令 省令省令
<今回の検討> <今後の検討課題>
• 今回の検討では、法令と公開資料である手引書のモデリ
ングを実施し比較を実施。
• 関連付けてモデリングすることで、法令、政令、手引書の
記載内容把握が可能であることを検証。
• 今回の検討では、法令と公開資料である手引書のモデリ
ングを実施し比較を実施。
• 関連付けてモデリングすることで、法令、政令、手引書の
記載内容把握が可能であることを検証。
• 今後、法令と行政の内部資料である事務手続書のモデ
リングを実施し比較を行うことで、法令から事務手続書の
関連性把握の検証が可能となる。
• 関連性が表現できれば、法改正時に行政への影響度の
把握が可能になると思われる。
• 今後、法令と行政の内部資料である事務手続書のモデ
リングを実施し比較を行うことで、法令から事務手続書の
関連性把握の検証が可能となる。
• 関連性が表現できれば、法改正時に行政への影響度の
把握が可能になると思われる。
主たる検討範囲
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ③モデリングの応用・拡張の可能性(3/4)
【モデリングの適用領域とそれに伴う応用・拡張案】
今回の主たる検討は、法令のモデリングを対象とした。法令ベースのモデリング、手引書ベースのモデリングを行うことにより、法令と手
引書の関連系を表現できることが確認できた。今後は、法令・手引書・行政の事務手続書を関連付けてモデリングすることにより、法改正
に伴う行政の業務への影響把握が期待できる。
またモデリングした法令に対し、システム設計、システム開発を行う場合、モデリングツールにBPEL、XPDL生成機能を有するものを選
択すれば、モデリングからシステム開発までの作業を一気通貫で行えるようになる可能性がある。またSOAの設計を進める場合にも有効
である。
但しモデリングを実施する際、メリットだけではなく、教育・研修、移行を含めた総費用の費用対効果を算出したり、プラットフォーム依存リ
スク、モデラー役割分担(例:上流を職員がモデリング化し、詳細工程から専門職員やSIer等外部委託要員がモデリング実施)の管理等の
負担増加部分(=デメリット)についても深く評価を行う必要性が生じる。
115
法令
データ項目
ビジネスルール
(条件・処理)
スコープ
タスク
(≒サービス)
フロー(プロセス)
粒度調整の上、SOA的活用
BRM
(業務参照モデル)
標準化
用語辞書
データモデル
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ③モデリングの応用・拡張の可能性(4/4)
モデル化という観点から法令の記載内容を整理すると、下図の通り、「スコープ」「フロー(プロセス)」「データ項目」「ビジネスルール(条件・
処理)」といった区分が可能である。
ここで、「スコープ」は法令の適用範囲に関する記述、「フロー(プロセス)」は手続きや具体的な業務作業、「データ項目」は用語の定義や書
式などに記載された情報項目、「ビジネスルール(条件・処理)」は手続きや業務からは外れたところにある制約条件や規定(例えば罰則規
定)である。
このうち、フロー(プロセス)はBPMNなどによるプロセスモデル化が可能である。データ項目は、内容によってデータモデルや用語辞書等の
素材として活用することが考えられる。
プロセスモデルの記載を一定の粒度で行うことで、モデル中のタスクをSOAでいうところのサービスに近いものとして取り扱うことが出来る。
多くの法令で登場する類似したタスクは、標準化を進めることで標準タスクとして定義した上で、BRM(業務参照モデル)の比較的詳細なレイ
ヤーの素材としてはめ込んでいくことが出来る。一旦BRMに取り込まれたタスクは、更なるモデル化での再利用が可能である。
BPMNなどに
よるモデル化
対象
フローの記述
時に再利用
116
【本件をベースとした、将来的に実施することが望ましいテーマ】
法令のモデル化によるコスト削減の実証
法令のモデル化を進めることによって、法令に関するコミュニケーションコストの低減や、法改正時の作業が容易
になることが推測されるが、これが具体的にどの程度の作業量の削減に相当するのかは現時点では不明である。
本格的にモデル化を進めるためには、モデル化の効果を何らかの形で示す必要が生じると思われる。
法令のモデル化可能範囲の確認
本調査研究では、サンプル的にいくつかの法令を抜き出しての作業を実施したが、既存の法律のうち、どの程度
がモデル化可能かについては、現時点では正確にはわかっていない。全量調査を行うのは現実的でないが、統
計的手法を用いて信頼性を有するサンプル調査を行うことで、モデル化を進めることの実現性を確認することは
有意義と思われる。
BPRへの活用のトライアル
手続きが複雑であったり作業量が多い業務について、法令からのモデリングを実施し、必須タスクとそうでないタ
スクを区分してのBPRをトライアル的に実施することで、法令モデルのBPR局面での有効性を確認することは有
意義と思われる。
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ④今後の課題・テーマ(1/4)
本件の結果を踏まえて、今後更なる検証が必要と考えられる課題・テーマには、以下のようなものがある。
117
タスク・プロセスの標準化とBRMへの登録
本件でも一部を試行した標準化への取組みを念頭において、法令のモデル化を実施することで、標準タスクや標
準プロセスを一定量洗い出すことが可能だと考えられる。これをある粒度で標準化すれば、BRM(業務参照モデ
ル)における比較的詳細レベルのタスク、アクティビティとして再利用可能なものになると思われる。
他のモデルを含めた法令の全体モデル化
BPMNによる業務フローのモデルだけでは表現できない要素について、データモデルやルールモデルの考え方を
取り入れることで、法令を全体としてモデルで記述することが可能かどうかを検証する。
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ④今後の課題・テーマ(2/4)
118
【本件の後続として、近い将来に実施することが考えられるテーマ】
本件の直接的な後続作業として、本件の深堀調査、範囲拡大が考えられる。具体的には、例えば
以下のような調査研究が考えられる。
金銭授受が発生する法律・手続きのモデリング調査研究(深堀調査)
補助金、交付金等金銭の授受が発生する法律、手続きは詳細な内容まで規定されていると考えられる。本調
査の後続深堀調査として金銭授受が発生する法律・手続きのモデリングを行う。
他省庁とのやりとりが頻繁に発生する法律・手続きのモデリング調査研究(深堀調査・範囲拡大)
「複数の他省庁とのやりとりが頻発に発生する法律、手続きをモデリングした場合」と「他省庁と関与しない法
律、手続きをモデリングした場合」とではプロセス構造や表記する粒度レベルに大きな相違が発生すると考え
られる。複数の他省庁とのやりとりのある法律、手続きのモデリングと他省庁と関与しない法律・手続きのモデ
リングを行い、比較評価を行う。
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ④今後の課題・テーマ(3/4)
119
関係団体とのやりとりが発生する法律・手続きのモデリング調査研究(範囲拡大)
「経済産業省の関係団体(各種社団法人、財団法人等)とやりとりが発生する法律、手続きをモデリングした場
合」と「省庁とやりとりが発生する法律、手続きをモデリングした場合」とではプロセス構造や表記する粒度レベル
に大きな相違が発生すると考えられる。関係団体とやりとりのある法律、手続きのモデリングと他省庁とのやりと
りのある法律・手続きのモデリングを行い、比較調査を行う。
経済産業省内法律策定プロセス自身のモデリング調査研究(範囲拡大)
経済産業省内における法律策定のプロセスをモデリングする。同モデルを整備することで法律策定作業と法律そ
のもののBPMNモデリングが一気通貫で行えるか否か、の調査研究を行う。
法令と事務手続書の関連性に関する調査研究
手続書と手続書の根拠法のモデリングを行い、手続書と法令の関連性を明らかにする。手続書の業務が法令、
政令、省令を根拠に実施されている箇所、実施されていない箇所が把握できれば、BPRを実施する際の制約条
件把握や、法改正時における業務への影響範囲が把握できるようになると考えられる。
2.モデリングの検証 (3)検討
D.課題、提言等 ④今後の課題・テーマ(4/4)
120120
3.標準モデル化動向の整理
3.標準モデル化動向の整理
(1)調査概要
(2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
(3)BRMの活用状況調査のまとめ
121
各国で策定された政府EAフレームワーク同士の関連を以下に示す。
- 多くの政府EAでは、はじめに策定されたアメリカ合衆国における連邦政府EAフレームワーク(FEAF)を
参考(あるいはベース)として策定された、または従来から自政府で独自に策定されていた各種フレーム
ワークと適合させて策定されたケースが多い。
3.標準モデル化動向の整理 (1)調査概要
A.調査概要 ①調査対象とした政府EAフレームワーク及び参照モデルの関連
アメリカ
(FEAF)
オーストラリア
(AGA)
Based
ニュージーランド
(NZFEF)
デンマーク
(OIO EA)
Based
イギリス
(UKRA)
Zachman
Framework
Based
Adopt
TOGAF
Adopt
Adopt
Adopt
Adopt
シンガポール
(SGEA)
オマーン
(OeGAF)
Based
韓国
Based
Based
122
A.調査概要 ①調査方法の概要
3.標準モデル化動向の整理 (1)調査概要
各国政府の政府EA及びBRMと具体的な業務プロセスの可視化、省庁横断での共通化等への取り組み状
況を確認し、各国に共通する施策や特徴的な施策を整理し、わが国政府EAの推進に対する示唆を得る。
調査対象とした各国政府EAとその調査方法については以下のとおりである。
Ⅰ.アメリカ合衆国政府
- 連邦政府エンタープライズアーキテクチャフレームワーク(FEAF)及び業務参照モデル(BRM)の
省庁レベルにおける活用状況について、各省庁担当者にヒアリングを実施。
- 政府レベルで策定されたBRMと、各省庁個別に策定される業務領域や業務プロセス、詳細化され
た機能等との整合性をどのように実施しているか、またその場合の維持・管理のありかたについて
確認。
Ⅱ.その他各国政府
- 各国政府における政府EAへの取り組み状況について調査。
- BRMの策定状況やその概要、および対象となる政府に特徴的な取り組みについて確認。特に政
府レベルで策定されるBRMと省庁での業務プロセスや詳細化された機能との整合性の有無につ
いてどのように検討されているかを確認。
- 政府EAやBRM、ICT政策を推進・維持管理していくための組織体制とその特徴を確認。
123
Ⅰ.調査の観点
海外における業務モデルの標準化の考え方とその動向
- 標準化に当たっての方針や考え方
- 記述様式の標準化とBRMの利用の有無
- 制度・法律との連携(制度・法律のモデル化)
業務参照モデル(BRM)の利用動向
- BRM利用にあたっての実際の利用シーンとカスタマイズ性
- BRMそのものの更新や記述様式の更新
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ①ヒアリング概要
124
Ⅱ.質問項目
ⅰ.EAの実施状況について
- 最近のEAの取組みの概要
ⅱ.EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
- To-Beモデルの構築はどの程度行われているか
- それはどのような手法や手順によって実施されているか
- その際に業務参照モデル(BRM)は活用されているか
ⅲ.業務の標準化に向けた取組みの状況について
- 組織の中で類似する事務作業の手順や書式を統一するなどの、業務の標準化は行われているか
- 標準化にあったての考え方や、対象業務の基準はあるのか。
- たとえは、予算要求などでLoB(Line of Business:事業ライン)が用いられているが、LoBの中に標準
業務モデルが有る場合もあるのか
- 有る場合には、それは自発的に生まれたものか、政府全体で整備しようとしているのか
- その際にBRMは用いられているか、役に立っているか(例えば共通的なサービスなどが対象となる場
合に)
- 同様に、組織の枠を超えて(連邦政府内の省庁横断的に)業務の標準化が行われているか
- その際にBRMは使われているか、役に立っているか
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ①ヒアリング概要
125
Ⅱ.質問項目
ⅳ.業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
- 業務プロセスの効率化にむけて、EAと関連しての活動は行われているか
- その際にBRMは用いられているか
- その他の業務プロセスの改善(国民向けサービス水準の向上など)に向けて、EAと関連しての活動は
行われているか
- その際にBRMは用いられているか
- 上記業務プロセスの結果としての品質改善の効果はモニタリングしているか
- その際にBRMは用いられているか
ⅴ.EAガバナンスの実施状況について
- EAの進捗状況についての評価やそれを受けてのフィードバック(PDCAなど)はどのように行われてい
るか
- 評価の基準は何によって定めているか
- 評価や目標の設定にベストプラクティスは活用されているか
- その際にBRMは活用されているか
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ①ヒアリング概要
126
Ⅱ.質問項目
ⅵ.業務参照モデル(BRM)の活用状況について
- 政府の提供するBRMをどのようなシーンで使っているか、どの程度使っているか
- どのような人が使っているか
- Federal Segment Architecture Methodology(FSAM)が2008年に公表されているが、これは普及し
ているのか(ホームページの最新記事が2008年のまま止まっている)
- FSAMの中では、As-IsおよびTargetのBusiness Function ModelがCore Outputとしてあげられてお
り、これらはBRMと適切にマッピングするよう求められている。これは実際にはどのように行われてい
るのか
ⅶ.BRMそのものの更新や記述様式の更新について
- 法改正等によって改修が必要となった場合のBRMのメンテナンスは行われているか
- その際、誰がオーナーとなり、どのような手順で行われているか
- その場合、各省庁との情報共有はどのように行われているのか
- 具体的にBRMの改善・改良に着手している動きは政府であるか
- その場合各省庁はどのように参画しているのか
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ①ヒアリング概要
127
Ⅱ.質問項目
ⅷ.業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
- BRMは有効だと考えられているか
- BRM活用の課題や問題点はあるか
- BRMを今後どのように改善・改良していくことが望ましいか
ⅸ.業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
- 意義と実現性についてどのように考えるか
- 法律の検討過程に、モデリングのような手法を使うことはあるのか
- また、モデル化の手法としてBPMNを採用することについてどのように考えるか
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ①ヒアリング概要
128
