集合知、再考
~Webがもたらす新しい価値~
Collective Intelligence, re-visited


            武田英明
         takeda@nii.ac.jp
         @takechan2000
• 集合知とは

• 集合知のデザイン
集合知とは
集合知
  =/=
(単に) 量
集合知の4つの条件
    • 多様性 (diversity of opinion)
      各参加者がそれぞれに独自の視点があれば、総体として多くの候補
      解を列挙可能。探索空間が狭い場合には、その探索空間内に適切な
      解が存在しない可能性
    • 独立性(Independence)
      各参加者の持つ意見や提案が他の参加者の影響を受けないよう各参
      加者の独立性が確保されている必要。とくに小集団で議論を行う場
      合には、多様性が低いために偏った結論に集約される危険性
    • 分散性(decentralization)
      問題を抽象化せず、各参加者が直接得られる情報に基づいて判断す
      る必要。参加者ごとに得られる情報の種類は異なると予想される
      が、多様性を維持するためにも、各参加者に共通する属性のみで判
      断すべきでない。
    • 集約性(aggregation)
      上記3点の特性を生かして得られた知識を参加者全体で共有し、比
      較検討して最終的な結論を導く仕組みが必要

The Wisdom of Crowds: Why the Many Are         「みんなの意見」は案外正しい
Smarter Than the Few and How Collective        ジェームズ・スロウィッキー
Wisdom Shapes Business, Economies, Societies
and Nations, James Surowiecki
• 多様性
• 独立性
• 分散姓
• 集約姓
集合知
 =
認知
集合知=認知
• 広がりのある人々
 – お金持ちから貧乏人まで
 – いろいろな国
 – 若い人からお年寄りまで
 –…
• 我々の世界の真のビュー
 – 真の人口動態
• ビジネス、科学、工学で大きな価値
Long Tail
• Long tail / Amazon
• Data mining / POS data
集合知
 =
貢献
集合知 = 貢献
• みんなが貢献するといろいろなことがで
  きる
 – Youtube
 – Wikipedia
 – Yahoo!知恵袋

 – Wedata (例:Autopagerizeデータ)
集合知再考
集合知再考
集合知再考
集合知再考
WeData
集合知 = 貢献
•   それぞれが自分にあった貢献
•   それぞれはちょっとづつ
•   すると全体としては巨大な貢献
•   究極の「適材適所」
集合知
 =
共創
集合知 = 協力
• 沢山の人が一つのことを作り出すことに
  協力
 – いままでにない組み合わせの協力が可能
• 「大勢の」「見知らぬもの同士の」コラ
  ボレーションはいままでにない新しい創
  造スタイル


 – Linux等のオープンソース開発
 – 2ちゃんねるの「探偵ごっこ」
 – ニコニコ動画の「初音ミク」
2ちゃんねるの「探偵ごっこ」
• みんなで共同で何かを発見する(negativeだ
  けど…)
 – “イノウエイ”、“女子大生不倫”、…
• 得意分野で貢献
 – 例)ボンネットに写った建物から住所を当て
   る
ニコニコ動画の「初音ミク」
集合知のデザイン
どうやってユーザを巻き込むか
• 何もしない
• ある別の目的に何かをする。
• お金を払ってやってもらう
自動車通行実績情報マップ
        • GPSつき
          カーナビ搭
          載車の情報
          を集約して
          表示
集合知再考
reCAPTCA
reCAPTCHA
• 人間認証プログラム
 – 入力者が人間であることを確認するためのソ
   フト
• が、実は集合知プログラム
 – 問題はOCRで判読不能な文字
 – それをユーザに読んでもらう
• どうやって正解を判定するの?
 – 未解読のセットと解読済の文字列のセット
 – 解読済を正しく答えれば人間、かつ他方の回
   答を蓄積
Mechanical Turk
どうやってユーザを巻き込むか
•   何もしない
•   ある別の目的に何かをする。
•   お金を払ってやってもらう
•   積極的にしてもらう
    – 何を、どうやって
情報/知識共有システムの課題
• 情報共有は概して普及が難しい
 “人は自分の情報を開示するのにしり込みする”
 – 情報開示は一般の人は難しい
 – 情報収集と公開のアンバランス
• じゃあどうする?
 – グループウエア:とにかく使わせる!(会社
   文化)
 – Web:強制できない(Internet文化)
Instant Gratification(今すぐのご利
                  益)
• Instant Gratificationの必要性
  – だいたいの情報/知識共有アプリケーションは
    ユーザに対するフィードバックが尐ない
• しかし,Instant Gratification だけ で情報/知
  識共有アプリケーションは不十分
  – 情報/知識共有は概して時間がかかるもの
    • 情報は人々をまわってもどってくる
2重ループのご利益
    (Double-loop Gratification)
• Instant Gratification: ユーザへのすぐさまのフィードバック
   – 分かりやすいご利益
       • でも情報/知識共有の目的そのものではない
   – 情報/知識共有アプリケーションへ人を誘い込むために必
     要
• Delayed Gratification(後から来るご利益)
   – 情報/知識共有アプリを長期間使ったときのご利益
       • 情報/知識共有の本当の目的
       • 多くは非明示:e.g., 参加しているという感覚
  – そうすると,ユーザは自然と使うようになるし,人にも
    勧める
• 問題
半透明戦略(Translucence Strategy)

