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2020年10月10日
Node-REDで実現する製造業のDX
新澤 雅治
1
自己紹介
◼名前:新澤 雅治(ニイザワ マサハル)
◼所属
✓ 株式会社 電通国際情報サービス
• 製造ソリューション事業部
• 工場IoTチーム
◼職業
✓ IoTソリューションアーキテクト
• IoTソリューションの企画・提案・構築
• カバー範囲:センサーデバイスからからクラウドまで
◼経歴
• 2009年~2017年 :製造業の生産技術部
• 2017年~現在 :現職
2
会社紹介 【株式会社 電通国際情報サービス (略称 ISID)】
製造業×ITに強みを持つ
品川駅港南口より徒歩10分
金融・人事財務・製造に関するITシステム/コンサルティングを提供する
3
今日お話しする内容
製造業の生産技術部門やIT部門の方々など、
✓「工場設備からのデータを収集して何かやりたい」
✓「IoTの仕組みを海外工場にも展開したい」
と考えている方の参考になればと思います。
①Node-Redを使って工場設備のデータを収集する話。
②集めたデータをIoTプラットフォームで全社共有する話。
4
◼本題
工場IoTって何のためにやるんだっけ?
もちろん正解はありません。
弊社なりの「目的」を振り返ってみたいと思います。
5
工場データの3分類
◼工場内のデータは3種類に分類される。この3種類の情報をIoTで網羅的に取得していく必要がある。
稼働情報
品質情報
ロケーション
情報
目的:生産数、稼働時間、稼働状況など生産状況の監視と最適化
手法:稼動監視データを取得し、生産工程を改善
特長:データ取得がしやすく、効果も出しやすい
目的:生産条件、検査データなどから不良品が出ないように最適化
手法:関連データを明らかにして、取得、解析
特長:必要データが不明瞭で、データ解析ノウハウも必要
目的:受注数、生産数、中間在庫数の管理と最適化
手法:リアルタイムの各データ管理、フィードバック
特長:受発注、物流、生産体制など仕組みから変える必要がある
6
データを収集した後の活用 ~KPIで工場をベンチマーク~
◼取得されたデータは仮想空間に入力され、下記のKPIで定量化・シミュレーションに活用される。
ISO22400で定義された工場KPI
企業の能力を定量化し、経営判断に活用する。
7
◼工場IoTをやってみよう!!・・・
装置にLANケーブル挿せばデータ採れるんだっけ?
8
生産ラインの様々な情報
工場 オフィス
標準プロトコル
Web
FTPなど
何種類ものフィールドバスが同じ工場内に
存在し、ネットワークがサイロ化しがち。
FAフィールドバス
PROFIBUS
PROFINET
CC-Link IE
Modbus/TCP
EtherNet/IP
EtherCAT
POWERLIMK
・・・・・
利用者はプロトコルを
意識しないくてもOK
9
生産ラインの様々な情報 ~生産ライン全体で見てみると・・・~
コンベアスピード
公差情報
締め付けトルク回転角
サイクルタイム
検査結果
製品品番
部品品番
AGV位置情報アラーム情報
外観検査結果JPEG
製品ロットNo
製品シリアルNo
部品ロットNo
部品シリアルNo
変更履歴
検査閾値
10
生産ラインの様々な情報 ~異なるデータソースを一つに束ねる:Node-Red~
AGV位置情報アラーム情報
外観検査結果JPEG
製品ロットNo
製品シリアルNo
部品ロットNo
部品シリアルNo
変更履歴
検査閾値
製品品番
コンベアスピード
締め付けトルク回転角
サイクルタイム
検査結果
部品品番
公差情報
11
豊富なNode。
◼様々なプロトコル、データソース、エンドポイントに対応
MQTT
OPC-UA
Azure
ThingWorx
MCプロトコル
SAP
シリアル通信
AWS GCP
Salesforce
12
◼Node-REDで収集したデータをどこに保管する?
◼他の工場でも同様の仕組みを構築したい。
~スケールの課題~
13
工場におけるDX、IoTプロジェクトの現状
「PoC疲れ」・・・なんて言葉も
データ収集 相互接続 業務運用 大規模展開
検証チーム内で開発したツールを
どうやって他工場に展開する?
✓ OT/ITの分断
✓ 低いデータ品質
✓ スケール能力の欠如
⇒PoCから抜け出せない
多くのDX、IoTプロジェクトは「スケールの課題」を抱えている
14
◼普段やり取りの無い部署間でデータの授受を行うことの難しさ。
DX推進部門
データサイエンティスト
事業部門
生産技術エンジニア
データを扱う部門と、データを所有している部門の断絶
データを欲し
ている部門 データを所有
している部門
・データを欲しい人と、データを所有している人の断絶がなぜ起こるのか。
・ローカルやサーバーからデータを探し出すのが大変。
・担当者が退職したのでデータがどこにあるかわからない。
・データを収集するメリットがわからない。
依頼
工場の生産性を分析しよう!
ペンギンさん、PLCの実績データを下さい!
PLCのデータが欲しい?
後にしてほしいな・・・こっちは忙しいんだから
データがもらえなくて分析できない。
仕事が進まない・・
15
データを欲している部門 データを所有している部門
REST API
◼工場IoTプラットフォームとは:機械からデータを検索できる環境を提供する⇒Web APIを使ったデータ授受
データを扱う部門と、データを所有している部門の断絶
RESR API
アニマル株式会社 全社共通データモデル
・ぺんぎん事業部
・南極第一工場
・生産ライン
・PLC・・・・
・いぬ事業部
・・・
本社部門
データサイエンティスト
全社共通データモデル
を定義しておく。
そこにデータを格納する。
RESTAPI
RESTAPI
社内にどんなデータがある
か一覧できて、
API経由やCSVでダウン
ロードできる!