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ②ヒアリング結果
0.ヒアリング結果サマリ
BRMの利用想定
予算策定担当者が、既存システム等と重複した技術投資を行わないで済むよう示唆を与えた
り、重複した取り組みについては整理統合を進めることを促進する役割が期待されていた。
ヒアリング結果
BRMの使用はビジネスアーキテクチャ(BA)構築における出発点(EAの議論を開始するため
のテンプレート、ステイクホルダとのコミュニケーションツール)での利用に限られている。
トップダウン的に定義された、ハイレベルなフレームワークではあるが、分析やプロセス定義
を実行可能なレベルに落とし込むために必要とされる細部に欠けている。
現状のBRMは、プロセスドリブンな組織には適合するが、ミッションドリブンな組織への適用は
難しい。
BRMに対する、EA担当者と現場の業務担当者の意識に隔たりが大きい。
トップの明確なビジョンと意志、業務部門の参加があれば、BRMは有効に活用できる。
129129
0.ヒアリング結果サマリ (質問毎)
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ②ヒアリング結果
1. EAの実施状況について
政府機関によってEA取り組みの温度差が大きい。
業務部門がEA構築にどの程度関与しているか、ガバナンスの仕組みがうまく回っているかが、取り組みの成否
を分けている。
EA実施者と業務担当者の間の意識ギャップの解消、反対勢力の取り込みが成功のキーとなる。
EAは、 Enterprise Life Cycleの視点から上位の枠組みを示すものであり、業務の改善の起点となると期待され
る。
実践では、BRMよりもPRMやTRMの活用が重視されている。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
ToBeの構築よりも、AsIsの把握に重点が置かれている。
モデルの構築方法として統一的なメソトロジーは存在していない。
省レベルでのEAは存在しておらず、局レベルや現場部門の判断によりEAが実施されている。
EA担当者は現場が分かっておらず、現場担当者は、EAを真に理解していない。
EAの推進にとってBRMは有効とは言えない。(現場で利用するには、粒度が粗く具体性に欠けている。)
130130
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ②ヒアリング結果
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
標準化の取り組みは、各部局単位で行われている。
標準化は、TRMを用いてプロセスの標準化が主流であり、BRMは用いられていない。
組織を超えた標準化は実施されていない。
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
BRMは、ステイクホルダー間の円滑なコミュニケーションをするための、共通言語やモデルとして役に立つ。
BRMは、プロセスの品質改善の観点からは、詳細化が十分でないため利用できない。
優れたプロセス改善は、業務分野の専門家の知見が十分に活かされなくてはならない。(BRMは業務分野の
専門家の知見が生かされているとは言えない。)
5. EAガバナンスの実施状況について
EAの導入と活用には、明確な目標設定とロードマップ、加えてステイクホルダー間の合意が不可欠である。
EA利用の進捗を評価するということは、科学(science)ではなく、アート(art)である。したがって、単に定量的
な数値基準等で評価できるものではない。
EAのガバナンスでは、BRMの役割はほとんどない。
131131
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ②ヒアリング結果
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
BRMを導入した事例は、極めて少ないと考えられる。
BRMは、トップダウンでEAを取り組むにあたって、最初のレファレンスとして利用されているが、業務部門の業
務改善での取り組みとしては利用されていない。
BRMは、業務部門で利用されるまで詳細化されていない。業務部門で直接レファレンスすることはない。ほと
んどの業務担当者は、その内容を知らない。
局レベルで、BRMとは別途プロセスモデルを作成したが、その後、参照されてはいない。
業務部門のリーダーは、自分の業務については理解している(と思っている)ため、BRMについて必要性を感
じていない為、理解しておらず、関心も持っていない。
モデルが現実離れしすぎており、現実的に有用とは考えられない。
一般に、EA担当者は「おもちゃを持った子供たち(ツールを振りかざして使おうとする)」と見られていることが
多く、BRMもそんなおもちゃの1つであると考えられている(本来役立つはずのBRMが重要視されていない)。
セグメント・アーキテクチャのアプローチの導入実績は、無いと考えられる。
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
法改正やプロセス変更が行われても、BRMが更新されている例はほとんど無い。
予算措置が無いため、更新はできていない。
132132
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ②ヒアリング結果
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMの理解はEA担当者に始まり、EA担当者に終わってしまっている(EA担当者しか理解していない)。
業務担当者は、当該業務に対してBRMが示すのと違った見解をもっている。また、BRMで使用されている言
語と異なる言語を使用している。
分析を始める段階では優れたフレームワークといえるが、実際に開始された後は、高位レベルを対象としすぎ
ていて有用性はなくなってしまう。
プランナーは「社会的アーキテクチャー」あるいは組織のカルチャーといわれるものを理解する必要がある。
BRMについては現在、全体を網羅できるようなツールがなく、複数のツールを使用しなければならない点が課
題となっている。
幹部レベルでビジョンがないと、BRMを使って目標とするレベルに到達することは非常に難しくなる。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
法律・手続きをモデル化する際にツールは利用されていない。
業務プロセスのモデリングではツールを活用している例も多い。
ツールに対する考え方は様々であるが、業務を可視化できるとの観点からツールが有用であることは共通認
識となっている。
ツールはモデル化の手段であるが、ツールを利用することがモデル化であるという誤解を生じてしまう(モデ
ル化がツールドリブンになってしまう)事を懸念する声も多い。
133
Ⅰ.Dept. of Homeland Security(国家安全保障省)その1
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
1. EAの実施状況について
EAを包括的に実施しているが、BRMよりもTRM(技術参照モデル)に対する注目の方が高い。
PRM(業績測定参照モデル)に対する関心も寄せらせている。
近年、EAへの支持が低下し、CBPでは担当職員は2名に削減されが、最近、新規にアーキテクトが採用され、EAが復活しつつある。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
「ToBe」モデルは開発していないが、「As-Is」モデルを把握するための取組みに力を入れてきた。
暫定的に将来の目標を見据えたモデルの開発は行ったことがあるが、そうした暫定モデルを「ToBe」モデルと呼ぶのはためらいがある。むしろ、これ
は「ShouldBe」モデルと表現することがふさわしい。
「ShouldBe」モデルは「ToBe」が目指す完全なソリューションと異なり、短期的なスパンで必要なものを示す。
ShouleBeモデルの決定にあたっては、確立された方法論(methodology)よりも臨機応変なプロセスが必要である。
具体的な取り組み課題は、各通関港で異なる手続きが実施されている、通関手続きの標準化である。
手続きの標準モデルは、各通関港ではなく本部の通関業務の専門家の意見を聞いているが、専門家はBRMをまったく使っていない。また現場の担当
者でないため、実態の把握も充分ではないことが多い。
EAにおける業務階層(business hierarchy)は上級管理職だけで利用されている。
BRMは「非常に高度なレベル」で導入されている一方、実際の業務を担当するレベルでは利用されていない。
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
業務プロセスの標準化に対する多くの取組みは、TRMを用いて実施されており、BRMレベルは用いられていない。
システム毎に実装されている機能の明示は、CDR(Critical Design Review:詳細設計審査)の要件となっており、LoBにマッピングされる。
こうした機能レベル以上の内容については、実務レベルのスタッフの関心は非常に低い。
実務レベルで関心の高い他の内容は、複数のデータモデル間における互換性である。
プロセス統合よりもシステム統合を重視する傾向も強い。
組織の枠を超えた業務標準化の取り組みについては認識していない。
回答者名: Andrew Reho
回答者の役職: 税関国境警備局(Customs and Boarder Patrol: CBP)シニアアーキテクト
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
134
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
業務プロセス改善においてBRMが使用される可能性はあるが、CBPでは使用していない。
恒常的に通常使用されているのはTRMである。
EAを担当するグループには、業務プロセス改善に必要な(金銭的・人的)リソースがない。
5. EAガバナンスの実施状況について
あるプロジェクトがEAに従っていない場合には、そのプロジェクトには予算がつかないという状況である。
EAにしたがっているか否かを判断するレビュー窓口は以前よりも厳しいものになっている。
つまり、EAは発展していると考えることができる。
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
BRMを実際に導入したという事例は把握していない。
BRMを活用する場合は、担当者はローカルなLoBをBRMにマッピングすることになっているが、その後、BRM自体を参
照することはない。
セグメントアーキテクチャを行ったという事例や情報を有してはいない。
セグメント・アーキテクチャのアプローチは正しいように見えるが、(連邦政府で)広く使われてはいない。
セグメントアーキテクチャーに対する「実態を伴わない宣伝文句」は存在しているが、広く適用されてはいない。
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
BCPでは法改正等を受けた更新等にBRMは対応していない。
最上位レベルの機能についてはBRMにマッピングしているが、新たに更新はされていない。
Ⅰ.Dept. of Homeland Security(国家安全保障省)その1
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
135
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMは有用なものとなり得るかもしれないが、現時点では実際には有用なものとなっていない。
BRMはグローバルな分類法としてOMBによって開発されたが、BRMの理解はEA担当者に始まり、EA担当者に終
わってしまっている(EA担当者しか理解していない)。
業務部門の参加があれば、BRMはさらに改良される可能性があるかもしれない
業務部門の担当者は「自らの業務がどのように機能すべきか」という考えを浸透させるために、ツールを取り入れる
べきである。その際は、おそらくPRMが(BRMと比較すると業務部門が)適用しやすいものとなる。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
CBPが立法プロセスに関与することはない。
CBPにおける一般的モデル化の手法としては、IBMの業務プロセスモデリングツールBPMNを使用しており、かなり
有用だと感じている。
コード生成に使用可能なところが便利だという。複数モデルを共有する場合に、現状では問題があるが、この問題が
解決されれば同ツールの利用価値はさらに高まるだろうとしている。
Ⅰ.Dept. of Homeland Security(国家安全保障省)その1
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
136
Ⅰ.Dept. of Homeland Security(国家安全保障省)その2
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
1. EAの実施状況について
EAの使用状況には波がある。
EAとソリューション・エンジニアリングやコードライティングの間にギャップがある。
システム開発者はEAにかかわりを持つことも、またEAを理解するといった努力も行われていない。
EAは事業が目指す改良点を特定するための「出発点」を確立するのには適している。
EAの実施状況は、EAを普及する役割を本来担うべき人々が、どの程度その活動に関与しているかによって違ってくる。
普及役が期待通りの取り組みを行えばEAと実態との関連付けが可能だが、うまくいかなければ、EAは日常的に使用する人がいないようなモデル作
成だけに終わってしまう。
本来であれば、業務部門の担当者が、EAの取り組みにより積極的に関与すべきである。
業務部門の担当者の参加を促進するためには、業務部門の担当者の視点に立ってEAの普及をしなければならない。つまり、業務部門担当にとって
EAが「自分のシステム構築に役立つのか」という観点である。
業務部門は、迅速に業務を完了させることを支援するものを探している。EA担当者は、業務担当者にとってEAが役立つものにすることと併せて、事業
全体(エンタープライズ全体)にEAの利便性が高いということを伝えなければならない。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
ToBe(あるいは上述のShouldBe)モデルの構築方法はプロジェクト範囲によって異なる。
大規模なエンタープライズの場合、独立したEA担当グループがある。しかし、このEAグループの担当者の多くは、業務部門の組織等について充分な
理解をしていない。そのため、EA担当者は個別業務についてナレッジを持つ担当者にインタビューを実施するが、理解の水準は充分でなく、修得ス
ピードも遅くなってしまう。
EA担当者が、業務に関して理解が充分でない状態でEAを組み込む担当者(incorporators)となっているのが現状である。
BRMは、業務部門へのインタビューを行う際の議論の出発点として利用されている。BRMはその点でローカルなエンタープライズにとっても、大規模
エンタープライズと同様に必要なものとして使われている。
事業(エンタープライズ)の一部として展望(ビジョンであるToBeモデル)を定義するかどうかは、業務部門のリーダー次第である。しかし、業務部門の
リーダーはBRMについて理解しておらず、また関心も持っていない。それは、業務部門のリーダーは自分の業務については理解している(と思ってお
り、BRMの必要性を認識していない)ためである。
回答者名:Greg Toth
回答者の役職: CBPシニアアーキテクト