16
どこからでもアクセスできる環境が欲しい。クラウドに格納する?
・データセンターの契約
・ラックの調達
・電源の用意
・ネットワークの設計、冗長化
・メンテナンスや障害対応
しかし、イチから構築するのは面倒だ・・・・
独シーメンス社製 SaaS型IoTプラットフォーム
「MindSphere」が役に立つかもしれません。
17
SaaS型IoTプラットフォーム 「MindSphere」
18
MindConnect Node
◼Node-REDユーザーは簡単に時系列データ、ファイル、イベントをMindSphereにアップロードできます。
インターネット経由
クラウドサービス
MindSphere
最低限必要なのは2つのノード
19
MindConnect Node
◼Node-REDユーザーは時系列データ、ファイル、イベントをMindSphereにアップロードできます。
データポイントID アップロードしたいデータ
20
MindConnect Node
◼Node-REDユーザーは時系列データ、ファイル、イベントをMindSphereにアップロードできます。
アクセストークンをコピペ
MindSphere上で発行した
21
セキュリティリスクは?
ラズパイが乗っ取られたら?
22
膨大な数のIoTデバイスを、クラウド側から安全に管理する仕組み
◼パスワード、ログインIDの漏洩リスクを回避したい。
◼クライアントにパスワード、ログインIDを持たせずに、どうやって望んだ範囲に限定してアクセスさせるか?
クライアントアプリ
リソースサーバー
時系列データ
ファイル
イベント
アクセストークン
トークン発行
データ送信
・認証・認可の要求
・OAuth2.0+JWTアサーションの発行
23
膨大な数のIoTデバイスを、クラウド側から安全に管理する仕組み
ユーザー IoTデバイス MindSphere
デバイス接続許可証のリクエスト
デバイス接続許可証の発行
デバイス接続許可証の埋め込み
接続依頼
接続完了通知の発行
認可キーリクエスト
認可キー発行
ここまできて、ようやく
データにアクセスできる
キーの悪用を防ぐ為
7日以内の更新が必要
キーの悪用を防ぐ為
1時間以内の更新が必要
データ書き込み・取得リクエスト
レスポンス
JWTによる署名・暗号化
URL-SAFEに通信する
24
膨大な数のIoTデバイスを、クラウド側から安全に管理する仕組み
ユーザー IoTデバイス MindSphere
デバイス接続許可証のリクエスト
デバイス接続許可証の発行
デバイス接続許可証の埋め込み
接続依頼
接続完了通知の発行
認可キーリクエスト
認可キー発行
ここまできて、ようやく
データにアクセスできる
キーの悪用を防ぐ為
7日以内の更新が必要
キーの悪用を防ぐ為
1時間以内の更新が必要
データ書き込み・取得リクエスト
レスポンス
JWTによる署名・暗号化
URL-SAFEに通信する
面倒なことはNode-Redがやってくれる。
我々はアプリケーションに集中しよう。
25
製造業でのNode-Red活用事例のご紹介
ーー某エンジニアリング会社様ーー
26
Node-Red活用事例
◼モノワイヤレス株式会社の加速度センサー(TWELITE2525a)
・加速度センサ
ZigBee
専用受信器(USB接続)
専用
受信器
端末(ラズパイやPCなど)
無線で振動データを収集できる。
27
Node-Red活用事例
◼搬送設備の振動情報から故障予知を行う仕組みを構築
搬送装置(コンベア)
・加速度センサ
中継端末(ラズパイ)
ZigBee
ハードウェア構成
振動データ
装置Aの異常振動を検知。
部品をチェックして下さい!
28
Node-Red活用事例
◼クラウド側とエッジ側(工場側)でデジタルツインを構成している。
29
膨大な数のIoTデバイスを、クラウド側から安全に管理する仕組み
ユーザー IoTデバイス MindSphere
デバイス接続許可証のリクエスト
デバイス接続許可証の発行
デバイス接続許可証の埋め込み
接続依頼
接続完了通知の発行
認可キーリクエスト
認可キー発行
ここまできて、ようやく
データにアクセスできる
キーの悪用を防ぐ為
7日以内の更新が必要
キーの悪用を防ぐ為
1時間以内の更新が必要
データ書き込み・取得リクエスト
レスポンス
JWTによる署名・暗号化
URL-SAFEに通信する
セキュリティリスクをゼロにすることはできません。
前項の仕組みがあることで、万が一IoTデバイスが
乗っ取られた場合でも被害を最小限に抑えることが
できます。
30
◼ローコードツールが加速させるCitizen
Developer(市民開発者)
31
ローコードツールが加速させるCitizen Developer(市民開発者)
◼ITエンジニアのような専門知識は無いが、アプリケーションの開発に参加する人。
◼ビジネス目標を完全に理解している人が開発にかかわることで、新規事業の立ち上げや業務のデジタル化に
向けた開発サイクルの加速が期待できる。
ユーザー エンジニア
従来
完璧なIoTシステム
を納品してくれ!
使いにくい!
もっとユーザーのことを
考えて!
はやく作って!
・・・
32
ローコードツールが加速させるCitizen Developer(市民開発者)
◼ITエンジニアのような専門知識は無いが、アプリケーションの開発に参加する人。
◼ビジネス目標を完全に理解している人が開発にかかわることで、新規事業の立ち上げや業務のデジタル化に
向けた開発サイクルの加速が期待できる。
ユーザー
エンジニア
従来
助かる!
自分たちでも
IoTシステムが組めるぞ
少し勉強したらできる
ようになった
市民開発者
33
面倒なことはNode-Redがやってくれる。
我々はアプリケーションに集中しよう。
FIN
34

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