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
137
Ⅰ.Dept. of Homeland Security(国家安全保障省)その2
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
プロセスの標準化については政府から指令が出ている。指令では、インタビューや合意形成を目指した会議(facilitated
sessions)を通じて、輸入業者、仲介業者、運送業者などのステークホルダーからの情報収集を求めている。
組織の枠を超えた業務の標準化は一部行われている。しかし、BRMは使用されていない。
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
BRMが提供している(連邦政府に)共通な分類法は、焦点を絞る助けとなる。
共通言語を用いることは非常に有用である。
BRMは問題を細分化し、分解するための一つの方法として利用できると考えるが、実際に使われていない。
5. EAガバナンスの実施状況について
EA導入状況の進捗を評価することは難しい。「導入」の定義によって、その難しさの度合いも違ってくる。言い換えれば、EA
を作りだす(produce)だけなのか、それともEAを適用する(apply)かによって、難易度が変わる。
EAの導入においては、ソフトウェアのリリース・ロードマップのような、「ロードマップ」が必要である。
EAはプログラムのスケジュール(タイムライン)をサポートする必要がある。
EAは、ステークホルダーの賛同を得なければならない。賛同が得られないと、EAは「シェルフウェア」(使用されずに棚に保
管されたままになっているソフトウェアのような存在)となってしまう。
EAガバナンスでは、BRMはほとんど役割はない。
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
セグメントアーキテクチャーは使用していない。似たような方法は(非公式には)使っているが、正式なプロセスとしては類似
の方法も使われていない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
138
Ⅰ.Dept. of Homeland Security(国家安全保障省)その2
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
BRMの変更等の状況を管理していない。
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
給与または人事などの共通機能のような特定の物事に対してBRMは有用である。しかし、ミッション指向の機能に関する定
義付けでは利便性が低い。
BRMは使用する専門用語の標準化の手段としては便利な側面を持つ。
BRMの実用性に対する課題として、業務の担当者は自らが実施している業務について、BRMが示すのと違った見方をして
おり、またBRMで使用されている言語と異なる言語を使用しているというのが実情である。
このため、BRMを使用するには、BRMで使用されている言語と業務担当者が使用している言語間での翻訳作業が必要と
なってしまう。
ToBeモデルはあまりにも現実離れしすぎてしまっており、現実的に有用ではないという傾向がある。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
CBPでは立法プロセスには関与していないので、そのプロセスにおける状況については把握していない。
ツールの利用に関する考えは様々である。共通の標準表記法は確かに役に立つものだが、ツールの中には短期間のプロセ
スに対しては、フィードバックループに問題があるケースがある。(そうした問題があると、)こうしたツールは使用に適さないモ
デルを生成してしまう。
ツールにより生成されたモデルを唯一確認する立場にいるアナリストによって、ツールが乱用されたり、ツールがプロセスモ
デリングの実行であるかのように扱われることもあり得る。
ツールこそがすべての解決策だと信じ、ツールを過信する人もでてきてしまう(ことが問題である)。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
139
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅱ.Dept. of Treasury(財務省)
回答者名: Mike Dunham
回答者役職: エンタープライズアーキテクチャー(EA)担当ディレクター
1. EAの実施状況について
財務省では省レベル(department)と支局レベル(bureau)の、2段階のEA実施レベルがある。
省レベルの実施は「豚に口紅」(実質的価値が少ない状態を示す慣用的な意味として言及)のようなものである。
省レベルの取り組みは「大きな考え方」を示すものであり、日々の運用業務に関する諸問題については省レベルではなく、支局アーキテクチャの中で
対処されるべきものだと考えられている。
省レベルで、EAはいつでも使えるようにしておく必要があると頭ではそう思っているが、実際にはそういう状態にはなっていない。EA導入プロセスを管
理するガバナンスのメカニズムが存在しないことがその理由である。
局レベルでは、局によりばらつきがあるものの、省レベルとは状況が異なる。
プロセスの再設計を行うための機会は多々あるが、再設計された新たなプロセスに乗り換えようという取り組みに対しては、政府内に反対するグルー
プが存在するため、機会をうまく利用してプロセス改革ができない状況がある。
実際の問題の所在は人に関わる内容であっても、EA関係者はツールに大きく頼りすぎる(何でもツールで解決しようとする)傾向がある。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
省レベルでBAを展開させるための取組みは行われていない。局レベルでの展開に委ねられている(また省レベルでは具体的な局レベルでの取り組
みは把握していない)。
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
財務省内で標準化プロセスに対する取組みは行われていない。
標準化の努力に対する「アメとムチ」がないからだ。標準化をしなければというインセンティブがない。
直接的な指揮系統もなく、財務省内の多くの支局は異なる財源から、関連の取り組みに向けた予算を得ている。
したがって財務省として各支局を管理する体制はない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
140
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅱ.Dept. of Treasury(財務省)
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
BRMを適用することによって、業務担当者は、強制的に総合的な視点でニーズについてよく考えるようになるため、本来であ
ればすでにさまざまな投資がなされているべきである。
現状では投資がされていない項目(hidden investments)を特定するための助けとなる。
BRMは業務に対する道筋を確認するための最良な方法ではあるが、しかし消極的な側面として、業務プロセスの分析をかな
り低いレベルまで押し下げることに利用される可能性もありうる。
EAプログラムの効率性を評価するためにOMB(Office of Management and Budget: 行政予算管理局)が複数の基準を設
けてはいるが、そうした中に、BRMが何らかの役割を果たしているという事例は認識していない。
5. EAガバナンスの実施状況について
EAプログラムの実施が進んでいるかどうかを判断するには、ITへの投資を決定する際に、EAがどの程度活用されているか
を見れば評価できる。
EAは、組織の管理プロセスにおいて不可欠な役割を担うものである。
EA利用の進捗を評価するということは、科学(science)ではなく、アート(art)である。したがって、単に定量的な数値基準等
で評価できるものではない。
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
BRMは出発点であるが、ローカル(局レベル)のニーズを満たすために手早く修正された。しかしその後、変更されたBRMを
参照したケースはほとんどない。
財務省レベルではBRM自体は実施されていない。FSAMが使用されている事例については把握していない。
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
定期的な更新に対する予算が得られていないため、更新は行われていない。BRMは「予算のつかない任務」と考えられてい
る。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
141
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅱ.Dept. of Treasury(財務省)
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMは非常に有用なものである。
BRMはEAツールのすべてにおいておそらく最も価値があるものだと思われるが、しかし、EA自体がもはや中心的でなくなっ
ていることから、BRMの重要性も下がっている。
様々なステークホルダーが集まって議論を必要とするような状況では、(BRMが政府内で共通の分類、フレームワークを提示
するものであるため)BRMはその有用性を証明することになるだろう。
一般にEA担当者は「おもちゃを持った子供たち(やたらおもちゃであるツールを振りかざして使おうとする)」と見られているこ
とが多く、BRMもそんなおもちゃの1つであると考えられている(本来役立つはずのBRMが重要視されない状況を説明してい
る)。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
財務省は行政府の監督官庁であり、立法プロセスには関与していない。
(財務省ではないが、一般に)法律検討過程においてモデリング・ツールは使わない。
BPMNの環境は非常に「ツール中心」的である。BPMNは視覚化により理解を助けることはできるが、このツールはプロセス
を強く推進するために利用されるべきではない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
142
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅲ.Internal Revenue Service(IRS:内国歳入庁)
回答者:Tom Lucas
回答者の役職:シニアテクニカルアドバイザー
1. EAの実施状況について
IRSは財務省の局の1つである。IRSは、主要プロジェクトのそれぞれがEAに遵守していることを証明することが法律によって義務付けられている唯一
の政府機関であり、IRSでは広範に亘ってEAが実施されている。
EAの責任者(ディレクター)は、各プロジェクトが開発フェーズに入る前に、当該PJがEAに準拠していることを証明しなければならない。
IRSのEAは当初、システム開発ライフ・サイクル(System Development Life Cycle)であるEnterprise Life Cycle(ELC : エンタープライズライフサイク
ル[1])と同時に開発が開始された。そのため、両者は密接に連携しており、EAは当プロセスの不可欠な部分を担っている。[1]
http://www.irs.gov/irm/part2/irm_02-016-001.html
新規プロジェクト実施では、まずEAオフィスが許可を出す。ELC全体で設定されている多くの承認段階においても、EAオフィスがその承認を与えること
になる。
EAには、多くの業務プロセスの詳細事項を網羅している「プロセス・スレッド」が盛り込まれている。これらのスレッドではまずハイレベルな把握がなさ
れ、その上でプロジェクトとして許可を受け、プロジェクトが個別の分野において始められると同時に、スレッドの建て増しが行われる形態が採られてい
る。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
当初EAの開発を行った時点ではBRMは存在していなかった。BRMが正式に公開された後で、既存のIRSで使っているEAは、BRMの考え方におい
て必要とする内容を満たしているだけでなく、それを凌ぐものであるということを示した。
BRMのLoBでは、税制管理(taxation management)のみが特定されており、IRSにとって有益と考えられるような定義は、それ以外には提供されてい
なかった。
IRSのEAはプロセス(process)、組織(organization)、場所(locations)、データ(data)、アプリケーション(applications)及び技術(technology)につ
いて、体系化されている。これら6つの重点分野のうちの3分野は、業務アーキテクチャ向けである。
IRSは「Modernization Vision and Strategy(MV&S:近代化ビジョンおよび戦略)」プロセスを通して、ToBeモデルを発展・維持している。担当分野に
ついて業務の展望(ビジョン)を開発する責任を負っている業務部門のリーダと協力して、IRSは初期のToBeモデルを、合意形成を目指す会議
(facilitated session)を通じて開発した。
初期モデルの開発以降、IRSは転換戦略(transition strategy)に重点を移してきた。これは、計画された技術投資方法が発達するにつれて、事業が
短期的にどのように変化していくかに焦点を当てたものである。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
143
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅲ.Internal Revenue Service(IRS:内国歳入庁)
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
IRSでは業務の標準化よりも、迅速で比較的費用がかからないプロセスの改良に、むしろ力を入れている。
IRSは、事業内の定義済み領域において、パフォーマンス評価基準に関する詳細な理解を深め、その上で、大幅なパフォー
マンス向上を実現できる分野に、特に重点的に取り組むことができるようなポリシーも整備されている。
IRSの取り組みの妥当性を示すためにも、業務改善イニシアチブではこうしたパフォーマンス評価基準を活用している。
IRSは、組織の枠を超えて(連邦政府内の省庁横断的に)業務の標準化は行っていない
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
(業務プロセスの改善の取り組みは、上述の標準化で述べた通り。)業務プロセスの品質改善に向けた取り組みという観点か
らすると、BRMは詳細化が充分ではないため、BRM単独では(IRSとしては)利用できない。ただし、パフォーマンス参照モデ
ル(Performance Reference Model:PRM)と組み合わせれば、有用なものとなり得るかもしれないと考える。
5. EAガバナンスの実施状況について
IRSはEA導入においては成熟したレベルにあり、OMB評価におけるEA導入の「前進」の評価においても常に高い点数を維
持しているため、(OMB評価以外では)進捗状況についてIRSとしての内部での検討はほとんど行っていない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
144
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅲ.Internal Revenue Service(IRS:内国歳入庁)
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
IRSはセグメントアーキテクチャはあまり使用していない。セグメントアーキテクチャの問題点は、事業全体のうちの1つの構成要素だけに重点を置く
ことが要求される点である。
IRSでは、1つのセグメントだけに焦点を充て、他のすべてのセグメントを待たせるということは、政治的に考えて実施できないことである。
(セグメントアーキテクチャのかわりに)IRSでは、「ドメインアーキテクチャ(Domain Architecture)」を開発している。
ドメイン(領域)には、Collections(徴収)、Submission Processing(提出プロセス)、およびExam(Audit、監査)などが含まれる。これらのドメインは、
すべての業務ユニット(business units)に横断的に及ぶものである。
業務ユニットのリーダー達は協力して、各ドメイン向けに業務ケーパビリティを定義することが期待されている。一方、BRMはかなり高位レベルの内
容であるため、こうした業務ユニットのリーダーの業務にはほとんど影響を与えないものである。
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
IRSは更新等の変更にはあまり対応していない。
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMは分析を始める段階では優れたフレームワークといえるが、実際に開始された後は、BRMは高位レベルを対象としすぎていて有用性は、ほと
んどなくなってしまう。
BRMは連邦政府機関に共通の分類法を提供することを想定したものだが、IRSのように税金処理をする政府機関は他にはなく、したがってBRMは
IRSにとっては、限られた重要性しかないものである。
業務部門の担当者は業務改善を目指しているのであり、アーキテクチャーについてはほとんど関心を持っていない。
業務部門の担当者がEA担当者に望んでいることは、(アーキテクチャではなく)どうしたら成果を向上させることができるかを理解して欲しいというこ
とである。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
IRSは立法プロセスに関与していない。
IRSはモデリングツールに注目はしているが、パフォーマンス評価基準に対する理解をこれまでより深める助けとして、これらのツールをどのように
使うことができるかについて検討段階であり、まだ決断できる段階ではない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
145
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅳ.General Accountability Office (GAO:政府アカウンタビリティオフィス)
回答者:Nancy Wolf
回答者の役職:EA,ポートフォリオマネジメント及びIT戦略センターディレクター
1. EAの実施状況について
EAについては広範囲に実施している。
GAOではEAの実装は義務付けられてはいないが、GAOとしてEAを実施することを決定した。
GAOは非常にプロセスを重視する組織であり、IT投資を管理するようなプロセスを持っておくことが重要だと感じている。
GAOではプログラムのすべての段階において、EAをかなり利用している。GAOではEAプログラムはかなりうまくいっている。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
GAOでは全体を網羅したToBeモデルは構築していない。その代わり、進行中の具体的なプログラムを支援する形で、業務モデルの特定の部分に関
するToBeモデルを構築している。
GAOでは独自バージョンのBRMを開発している。これは、GAOが行政府(executive branch)から独立した機関であるため、OMBが指定したBRMを
使用しなければならない立場にないためである。
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
業務の標準化としてしまうと、プロセスの標準化に達することはできない。こうした考えの下、GAOでは業務プロセスの改良に向けた取り組みに力を入
れている。
GAOはプロセス指向型の組織であるので、すでに多くの標準が配備された状態になっている。
省庁間の取組みは行っていない。
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
作業の優先度付けを行う際にBRMがその助けとなったり、またその優先順位について業務部門からも合意を得る場合には、BRMが有用となることが
ある。
事業全体を一度にまとめて最新化することはできないので、優先的に取り組むべき作業についての合意形成を行うメカニズムの1つとしてBRMは活用
され得るものと考えている。
BRMはステークホルダー間のコミュニケーションをより良好なものとするために利用できる。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
146
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
Ⅳ.General Accountability Office (GAO:政府アカウンタビリティオフィス)
5.EAガバナンスの実施状況について
GAOでは、最初からパフォーマンス目標が設定されている。
設定される目標の例としては、情報フロー増大やコスト削減などが含まれる。
EAの担当者は、採用可能な目標を提案する場合に、こうした(情報フロー量やコストなどを使った)指標を使用している。
こうした取り組みにおいてBRMの役割はほとんどない。
6.業務参照モデル(BRM)の活用状況について
セグメント・アーキテクチャが使用されている事例があるという情報は得ているが、自らセグメント・アーキテクチャを使った経験はない。
7.BRMそのものの更新や記述様式の更新について
GAOは独自のBRMを開発しているため、連邦政府におけるBRMの更新の取り組みがあるとしても、これに対応はしていない。
GAOでは各プロジェクトに配属された業務アーキテクト(business architects)が、変更が必要な場合には対応する役割を担っている。
8.業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMは開始点としては確かに有用なものであるが、各政府機関は自らの組織にあったBRMについてのビジョンを持つべきである。他の機関で使われ
ているものをそのまま使えるわけではない。
GAOでは、新しいバージョンのBRMが準備中である。現在準備中の新バージョンは今までよりもさらに有用なものになると信じている。
9.業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
現時点では、立法プロセスにおいては、BRMおよびモデリングツールは使用されていないものの、それらが使われるべきだ。
(GAOは独立機関であるが、分類上はExecutive Branch(行政部門)ではなく、Legislative Branch(立法部門)に分類されている。)
ツールが有用なものであり、適用すべきであると、関係者の説得に当たっているところである。
現時点でGAOではツールとして、MetisとSystem Architectを使用しており、大変有用なものであることが分かっていると述べている。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
147
Ⅳ.US Postal Service(USPS: 米国郵便公社)
回答者名: Srinath Godavarthi
回答者の役職: テクニカルディレクター
1. EAの実施状況について
EAの実施では、インフラおよびアプリケーション全般にわたって調査を行う3-4のチームが設立されている。
これらのチームは、既存の業務プロセスの無駄をなくして合理化する役割を担っている。
なお、USPS全体におけるEAへの対応状況は50/50(フィフティ・フィフティ)である。すなわち、EA利用の利点を理解して(適用して)いる人がいる一方
で、EAは利用することのない文書の1つであると考えている人がいるという状況である。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
USPSではステークホルダーを特定し、業務部門を中心としたイニシアチブを推進し、効率化すべきプロセスを明確にする取り組みを行っている。
この取り組みの中でUSPSは、ステークホルダーとエンドユーザーに、効率化の対象となる業務プロセスの要点について説明を求めてきた。
その結果を踏まえ、重点を置くべき分野を特定し、理解するための試みがすでに行われている。
検討すべきプロセス分野を特定する作業を支援するものとして、BRMや連邦教育省(Department of Education)で利用されているプロセス資産
(process assets)が使われている。
こうした取り組みを通じて、USPSではハイレベルなビジネスモデルを開発すべきと考える8~9分野を特定している。
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
各業務部門内において、プロセスの標準化のため、かなりの努力がなされている。
大口郵便利用者の差出プロセスについては綿密にレビューが行われている。しかし、異なる業務部門間で連携したプロセスの標準化に関する取り組
みはほとんどない。
業務部門間では、ミッションの共通性がほとんどなく、標準化する対象が極めて限られているためである。
(優先的に)効率化されるべきプロセスを選ぶための選択基準は、現時点で手動で実施されているプロセスを(できる限り)削減するという点に重点を
置いて設定されている。
組織の枠を超えた標準化は行われていない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
148
Ⅳ.US Postal Service(USPS: 米国郵便公社)
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
BRMはEAの基盤となるべきである。
BRMを利用することにより、業務部門の担当者も業務プロセス効率化に向けた議論に参加できるようになる。
優れた技術ソリューションというものは、業務部門から得られる情報等をインプットしてはじめて、発展できるものである。
5. EAガバナンスの実施状況について
EAプログラムを評価するための基準として、OMB発表の評価指標がある。顧客満足度も、重要な評価指標である。
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
多くの担当者はBRMに関心を持っていない。また、さらに多くはBRMモデルの内容について知識も持っていない。
各担当者は自身が担当して使用しているシステムについては分かっているが、BRMを使用して組織全体でシステムを活用できるようにする方法につい
ては理解していない。
FSAMについては、これまであまり表立って使われてきたという実績もなく、それほど有用なものと考えていない。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
149
Ⅳ.US Postal Service(USPS: 米国郵便公社)
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
更新・変更をBRMに反映していない。BRMへの変更作業は「影の薄い(being in the background)」作業である。
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMは有用である。業務の効率化向上を助け、プランナーが業務ニーズを踏まえた上で、技術を整備することを可能にしている。
すべての技術(の導入・整備)は業務ニーズに基づいて推進されなければならない。BRMはその基盤となる役割を担っている。
BRMを利用する上での課題として、エンドユーザとその言動を理解することが重要である。
プランナーは「社会的アーキテクチャー」あるいは組織のカルチャーといわれるものを理解する必要がある。
組織の幹部レベル(いわゆるCEO、CIOなど)の間で、組織のビジョンが明確に理解されている場合には、BRMの有効性が高まる可能性がある。
幹部レベルでビジョンがないと、BRMを使って目標とするレベルに到達することは非常に難しくなる。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
手続きのモデル化において業務モデリング・ツールは使用していない。
現在、ダイアグラムの作成にあたってはVisioを使用しており、UMLユースケースを開発している。実際にツールを使ってみれば、ツールの活用は有用
であるかもしれないが、現時点では使用していないと述べている。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
150
Ⅴ.Environmental Protection Agency及びVeterans Administration(EPA:環境保護庁及び
VA:退役軍人省)
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
回答者名: Tushar Hazra
回答者の役職: EAコンサルタント
1. EAの実施状況について
EPAもVAも広範にEAプログラムに対応している。
EPAでは、EAの一部として、サービス指向アーキテクチャ(Service Oriented Architecture: SOA)に関するロードマップを開発するための総合的なプ
ログラムも展開している。
2. EAのなかでも、ビジネスアーキテクチャ(BA)の取り組みの状況について
政府はEA関連プログラム実施の大部分をコントラクターに依存しているため、コントラクターが利用している手法を利用する傾向がある。
EPAのプログラムに関わった際には、Computer Science Corporation社に所属しており、Catalystというツールを使用した。
VAのプログラムに関与した際には、所属企業には独自の手法がなかったため、Catalystを基盤とした手法を自ら開発した。
既存システムに組み込まれた必要条件を発見することによってToBeモデルを開発し、さらに追加的な要件を作り上げるためにステークホルダーへの
インタビューを実施した。
その上で、サービス品質保証契約(SLA: Service Level Agreements)を明確にして、SLAも必要条件に取り入れている。
AsIsとToBeモデル間のギャップを特定するとともに、リスク要因についても明確にしている。
開発の取り組みを管理するためシステム開発ライフサイクル(System Development Life Cycle)を作成している。
BRMについては、取り組みの開始点として利用しているが、ローカルな環境に合わせるため、詳細な記述が追加されている。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
151
Ⅴ.Environmental Protection Agency及びVeterans Administration(EPA:環境保護庁及び
VA:退役軍人省)
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
3. 業務の標準化に向けた取組みの状況について
全般に亘って、標準化のための取り組みは変化に富んでいる。政府機関(EPAやVA)の幹部クラスが、標準化に取り組むべき部分を決定することに
なっている。
組織の枠を超えて、ベストプラクティスを特定するための取り組みはいくつか行われている。こうした取り組みはEA担当チームから始まって、その後、
スポンサーに引き渡される。
BRMは開始点として利用されるが、こうした取り組みがBRMに留まるものではない。
最初にBRMについて深く検討された上で、次にローカルな環境に適した要素が選択される。
選択した要素について、業務の標準化を行うにあたり、複数の政府機関が互いに影響しあうことができる環境を確保するため、互いに連携した取り組
みが行われることになる。
4. 業務プロセスの品質改善への取組みの状況について
EPA、VAではこれらの分野でBRMは使用されていない。業務プロセス改善に特化した手法が用いられている。
5. EAガバナンスの実施状況について
把握していない。
6. 業務参照モデル(BRM)の活用状況について
セグメントアーキテクチャは弾みをつけてきており、ステークホルダーを議論に参加させて、マッピングを実施しているところもあるが、これ以上の取り
組み状況についてはわからない。
7. BRMそのものの更新や記述様式の更新について
ガバナンス・プロセスを通じて、更新等がBRMに反映されるようにしている。
変更をBRMに反映し、ステークホルダーが最新の知識を得ているようにするのは、シニアアーキテクトの役割である。
EPA、VA等ではステークホルダーは四半期毎に会議を開いている。また、他の政府機関との非公式な連携も行われている。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
152
Ⅴ.Environmental Protection Agency及びVeterans Administration(EPA:環境保護庁及び
VA:退役軍人省)
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
8. 業務参照モデルへの不満点、改善要望などについて
BRMは「間違いなく有用」である。
BRMは現場の目的に応じて柔軟性を持つことが可能である。
BRMについては現在、全体を網羅できるようなツールがなく、複数のツールを使用しなければならない点が課題となっている。
トレーニングを通じて、BRM利用はさらに改善することもできる。
9. 業務のモデル化の一環として、法律・手続をモデル化の対象とすることについて
EPA、VAは一般的に立法プロセスには関与していない。
EPA、VAではSystem Architectツールを利用し、Sparxツールセットに移行した。これは大変有用なツールと考えている。
B.米国ヒアリング調査 ③ヒアリング結果個票
153
予算においてEAの実施状況が評価される米国でさえも、コンセプトのみ先行し、 EA/
BRMは現場にまで浸透していない。
EA実施者と現場が乖離し、現場での取り組みは遅れており、現場でのEAの実装はなされ
ていない印象。
EA実施者と実務担当者の意識のズレが大きい。
– あまりにも、トップダウンであるため、現場からみると理想論を振り回していると見られてい
る(ように見える)。
– 現場の成果目標とEAの実施が、現場に理解可能な形でひも付いていない。
BRMと現場のプロセスに乖離が大きい。
– モデルが粗すぎ、実装レベルにまで詳細化されず実装できない。
– コンセプトレベルで留まっており、現場の業務担当者がBRM構築に参加していない。
省庁横断的な取組は行われていない。
– 現場担当者は、BRMの見方とは違い、自分たちは特殊だと思っている。
– コンセプトとしては正しいが、各論での異論・組織の壁の厚さは万国共通。
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ④ヒアリング調査から得られる米国の現状
EAの実施に関して、トップの明確なる意志とビジョンがない。
154
EAやBRMを浸透させていくためには、現場の納得感を醸成すること。
EA実施者と実務担当者の意識ギャップを埋めていく
EAの実施が、現場の作業負担軽減や成果目標に資することを、「明確に」提示
現場に役に立つ、成果物や標準化を規定する。(業務タスクの共通言語化、プロセスやタスクの関連法
案や規程類とのひも付け、実施マニュアルとの関連性がわかるチャートの作成など)
利用目的に応じた階層的かつ一貫したモデルの構築
業務担当者がモデル構築に参加し、業務担当者が受入れ可能なモデルを構築
コンセプトからプロセス・タスクまで一貫したモデルの構築。(ボトムアップからのプロセス構築と、トップ
ダウンでの業務コンセプト構築の両面からアプローチし、両者を融合させるようなメソトロジーの開発な
ど)
正しいコンセプトに基づいた事実の明確な提示
各業務レベルで、業務担当者が法律や規程を端緒にモデル化を実施し、プロセスを比較
法律に基づいた正しいコンセプトから得られたモデルの共通項を抜き出すことで、何が特殊で、何が一
般性を持っているかが明確になる。
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
B.米国ヒアリング調査 ⑤ヒアリング調査から得られるわが国への示唆
(前提条件) EAの実施に際し、トップの明確なる意志とビジョンを示す。
155
Ⅰ.オーストラリア
i. 電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
オーストラリアでは、政府共通の仕様・モデルの策定、省庁間でのコラボレーションを実現し、国民に質の高
い公的サービス(主にICT分野)をより早く提供していくことを目的として、2007年に策定。
- 「省庁横断サービスアーキテクチャ・プリンシプル」と「政府アーキテクチャ(AGA)参照モデル」から構
成
アメリカ
(FEAF)
オーストラリア
(AGA)
ベースとして
策定
ニュージーランド
(NZFEF)
ベースとして
策定
【AGAの位置づけ】
• 政府共通の仕様、モデルを策定するために、省庁間の情報共有
のためのダイアログとなるもの
• 最終的なゴールは、政府全てのアクティビティを定義-現在は省
庁間のコラボレーションや共通サービスを創出するためのしくみ
• ICT予算やプロセスの共通化するために、省庁間で共通認識をも
つもの
【AGAの位置づけ】
• 政府共通の仕様、モデルを策定するために、省庁間の情報共有
のためのダイアログとなるもの
• 最終的なゴールは、政府全てのアクティビティを定義-現在は省
庁間のコラボレーションや共通サービスを創出するためのしくみ
• ICT予算やプロセスの共通化するために、省庁間で共通認識をも
つもの
【AGAの特徴】
• アメリカ政府のEA及びフレームワーク、参照モデルが参考となっ
ており、内容もかなりの部分が踏襲・引用されている
【AGAの特徴】
• アメリカ政府のEA及びフレームワーク、参照モデルが参考となっ
ており、内容もかなりの部分が踏襲・引用されている
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
156
Ⅰ.オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
「省庁横断サービスアーキテクチャ・プリンシプル」と「政府アーキテクチャ(AGA)参照モデル」
- 省庁横断アーキテクチャ
- AGA参照モデル(2007年7月策定、現在は2009年12月に2.0、2011年8月にはバージョン3.0(ドラ
フト版)が策定)
- AGA およびその参照モデルは、アメリカ合衆国政府(FEAF)をベースに策定
AGA RMの特徴
- バージョンごとに対象となる参照モデルを明示しながら詳細化、拡張を実施
- 当初はFEAFで策定された各参照モデルのサンプルが色濃かったが、その後徐々にローカライズ
が進められている段階
- AGAフレームワークや参照モデルは、各省庁で策定された枠組みの利用・併用を認めてはいるも
のの、最終的には本フレームワークに従うことを勧奨
参照モデルの目的
- 参照モデルは市民向けサービスを実現するためのICTの調達を支援するため
• 省庁連携したサービスを調達する場合の各省庁間における共通言語としての活用
• 重複や再利用可能、シェアード化可能なサービスの洗い出しを支援
• ICTへの投資の客観的な評価
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
157
オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
AGA参照モデルの体系
- バージョンごとに対象となる参照モデルを明示しながら詳細化、拡張を実施
- 当初はFEAFで策定された各参照モデルのサンプルが色濃かったが、その後徐々にローカライズ
が進められている段階
出典:Australian Government Architecture Reference Models Version 2.0
PRM:参照モデルv1.0で策定されているが、参照モデルv3.0
で拡張(FEAFを参考に策定)
BRM:参照モデルv1.0で策定されているが、 4つのビジネス
領域(Business Area)およびその詳細化がなされるなどv2.0で
大幅に拡張された。
SRM:参照モデルv1.0で策定
DRM:参照モデルv1.0で策定
TRM:参照モデルv1.0で策定
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
158
BRM v2.0
v2.0で政府領域
と定義
V2.0で省庁領域
と定義
BRM v1.0
オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
BRMの特徴・構成
- バージョン1.0では、FEAF-BRMに準じてBRMの構成と、単に政府領域と省庁領域とに分けそれ
ぞれ相互運用性を確保しながら拡張していくことが記載されているのみだった
- バージョン2.0では、FEAF-BRMの他、オーストラリア政府で整備されたシソーラス(AGIF:the
Australian Governments’ Interactive Functions Thesaurus)などをベースに策定、最上位に4つ
のBusiness Area、LoB(Line of Business)、Business Capabilities(v3.0ではBusiness Sub
Function)を定義、さらにSRMやPRMとの関連についても記載
政府領域を2階層から3階層に
詳細化、Business Areaを4つ
に定義
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
159
オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
BRM各層の構成
3つのファンクションエリア
Service for Citizens (No.10)
Support Functions (No.30)
Management of Government Resources (No.40)
Service Paths (No.20)
6つのLoB
43のサブファ
ンクション
4つのLoB
31のサブファ
ンクション
5つのLoB
27のサブファンクション
25のLoB
197のサブファンクション
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
160
オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
AGIFの構成
3階層のシソーラス(第1
階層はBRMのビジネス
エリアの25LoBに対応)
•AGIFは3階層だが、BRMは2
階層
•またサブファンクションレベル
の記載はほぼ一致するが、
完全一致ではない
•BRMとシソーラスとの適合は
まだ整備途上
BRMでのWaste Management
の記載内容
C.文献調査 ①オーストラリア
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
161
オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
活用例:政策「Financial Assistance」についてのサブファンクションレベルでの関連付け例
- 「市民へのFinancial Assistance」を考えた場合に、関連付く機能を整理
•政策やサービスおよ
び提供すべき相手
等について記載され
ていると思われる参
照先が、BRMや
AGIF等からは確認
できない
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
162
オーストラリア
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
AGA参照モデルと省庁コンテクスト
との関連付け
- 参照モデルでは、サブファンク
ション層で、各省庁が策定す
るビジネスプロセスとの関連
が関連付く
- 参照モデルでは、Business
AreaとLoBと各省庁の目的や
ビジネス要件等との整合性に
ついての記載はない
省庁レベルにおけるビジネスプロセ
スの可視化について
- Business Process
Interoperability Framework
(BPIF)を2007年に策定
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
163
オーストラリア
ⅲ.政府EAを統制・調整していくための組織
電子政府推進のためのガバナンスモデル
- 予算・規制緩和省が政府EA・ICT政策決定の主導的な役割を担当
「Responsive Government A New Service Agenda」,オーストラリア政府 財務・行政省, Mar. 2006
http://www.finance.gov.au/publications/2006-e-government-strategy/docs/e-gov_strategy.pdf
各省庁CIOからなる協議体
2011年度現在予算・
行政相が兼任
オーストラリア政府情報管理
局(AGIMO)が政府EA及び
省庁EAへの取り組みに中心
的な役割を果たす
財務・
規制緩和省
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
164
オーストラリア
ⅲ.政府EAを統制・調整していくための組織
AGIMO:Australian Government Information Management Office
- アメリカ合衆国政府のOMBに相当する組織(ただしAGIMO自体は、財務・規制緩和省(Department of
Finance and Deregulation)の一組織として設置
- AGIMOを統括する政府CIOは財務省の次官級の位置づけ
- AGIMOの主な役割は、政府プログラムに関するアドバイスや検証、政府予算の策定責任
- ガバナンスと予算管理に関するフレームワークの提供
- 計画や調達プロセスの効率化のための技術的な支援やアドバイスを実施
- 情報とサービス管理に必要なアプリケーション情報、情報共有を先導
http://www.finance.gov.au/agimo/index.html
財務・規制
緩和省
財務・規制
緩和省
•他省庁の支援
•省庁間情報共有の支援
•ICT政策協議会等(SIGB、
BPTC、CIOC)の事務局
•他省庁の支援
•省庁間情報共有の支援
•ICT政策協議会等(SIGB、
BPTC、CIOC)の事務局
AGIMO
Policy and Planning Div.
予算計画、分析・評価
Agency Services Div.:
各省庁の支援、コーディネート
政府CIO
(次官級)
Business Improvement Div.
2012年度新たに
設置予定
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ①オーストラリア
165
オーストラリア
ⅳ.まとめ、示唆
政府EAフレームワークや参照モデルの内容は、アメリカ政府のFEAFを踏襲している。
- 政府レベルのフレームワークや参照モデルと、省庁レベルでの検討事項とを定義付け
BRMは、2007年以降拡張され、具体化、詳細化がなされている。
- BRMは3段階で構成されており、政府全体(政府・省庁)の業務をカバーするように策定
- BRMと各省庁が策定するビジネスプロセスとがどのように関連付けられるかは記載されているが、
具体的にどのように関連付けられるか、また各省庁でどの程度整備されているかは不明
EAや参照モデルを維持する組織は、財務・規制緩和省の一組織であるAGIMOが中心となり運営・管理さ
れている。
- 政府全体のICT政策に関わる意思決定や省庁横断の政策課題に対する運営・意思決定は、それぞ
れのレベルにおいて主に財務・規制緩和省が中心となり、各省庁と調整・決定
- AGIMOはEA全体の維持・管理のほか、省庁の各CIO協議会はじめさまざまなICT関連施策・プロ
ジェクト調整組織の事務局を運営することで一定の影響力を持つ
C.文献調査 ①オーストラリア
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
166
ニュージーランド
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
NZ FEAはe-Gov戦略の一環として開始、 2006年に策定されたフレームワークであるNZFEAFではとくに
「電子政府における相互運用性フレームワーク(e-GIF)」と同義のものと強く謳っている。
NZFEAFとその参照モデルは、オーストラリア、アメリカ政府のEAフレームワークや参照モデルに強く影響
を受けて2009年に策定されたもの。
現在は、個々が独立した5つの参照モデルを整備(現在はバージョン0.9)が進む一方で、政府EAの取り組
みは試行検証中。
アメリカ
(FEAF)
オーストラリア
(AGA)
ベースとして
策定
NZFEF
ベースとして策
定
ベースとして策定
【AGAの目的】
• AGAはフレームワークを提供し、ITCサービスを活用して、市民に
対して一貫性のある、質の高い、費用対効果の高いIサービスを
提供することが目的
- 省庁横断するサービスを提供するための省庁間共通の言語
を提供
- 重複、再利用可能あるいは共有可能なサービスの識別を支
援
- 政府によるICT投資の客観的評価のための基礎を提供
- 策定された基準、プリンシプル、機能設計と提供を支援する
ためのリポジトリの提供を通じて、費用対効果のある適切な
ICTサービスを提供
【AGAの目的】
• AGAはフレームワークを提供し、ITCサービスを活用して、市民に
対して一貫性のある、質の高い、費用対効果の高いIサービスを
提供することが目的
- 省庁横断するサービスを提供するための省庁間共通の言語
を提供
- 重複、再利用可能あるいは共有可能なサービスの識別を支
援
- 政府によるICT投資の客観的評価のための基礎を提供
- 策定された基準、プリンシプル、機能設計と提供を支援する
ためのリポジトリの提供を通じて、費用対効果のある適切な
ICTサービスを提供
【NZFEAの特徴】
• アメリカ政府のFEAFEAに適応しており、内容もかなりの部分が
踏襲・引用されている
【NZFEAの特徴】
• アメリカ政府のFEAFEAに適応しており、内容もかなりの部分が
踏襲・引用されている
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
167
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
Federated Enterprise Architecture Framework Reference models (NZFEAF RM)
- 現在のバージョンは、Version 0.9( 2009年8月制定)
- 現在は本参照モデルが受け入れ可能であるかいくつかの省庁で実証評価中
- NZFEAF RMは、オーストラリア政府とアメリカ合衆国政府(FEAF)を参考に策定
NZFEAF RMの特徴
- NZFEAFの対象範囲は既に策定されている「電子政府相互運用性フレームワーク
(e-GIF:e-Government Interoperability Framework)」と同じであり、組み込まれている
- 参照モデルは、省庁での情報、技術やビジネスプロセスを共有するための仕組み
- 政府全体で、省庁の利害関係に囚われず、国民主導の政治を実現するために必要な
コミュニケーション、コラボレーションの仕組みを提供するためにある。
参照モデルの目的
- 参照モデルは市民向けサービスを実現するためのICTの調達を支援するため。
• 省庁連携したサービスを調達する場合の各省庁間における共通言語としての活用
• 重複や再利用可能、シェアード化可能なサービスの洗い出しを支援
• ICTへの投資の客観的な評価
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
168
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
NZFEAF参照モデルの体系
- 参照モデルの全体感は、オーストラリア政府の参照モデル(AGA RM)の転載や、サービス参照モデ
ル、技術参照モデルがAGA EAをそのまま利用する等 AGAの影響が色濃いものとなっている。
New Zealand Federated Enterprise Architecture Framework (NZFEAF)として記載されているもの
出典:http://ict.govt.nz/guidance-and-resources/enterprise-architecture/nzfeaf-reference-models-version-09/overview
PRM:今後策定される予定
BRM:策定済み。Subjects of NZ(SONZ)とFunctions of
NZ(FONZ)の2つの参照モデルから構成
SRM:オーストラリア政府のモデルと同様
DRM:Entity Model(EM)とSharing Framework(SF)で構
成されているが、現在はSFのみ策定(政府におけるデータス
テュワートとデータカストディアンの存在を考慮してEMとSFとを
分けて策定)
TRM:オーストラリア政府のモデルと同様
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
169
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
FONZ:Functions of New Zealand government(現バージョンはv2.30)
- 政府全体の機能を3つの大分類から、省庁レベルまで詳細化した分類および体系
SONZ:Subjects of New Zealand government
- 政府全体の政策課題から省庁レベルの個別課題の分類・体系
Service Reference Modelからの記載
政府レベルで策定
省庁レベルで策定
トップレベルから
徐々に詳細化
ビジネスプロセス か
らのボトムアップ
省庁レベルで策定
政府レベルで策定
個別の課題等
政府全体の
政策課題
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
170
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
FONZとSONZの関連付けは以下のようにFONZの機能レベルとSONZの主要政策目的(Broad Subject
Term)され、政府全体のアクティビティとして定義される
政府単位のアクティビティ
省庁単位のアクティビティ
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
171
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
FONZの各階層構成
3つのファンクションエリア
Functions for New Zealanders
Support Functions
Management of Government Resources
9つのファンクション
47のサブファンクション
3つのファンクション
14のサブファンクション
1つのファンクション
7のサブファンクション
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
172
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
SONZの各階層構成
8つのBroad Subjects
Event
Party:
Condition
Resource
Activity
Entitlement
Obligation
Other
19のNarrow Subjects
114のNarrow Subjects
84のNarrow Subjects
305のNarrow Subjects
262のNarrow Subjects
17のNarrow Subjects
7のNarrow Subjects
6のNarrow Subjects
個人・企業・政党、幼児、労働
者、資格・役割等の単位
Partyの活動単位や政府に支
援を求める領域
災害時や祭祀、スト等と政府
の関与を必要とする状況
Partyに便益をもたらす資産
e.g.住宅、車両、知財等
法的に保護される権利
法的な義務
Partyの属性情報
e.g. 個人情報、財務情報、etc.
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
173
ニュージーランド
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
Agent Activity定義の例:社会開発福祉省 Ministry of Social Development
- 省庁の個別政策、アクティビティ
は省庁ごとに定義された課題項
目と機能との組み合せで構成さ
れる。
- サービス参照モデルで定義され
るサービスやブロセスのメタ情報
のようなもの。
【省としての大アクティビティ】
Our Ministry is all about helping [assisting] to build
successful individuals[promoting participation in society],
and in turn building strong, healthy families[subsidising
social services] and communities.
【個別政策課題の例】student [students] allowances
[allowances] and loans [student loans] [funding
individual study].
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
174
ニュージーランド
ⅲ.政府EAを統制・調整していくための組織
政府EAガバナンスは独立した組織ではなく、省庁横断組織・会議体により行われる。
- ICTに関する政策や予算の最高決定機関は政府ICT閣僚級会議が行う。
議長は財務大臣の他、内務・ICT長官、政府サービス委員長、経済開発相、教育相、保健相、移民相がメン
バー。会議には政府CIOやICT戦略グループメンバーも参加
- その他ICT戦略承認機関として「ICT戦略グループ(各省庁次官級で構成)」
- 立案及びその維持管理や各プログラムのマネジメント等は「政府ICT協議会(政府CIO・各省庁
CIO等)」、「政府EAグループおよび「ICT供給マネジメントグループ(いずれも各省庁からの構成メ
ンバー)」が行う。
http://ict.govt.nz/directions-and-priorities/governance
政府CIOオフィス(GCIO)はすべての会議
体・組織の事務局、支援機能を担う
政府ICT協議会では、ICT戦略立案や、助言、
政府横断プロジェクト等の調整
EAの管理、各省庁での施策の執行状況を
管理、支援
政
策
決
定
計
画
・調
整
・評
価
執
行
C.文献調査 ②ニュージーランド
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
175
ニュージーランド
ⅳ.まとめ、示唆
政府EAフレームワークの体系自体は、アメリカ政府やオーストラリア政府を踏襲しているが、参照モデルの
内容は、独自性の高いものとなっている。
- 独自に策定している参照モデルは、BRM、DRMだが両参照モデルともEA導入以前から電子政府
政策で検討・策定されたe-GIF(電子政府相互運用性フレームワーク)での成果物を適合
- 業務分野、データ分野ともに政府横断レベル、省庁レベルでの検討・想定成果物を設定し、その関
連性を明確化
BRMは、政府の3つの提供機能領域(FONZ)、8つの目的(SONZ)の大分類のもとで政府・省庁レベルに
いたる詳細化が図られている。
- 政府・省庁で提供される各サービスの位置づけはなされているが、ワークフロー等どこまでの詳細
化が図られているか、その際どのようなツールで実装されているかは不明
EAや参照モデルを維持する組織は省庁横断組織によって運営・管理されている。
- 政府全体のICT政策に関わる意思決定や省庁横断の政策課題に対する運営・意思決定は、政策レ
ベルや政策決定のプロセス毎に各省庁の代表者による組織で運営
- 予算を統括する財務・予算省が主な政策決定の主要なポストにあることが多いが、財務・予算省直
轄の組織ではない(Co-operationによる政策決定)
- EAのフレームワークや参照モデルの維持・管理、各省庁への統制も横断組織(政府CIO事務局や
各リファレンスグループ)等によって行われる
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ②ニュージーランド
176
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
2007年2月にOIO Enterprise Architecture(OIO Enterprise Arkitektur ):OIO EAが策定
- ドキュメントは、大きくビジネス側面とテクノロジー側面とで構成
(Zachman Frameworkに類似)
- 個別組織と政府横断的な視点の両方をカバー
- 内容はターゲットとする詳細なグループやレイヤ、適用のステップに応じた分類
【デンマーク政府におけるEAフレームワーク】
• 主要な5つのアクティビティ
• 基本はA1からE3までのステップが1つのマネジメ
ントサイクル
• EAガバナンスによって統制される(常に関与を受
ける)
• 主要な5つのアクティビティ
• 基本はA1からE3までのステップが1つのマネジメ
ントサイクル
• EAガバナンスによって統制される(常に関与を受
ける)
OIO EAの特徴
1. 進行中であり、開発と維持の反復を繰り返すもの
2. OIO EAメソッドは、 他のEA手法への適用が可能
3. 個々のステップは順序立てて行われるわけではない
4. アクティビティにおける各ステップは並行実施が可能
5. 特定要件応じて重視するステップの調整が可能
6. ステップの状況により定義されている成果物の調整が可能
7. EAそのものが目的ではない
8. EAアーキテクトはすべてのステップに参加
OIO EAの特徴
1. 進行中であり、開発と維持の反復を繰り返すもの
2. OIO EAメソッドは、 他のEA手法への適用が可能
3. 個々のステップは順序立てて行われるわけではない
4. アクティビティにおける各ステップは並行実施が可能
5. 特定要件応じて重視するステップの調整が可能
6. ステップの状況により定義されている成果物の調整が可能
7. EAそのものが目的ではない
8. EAアーキテクトはすべてのステップに参加
http://ea.oio.dk/arkitekturmetode/introduktion/english-version/part-4-the-oio-ea-methods-
activities-and-steps
をもとに再構成したもの
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
177
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business アクティビティの構成
- 6つのステップによって組織レベ
ルからタスクレベルに詳細化
http://ea.oio.dk/arkitekturmetode/introduktion/english-version/part-4-the-
oio-ea-methods-activities-and-steps
をもとに再構成したもの
B1:Business Objects
政府におけるビジネス目的の定義
B2:Locations/Organisation
構成する組織や地域等毎に必要とする目的や
ゴールの定義
B3:Business Services
サービス提供者へのビジネス視点からのサービス
の定義
B4:Business Processes
主要なビジネスサービスを構成するプロセス、サ
ポートプロセスの定義
B5:UseCases
ユーザごとのタスクベースでの整理(Whatであっ
てHowではない)
B6:Workflow
B5における個々のタスクを解決する業務記述
Business
Serviceの
詳細化
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
178
デンマーク
i. 電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business Objectsの記載例B1:Business Objects
政府におけるビジネス目的の定義
B1におけるモデリングの例
- 2007年におけるOIO EA研修
でのテキストにおける記載内
容
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
179
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business アクティビティの構成
- 6つのステップによって組織レベ
ルからタスクレベルに詳細化
B2:Locations/Organisation
構成する組織や地域等毎に必要とする目的や
ゴールの定義
B2におけるモデリングの例
- 2007年におけるOIO EA研修でのテキスト
における記載内容
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
180
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business アクティビティの構成
- 6つのステップによって組織レベ
ルからタスクレベルに詳細化
B3:Business Services
サービス提供者へのビジネス視点からのサービス
の定義
•具体的なビジネスの内容を文章に
記載
•SOAの適用をイメージ
•具体的なビジネスの内容を文章に
記載
•SOAの適用をイメージ
B3におけるモデリングの例
- 2007年におけるOIO EA研修でのテキスト
における記載内容
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
181
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business アクティビティの構成
- 6つのステップによって組織レベ
ルからタスクレベルに詳細化
目的:
• プロセスのモデル化
• 重要なシステムとオブジェクトの関連付け
• 将来的にはプロセスの最適化を図ること
目的:
• プロセスのモデル化
• 重要なシステムとオブジェクトの関連付け
• 将来的にはプロセスの最適化を図ること
• As-ISもTo-BeもBPMNで表記
BPMNの実行:
• 実行可能なBPDマッパー、XMLベース言語等の利用を
サポート:
- BPEL(BPEL4WS - Business Process Execution
Language for Web Service)
- ビジネス·プロセス·モデリング言語(BPML)
• 出力されたBPELを介して複数のBPMNツールで利用
可能とする(BizTalk、Websphere、Oracle等)
• As-ISもTo-BeもBPMNで表記
BPMNの実行:
• 実行可能なBPDマッパー、XMLベース言語等の利用を
サポート:
- BPEL(BPEL4WS - Business Process Execution
Language for Web Service)
- ビジネス·プロセス·モデリング言語(BPML)
• 出力されたBPELを介して複数のBPMNツールで利用
可能とする(BizTalk、Websphere、Oracle等)
B4:Business Processes
主要なビジネスサービスを構成するプロセス、サ
ポートプロセスの定義
B4におけるモデリングの例
- 2007年におけるOIO EA研修で
のテキストにおける記載内容
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
182
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business アクティビティの構成
- 6つのステップによって組織レベ
ルからタスクレベルに詳細化
B5におけるモデリングの例
- 2007年におけるOIO EA
研修でのテキストにおける
記載内容
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
B5:UseCases
ユーザごとのタスクベースでの整理(Whatであっ
てHowではない)
183
デンマーク
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
Business アクティビティの構成
-
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
184
デンマーク
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
デンマークにおける参照モデルは、以下BRMに相当するFORMとSRM・TRMに相当するSTORMの2つが
存在。
OIO EAと2つの参照モデルとの関連は明示されていない。
FORM (the Danish acronym for Joint Cross Governmental Business Reference Model)
- 政府、地域政府や自治体すべてのパブリックセクターが提供するサービスを連携するための参照
モデル、現在のバージョンは2.1(v1.0は2007年11月。2012年3月から2.2)
STORM(the Danish Service- and Technology Reference Model )
- 各省庁向けの共通言語となるサービス・技術用語集
Framework Reference Models
STORM:各省庁向けの共通言語となるサービス・技術用語集
Technical
Activity
Strategic
Activity
Business Activity
B1:Business Objects
B2:Locations/Organisation
B3:Business Services
B4:Business Processes
B5:UseCases
B6:Workflow
FORM
Service Area
Main Area
Problem Area
Management Functions
OIA EA Whitepaper、http://blog.modernisering.dk/form/ をもとに独自に作成したもの
明示的な記載は
ないが、関連性
の存在は想定さ
れる
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
185
デンマーク
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
FORMの基本構成
- FORMではパブリックタスクを4段階に分類して整理
Service Area
Main Area
Problem Area
Management
Functions
サービスエリアのサブエリア。84のメインエリアと293の軸から構成
「主要政策課題:The Key Task」「予算:Finance」「所管省庁・組織:
Authorities」「法律:Legislation」の4つの視点から整理
メインエリアのサブエリア。法律で表記された公務を反映したも
の。4つのステップから構成(ステップの内容は不明)
部門固有の公共/内部タスク。各当局が市民、企業向けに
提供する約1200の異なるマネジメントタスクを整理したも
の
http://blog.modernisering.dk/form/ をもとに再構成したもの
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
186
デンマーク
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
「FORM-Online」 http://www.form-online.dk/
サービスエリアを分類
する4つの視点
「主要政策課題」
Service Areaおよびそのサブエリア
であるMain Area、Problem Area
その政策の概要
関連する法律と条文
へのリンク
所管官庁・組織
予算案の項目と予算
内容へのリンク(リンク
先では、予算と執行状
況が記載)
政策課題に関連する
キーワード
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
※上記ページは「Google Translation」によりデンマーク語から英語へ自動翻訳されたもの
であるが、一部翻訳が完全ではない部分もある「34.Business」が相当
187
デンマーク
ⅲ.政府EAを統制・調整していくための組織
STS(Steering Committee for Joint Cross Government Cooperation)とDT(Digital Taskforce)、政府
CIO
– STSは政府IT政策に関する最高意思決定機関(各省庁の次官級と自治体代表者で構成)であり政
府横断の調整、イニシアティブを、DTはSTSの事務局の役割を担う
- 政府CIOはDTトップを兼ねる(現政府CIOは技術委員会、科学技術イノベーション省出身)
参考資料:
内閣府「政府CIO制度について米国・韓
国・デンマークを参考に」、
OECD「Efficient e-Government for
Smarter Public Service Delivery
Denmark 2010」をもとに再構成
OIO EAおよびフレームワークの維持管
理、改定等は電気通信庁が行う
CIO Committee
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
188
デンマーク
ⅲ.政府EAを統制・調整していくための組織
FORM/STORMを維持・更新する組織
– OIO EAの維持・管理は、IT and Telecom Agency(電気通信庁:科学技術イノベーション省の下部
組織)で行われる
- FORM、STORMの維持・管理はDT(Digital Taskforce)が担う
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
189
デンマーク
ⅳ.まとめ、示唆
BRMの役割:「FORM・STORMは公的サービス・業務を政策課題によって分類する手段」
- 法律から各省庁・自治体までの公的サービス、内部業務までを体系的に分類するもの
- 民間に公的サービスをワンストップでサービスするために、分類の視点として従来の監督官庁や組
織体系での分類だけでなく、「主要政策課題(何のために、誰に、何を)」「予算の出所」の視点からも
分類し、さまざまな視点から公的サービスとその根拠となる法律を参照可能
- 共通・固有含め政府・省庁・自治体すべてのタスクを約
1200のマネジメント・ファンクションに整理
BRMを維持・管理する組織
- 財務省の一組織であるDT(統括は政府CIO)がFORM
の維持管理を担当(そこで主要政策課題と書く法律、予算
とのマッピングが行われる)
OECDではステークホルダー
からの視点で、と記載している
2003年EA策定時点で目指し
ていたイメージ
BRMをベースに各省庁でBusinessプロセスを可視化す
るための手法と定義書としてBPMN、BPELを明記
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ③デンマーク
190
イギリス
ⅰ.電子政府への取り組み概要、EAへの取り組みの背景
e-GIF、SAFからUKRA(UK Government Reference Architecture)へ
- e-GIF(電子政府相互運用性フレームワーク:e-Governments’ Interoperability Framework)は、
オーストラリアやニュージーランドを始め多くの電子政府の取り組みの参考となってきたフレーム
ワーク
- 政府業務の統制ではなく、政府業務をシステム化する際の相互運用性を担保するために業務プロ
セスをどのように管理するべきか、という観点から策定
- 参照モデルとしてはthe British Standards and Architecture Framework(SAF)では、技術参照モ
デルのみ策定
- 予算措置や、政策・行政評価と連動する仕組みとして、2012年3月までにUK Government
Reference Architecture(UKRA)を整備することを決定
• 歳入・税関局、労働年金省、法務省、保険省、内務省、国防省、内閣府、教育省でワーキング
グループを形成し、策定
- 策定にあたっては、上記省庁で独自に整備していた資料などの活用のほか、EFAFやAGAも参考
UKRA策定の目的
- アクティビティやプロセス、複雑化したシステムから、政府共通の属性情報、機能、インターフェース
や依存関係を明らかにし、モジュール・コンポーネントへ分解していくこと
- 業務責任者、設計者およびソリューションプロバイダ間での責任分解点を明確化
- 共通プロセスや手続きの再利用性を高め、政府レベルでサービス活用を図っていくこと
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
191
イギリス
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
UKRA(Draft Ver.)の概要
- 参照アーキテクチャフレームワークは以下図のように12の分類から構成される。
- このうち参照モデルは、「How Logical(どのように)」の列部分の各レイヤで定義される。
つまり、UKRAは「BRM」「DRM」「ARM」「TRM」の4つの参照モデルが定義される。
HOW
Logical
WITH WHAT
Physical
WHAT
Conceptual
TechnologyBusinessInformationApplications
Government
Strategy
Government
Information
Strategy
Government
Applications
Strategy
Government
Technology
Strategy
Which data storage
and transfer
mechanisms ?
Which packages &
bespoke software?
Which h/w,
systems s/w &
networks
Which physical
buildings, people
etc…
How is the
business logically
structured
How is the
information defined
and related
How are the
application
components
defined and related
How are the technology
components defined and
related
HOW
Logical
HOW
Logical
WITH WHAT
Physical
WITH WHAT
Physical
WHAT
Conceptual
WHAT
Conceptual
TechnologyBusinessInformationApplications
Government
Strategy
Government
Information
Strategy
Government
Applications
Strategy
Government
Technology
Strategy
Which data storage
and transfer
mechanisms ?
Which packages &
bespoke software?
Which h/w,
systems s/w &
networks
Which physical
buildings, people
etc…
How is the
business logically
structured
How is the
information defined
and related
How are the
application
components
defined and related
How are the technology
components defined and
related
BRMBRMは政府の活動(成果達成のため
のビジネスニーズを定義するもの
- 各省庁はBRMで定義されたビジ
ネスサービスが、それぞれの運用
目標と対応していることを保証す
る必要がある。
2012年3月のデッドラインに向けて、既
存のフレームワーク等との対応や、維持
管理のあり方等の検討過程で修正等が
加わる可能性あり
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
192
イギリス
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
BRMは、2つのビジネスエリア-「Managing the Government」「Service for Citizens」から構成
- ICT政策における再利用性と標準化を推進していくために関連性の高い領域に特定
【内部機能】
組織にかかわらず共通な機能
再利用性が高い部分として定義
【Service For Citizens】
省庁特有な機能が主に存在
ただし省庁横断的な共通機能も存
在しており、その機能領域を確認し
ていく
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
193
イギリス
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
「Service For Citizens」
- 省庁に固有の業務エリアについて定義されたもの
- いくつかのエリアは複数の省庁に横断する機能も存在するため、まずは政府レベルで業務エリアを
定義し、省庁レベルで可視化していくことに期待されている
- 主に27の業務エリアから構成され、それぞれに業務エリアの定義付けがなされている
Business Support
Business Support
CommunicationsCommunications
Community Services
Community Services
Credit and Insurance
Credit and Insurance
Cultural AffairsCultural Affairs
Defense
Defense
Economic ManagementEconomic Management
Education and Training
Education and Training
EmploymentEmployment
Environment
Environment
Health Care
Health Care
ImmigrationImmigration
International Relations
International Relations
Justice
Justice
Maritime Services
Maritime Services
Multi-Cultural AffairsMulti-Cultural Affairs
Natural ResourcesNatural Resources
Policing
Policing
Primary Industries
Primary Industries
Revenue CollectionRevenue Collection
Science
Science
Sport and Recreation
Sport and Recreation
Statistical Services
Statistical Services
TourismTourism
Trade
Trade
Transport
Transport
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
Media
Media
194
イギリス
ⅱ.参照モデルの体系およびBRMの整備状況
BRM「Managing the Government」:5つの業務特性と3つの意思決定レベルによって分類
Activity&DecisionMaking
Business Competency
白色セルの業務コンポーネント
• 固有の業務目的
• 組織ごとに独立
• 政府全体での共通達成指標が設定
黄色セルの業務コンポーネント
• 省庁固有だが個々のオペレーションレ
ベルに詳細化すれば共通性の高いも
の
• 将来的にはシェアードサービスも視野
になるコンポーネント群
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
195
イギリス
ⅲ.政府EAを統制・調整していくための組織
2010年策定のICT戦略のもとでは、政府CIOを中心に政府レベルでのCIO組織が強化されている
- 内閣府における公共支出委員会(Public Expenditure Committee)の配下に政府CIO(各省庁CIO
から任命)、CIO Delivery Board、CIO評議会(Council)を設置
UKRAはCIO Delivery Board、CIO評議会からの合意を経て、政府参照モデルとして承認される。
- 各リファレンスモデルの維持・管理する組織については(CIO Delivery Boardが記載されているが)
正式には決定していない
Delivery Board:
•ICT政策の実施に関わる権
限を持つ(各メソドロジの維
持管理も含む)
Delivery Board:
•ICT政策の実施に関わる権
限を持つ(各メソドロジの維
持管理も含む)
CIO 評議会:
•各省庁でのICT施策実現と
ポートフォリオ策定に責任
を持つ(各省庁CIOにより
構成)
CIO 評議会:
•各省庁でのICT施策実現と
ポートフォリオ策定に責任
を持つ(各省庁CIOにより
構成)
政府CIO:
•Delivery Boardと評議会
を統括
政府CIO:
•Delivery Boardと評議会
を統括
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
196
イギリス
ⅳ.まとめ、示唆
BRMについての取り組みが始まったばかりであり、どのように省庁レベルのビジネスプロセスと関連付けら
れていくか、維持管理についてはまだ不明である。
-イギリスにおける政府EAは、主に技術参照モデルの整備が進められてきていたため、実際に業務参
照モデルがどのように適用されるかは明らかではない。
- ただし、UKRAの実現アプローチは、アメリカ政府(FEFA RM)やオーストラリア(AGA RM)を強く意
識(ReviewとAgree to those Approach)しているものであり、同様の展開が予測される。
ICT戦略、政府EAを維持・管理する組織・体制
- UKRAの策定にあたっては、ドラフト版を歳入・税関省が中心となって策定する等、予算との強い
- 内閣府配下に設置される政府CIOとその管轄組織は、内閣の下院議員から構成される公共支出委
員会への助言・提言を行う等、省庁含めた政府全体のICT予算決定に大きく関与。
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ④イギリス
197
その他各国政府におけるBRM整備状況については以下のとおりである。
ⅰ.カナダ
- GSRM(Government Strategy Reference Models)
ⅱ.シンガポール
- SEGA BRM:参照モデルはBusiness、Solution、Information、Technicalの4つの構成
BRMはLOBからなるBusiness Functionsと、Business Processesから構成
http://www.itsc.org.sg/upload/download/47/ITG%20Capability_Pallab%20Saha.pdf
ⅲ.オマーン
- OeGAF:シンガポール政府EAに影響を受け策定、Business、Solution、Information、Technicalか
ら構成される“Reference Models”を策定。
ⅳ.韓国
- 国家公的管理・保障省において2007年EAフレームワーク、各参照モデルを策定
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ⑤その他各国政府のBRM整備状況
198
3.標準モデル化動向の整理 (2)各国政府におけるBRMの活用状況調査
C.文献調査 ⑥民間におけるBRM活用状況
民間における業務参照モデルの活用状況につ
いては、以下のとおりである。
ⅰ.SCOR
- SCC(Supply Chain Council)にて策定さ
れた、サプライチェーンを対象としたプロ
セス参照モデル
- 生産品別に17項目の手順を設定、それ
ぞれ計画プロセス(PLAN)、4段階の実行
プロセス(SOURCE、MAKE、DELIVER、
RETURN)、それらの実行を管理する手
法(Enable)で構成
ⅱ.eTOM
- TM Forumにて策定された通信事業者業
務に関わるフレームワーク「NGOSS
(new generation operations systems
and software)」における業務参照モデル
ⅲ.その他、Open Groupにて策定された、The
Exploration and Mining Business Reference
Model等が存在している。
番号
レベル
プロセス構造図 コメント
1
2
3
4
コンフィギュレーショ
ンレベル
(プロセス・カテゴリ)
プロセスエレメン
トレベル
(プロセスの分解)
Plan
DeliverMakeSource
会社のサプライ・チェーンはレベル2
の30のスコア「プロセスカテゴリ」の中
から組み立てられる
実行戦略は、独自のサプライチェーン
を構成する中で実現する。
レベル3は、選定市場の競争に勝つ企
業能力を定義しており、以下の内容を
含む。
•プロセスエレメントの定義
•プロセスエレメントの入出力
•プロセスパフォーマンスメトリクス
•適用可能なベスト・プラクティス
•ベストプラクティスを支援するシステ
ム機能
レベル3で実行戦略を更に洗練する。
実行レベル
(プロセス要
素の分解)
このレベルで、特定サプライチェーン
・マネジメントの現実を実行する。
レベル4で競争優位を実現し、変化す
るビジネス条件に適用していく現実を
定義する。
サプライチェーン・レファレンス・モデル
トップレベル
(プロセスタイプ)
レベル1はサプライチェーン・オペレー
ションズ・レファレンスモデルの範囲と
内容を定義する。
ここに競争相手の実行目標の基準が
設定される
範囲外
名称
Balance Production Resources with
Production Requirements
Establish Detailed
Production Plans
Identify, Prioritize, and Aggregate
Production Requirements
Identify, Assess, and Aggregate
Production Resources
P3.1
P3.3 P3.4
P3.2
Return Return
SCORにおけるSCM参照モデル
「Supply-Chain Operations Reference-model Overview Version 7.0日本
語版」,SCC,2005年
199
海外政府EAにおける調査結果からみた業務参照モデルの整備・活用状況からの示唆
各国政府では、FEAFを参考あるいはベースにしつつ、これまでの電子政府やEA等への取り組みなどを背
景として、独自の視点からの修正や補完を加えている。
- ニュージーランドでは、FEAFやオーストラリアの業務参照モデルをベースにしつつ、FONZと呼ば
れる機能構成図とは別に、政策課題視点からの体系化を行い、それぞれを組み合わせている
(FEAFの場合、BRMでは取り入れていない)
- デンマークでも、機能と政策課題とを組み合わせた参照モデルを策定している。
- 双方とも機能だけでなくそれに政策課題(主要政策課題から個別政策課題まで)をクロスさせるこ
とで、各省庁レベルで詳細化される場合のバリエーションの存在に考慮している。
※ 機能レベルでどれだけ詳細化されても、各政策課題や省庁の独自性を考慮していなければ、
省庁レベルでの検討内容とリンクすることが難しいことはアメリカ各行政機関へのヒアリングからも
明らかである。
3.標準モデル化動向の整理 (3)BRMの活用状況調査のまとめ
D.まとめ
業務参照モデル
機能エリア
LoB
サブ機能
×
主要政策課題
個別政策課題
各省庁で可視化
されたプロセスとの
関連付け
省庁に横断的な機能
省庁に個別な機能
共通化可能なプロセ
スの抽出
各国とも関連付けに取り
組みはじめた段階
200
海外政府EAにおける調査結果からみた業務参照モデルの整備・活用状況からの示唆
政府レベルからの業務参照モデルの詳細化、および省庁レベルで策定される業務プロセスへの関連付け
のアプローチの考えかたを、ニュージーランドやデンマークの例をもとに以下に示す。
- 業務参照モデルは、これまでの機能の詳細化だけでなく、政策課題の視点から整理・体系化を行い、
各省庁レベルで求められる機能エリア、LoBおよびサブ機能を定義する。
- 各省庁で整備され、BPMNツール等によりサービスコンポーネントレベルまで可視化された業務
サービス群と、BRMで詳細化された省庁個別のサブ機能とを関連付けを行い、全体として業務参
照モデルから個々の業務プロセスまで詳細化を可能とする。
3.標準モデル化動向の整理 (3)BRMの活用状況調査のまとめ
D.まとめ
省庁レベルでの
機能エリア
省庁レベルでの
LoB
省庁レベルでの
サブ機能
業
務
参
照
モ
デ
ル
に
よ
る
定
義
業務プロセス
サービスコンポーネント
業務サービス
①政府レベル→省庁レベルへの
詳細化による整備
②個別業務レベル
→省庁レベルへの
ボトムアップによる
整備
BPMNツール等により
可視化可能な部分
今後整備するべき
部分
201201
<参考>
<参考>
・【参考1】検討対象手続の選定 初期の検討
・【参考2】ヒアリング結果
202
1.2.1 法律の分類例
1.対象とする手続・法律の選定
区分の視点 区分 区分の概要
モデル化への影響
(一般論として)
公法と私法
公法
国家や地方公共団体の組織や活動、およびその相互の関
係、そして、国家や地方公共団体と国民・市民との関係
を規定する法。憲法や刑法、民事訴訟法など。
行政に関係するものが
多い(モデル化の価値
が高い?)
私法
市民社会の私人間相互の関係について規定する法。民法
や商法など。
直接は行政に関係しな
いものが多い(モデル
化の価値が低い?)
一般法と特別法
一般法
人や地域などについて具体的に限定せずに、広く一般に
定めた法。市民一般に適用される民法は一般法。
単体で完結しているが
、具体性には欠けるの
で一長一短
特別法
特定の人や地域などについて限定的に適用される法。市
民のうち商人に限定して適用される商法は特別法(一般
法と特別法が重複して規定している部分については、特
別法が一般法に優先して適用)。
一般法のモデルの拡張
となるが、具体性は高
い
実体法と手続法
実体法
権利と義務、犯罪と刑罰などの法律関係それ自体の内容
を定める法。民法や商法など。
プロセスが存在しない
のでモデル化は困難
手続法
実体法が定める法律関係を実現するための手続を定める
法。民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、不動産登記
法、商業登記法など。
プロセスが明確で相対
的にモデル化が容易と
思われる
最も影響が大きいのは、「実体法」か「手続法」かの違いであり、「実体法」のプロセス化は
難しいので、今回は「手続法」を中心に作業する。
他にどのような区分があり得るかについては引き続き調査(ヒアリングを含む)。
実際にはほとんどの法律はこのように明確に区分できないし、
区分されていない。区分の基準自体も明確ではない。
【参考1】検討対象手続の選定 初期の検討
【 1月23日打合せ資料・再掲】
203
1.2.2 検討の視点の例:一般法と特別法の区分の細分化
1.対象とする手続・法律の選定
一般法、特別法の観点から網羅的に検証することを目指す場合、①基本法、②一般的レベルの法律、③臨時措置法又
は特別措置法がセットとしてそろっているケースを選択することが考えられる。
区分の視点 区分 区分の概要 モデル化への影響
多段階と
なっている
一般法と特別法
基本法
いわゆる基本法であり、「〇〇基本法」という名称のも
のが多い。
例:環境基本法
プロセスが存在しない
場合が多いのでモデル
化は困難と思われる
法律
基本法とも、臨時措置法/特別措置法とも命名されてい
ないもの。基本法に対して、当該分野における特別法に
あたる場合が多い。また、臨時措置法/特別措置法に対
しては、一般法にあたる場合が多いと考えられる。
例:容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関
する法律
基本法と法律の中間的
位置づけと考えられる
臨時措置
法/特別
措置法
時限的な位置づけの法律。上段の「法律」に対して、特
別法の位置づけになっていることが多いと考えられる。
例:ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関
する特別措置法
一般的に手続き的な内
容が多く、相対的にモ
デル化が容易と考えら
れる
【 1月23日打合せ資料・再掲】
【参考1】検討対象手続の選定 初期の検討
204
1.2.3 検討の視点の例:法律の種類による区分と、モデル化対象としての評価(1)
1.対象とする手続・法律の選定
下記の分類については、モデル化が困難、若しくは今回の対象に適さないと考えている。
区分 区分の概要 モデル化への影響/調査対象としての考え方
行政組織法
行政組織を規定した法律
例:行政組織法
プロセスが存在しないため、モデル化は困難と
思われる。困難な場合の検証目的に調査対象と
することも考えられる
訴訟法
裁判の手続きについて規定した法律
例:民事訴訟法
今回のモデル化の対象にはあまり適さないと思
われる
国際法
国家相互間の関係で、国家行為を拘束する規則
または原則
今回のモデル化の対象には適さないと思われる
区分 区分の概要 モデル化への影響/調査対象としての考え方
業法
業界に属する事業者が守るべきことを主に規定
した法律
本調査でも取上げるべき?
一方、下記の分類については、本調査の対象とする予定。
経済産業省管轄の業界で、我が国の産業にとって重要な業界2~3から一つの法律を選択することが考えられる(ご相
談)。
【参考1】検討対象手続の選定 初期の検討
【 1月23日打合せ資料・再掲】
205
1.3 ボトムアップアプローチによる選定
1.対象とする手続・法律の選定
時間的な制約もあるので、まずは手をつけられるところから手をつけ、その中で課題や問題点を見つけていく。
BPMN化が可能か、その際にどのような課題や問題点があるか、ということの検証を第一の目的とした場合、ど
のような条文にはどのような課題があるか、という視点からの分析が有効な可能性がある。この場合、対象法律
区分の絞込みはそれほど必要性が高くない。
まずは試行的にいくつか作業をしてみることで、そこから得られた知見を元に対象をさらに方針を明確化する(あ
るいは次年度以降の作業課題を明確化する)ことも有効。
モデル化が困難な法律については、なぜ困難なのかを明らかにしたうえで深入りは避け、比較的モデル化に適した法
律・手続きについて詳細なモデル化を実施することで、モデル化に伴う問題を明らかにすることを目指す。
当社の分析の都合上、「このような種類の法律を見ておく必要がある」というものは、理由を明確にした上で対象とする。
ある程度条件を決めた上で、その中でどれを選んでも大差ない場合には、当社の選択で一つを選ぶことがあり得る。
(例)「基本法」の検討をする必要があるので、「知的財産基本法」を対象とした⇔「食品安全基本法」でも別に構
わない(何らかの優先順位をつける基準があれば適用するが、基準がなければ任意に決めざるを得ない)
契約後、有識者へのヒアリングが予定されているので、その中でどのような法律を取上げるのがよいか(あるいはどの
ような法律を取上げて欲しいか)を聴取し、ここで名前が出たもの(2~3本)を作業対象として追加する。
【参考1】検討対象手続の選定 初期の検討
【 1月23日打合せ資料・再掲】
206
(1)ヒアリング調査の実施
ヒアリングについて
【制度に基づく手続き情報の標準モデル化と検証】に対する意見、指摘をBPMN有識者にヒアリングを
実施した。
ヒアリング結果サマリー
<Aさん>
法律は、制約の位置付けになるが、プロセスモデリング可能なものもあると思われる。
法令、政令、省令の下位に位置づけられる規則は、殆ど内部手続について記載されている。文章を分析することによ
りモデリングできるパターンが把握できると思われる。パターンを発見することは意義がある。
<Bさん>
検討の方向性は良い。様々な人が絡んでいる業務をモデリング対象にするのがよいと思われる。
BPRを実施する際は、役所の事務方もわかるようにする必要がある。また、事務方から技術担当まで共通にわかるも
のを作る必要があると考える。
プロセスモデリングは、代替手段、BCPにも寄与する。
<Cさん>
BPMNは設計手法であり、BPMNで書かれたモデルは問題を示していないということ。プロセスモデリングした後に
BPMN図を見て改善のために議論する必要がある。
BPMNでプロセスモデリングすることで即改善につながるとことはない。誤解されないように表現することが望まれる。
【参考2】ヒアリング結果

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