• 人を後のご利益が感じられるような場所
  においておく
 – Instant Gratificationの状態からあとほんの
   ちょっとで,情報/知識共有の輪に参加でき
   るようにする
成功するサービス、失敗するサー
       ビス
• SNS
  – 自分自身のまとめ(日記、メモ)として使え
    る
  – 周りが反応する、周りに反応する
• 位置ゲー
  – まず一人でも遊べる
  – 周りの人を知るともっと楽しい
• 社内掲示板
  – みなさんのために書く
集合知再考
まとめ
• 集合知の力
 – 単に集まっただけではない
 – 認知、協力、共創
• 集合知のデザイン
 – 簡単ではない
 – いろいろなレベル
  • 何もしない、別のことをさせる、金を払う
  • うまく誘導する(2重の御利益)
集合知再考

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  • 5. 集合知の4つの条件 • 多様性 (diversity of opinion) 各参加者がそれぞれに独自の視点があれば、総体として多くの候補 解を列挙可能。探索空間が狭い場合には、その探索空間内に適切な 解が存在しない可能性 • 独立性(Independence) 各参加者の持つ意見や提案が他の参加者の影響を受けないよう各参 加者の独立性が確保されている必要。とくに小集団で議論を行う場 合には、多様性が低いために偏った結論に集約される危険性 • 分散性(decentralization) 問題を抽象化せず、各参加者が直接得られる情報に基づいて判断す る必要。参加者ごとに得られる情報の種類は異なると予想される が、多様性を維持するためにも、各参加者に共通する属性のみで判 断すべきでない。 • 集約性(aggregation) 上記3点の特性を生かして得られた知識を参加者全体で共有し、比 較検討して最終的な結論を導く仕組みが必要 The Wisdom of Crowds: Why the Many Are 「みんなの意見」は案外正しい Smarter Than the Few and How Collective ジェームズ・スロウィッキー Wisdom Shapes Business, Economies, Societies and Nations, James Surowiecki
  • 6. • 多様性 • 独立性 • 分散姓 • 集約姓
  • 8. 集合知=認知 • 広がりのある人々 – お金持ちから貧乏人まで – いろいろな国 – 若い人からお年寄りまで –… • 我々の世界の真のビュー – 真の人口動態 • ビジネス、科学、工学で大きな価値
  • 9. Long Tail • Long tail / Amazon • Data mining / POS data
  • 11. 集合知 = 貢献 • みんなが貢献するといろいろなことがで きる – Youtube – Wikipedia – Yahoo!知恵袋 – Wedata (例:Autopagerizeデータ)
  • 17. 集合知 = 貢献 • それぞれが自分にあった貢献 • それぞれはちょっとづつ • すると全体としては巨大な貢献 • 究極の「適材適所」
  • 19. 集合知 = 協力 • 沢山の人が一つのことを作り出すことに 協力 – いままでにない組み合わせの協力が可能 • 「大勢の」「見知らぬもの同士の」コラ ボレーションはいままでにない新しい創 造スタイル – Linux等のオープンソース開発 – 2ちゃんねるの「探偵ごっこ」 – ニコニコ動画の「初音ミク」
  • 20. 2ちゃんねるの「探偵ごっこ」 • みんなで共同で何かを発見する(negativeだ けど…) – “イノウエイ”、“女子大生不倫”、… • 得意分野で貢献 – 例)ボンネットに写った建物から住所を当て る
  • 24. 自動車通行実績情報マップ • GPSつき カーナビ搭 載車の情報 を集約して 表示
  • 27. reCAPTCHA • 人間認証プログラム – 入力者が人間であることを確認するためのソ フト • が、実は集合知プログラム – 問題はOCRで判読不能な文字 – それをユーザに読んでもらう • どうやって正解を判定するの? – 未解読のセットと解読済の文字列のセット – 解読済を正しく答えれば人間、かつ他方の回 答を蓄積
  • 29. どうやってユーザを巻き込むか • 何もしない • ある別の目的に何かをする。 • お金を払ってやってもらう • 積極的にしてもらう – 何を、どうやって
  • 30. 情報/知識共有システムの課題 • 情報共有は概して普及が難しい “人は自分の情報を開示するのにしり込みする” – 情報開示は一般の人は難しい – 情報収集と公開のアンバランス • じゃあどうする? – グループウエア:とにかく使わせる!(会社 文化) – Web:強制できない(Internet文化)
  • 31. Instant Gratification(今すぐのご利 益) • Instant Gratificationの必要性 – だいたいの情報/知識共有アプリケーションは ユーザに対するフィードバックが尐ない • しかし,Instant Gratification だけ で情報/知 識共有アプリケーションは不十分 – 情報/知識共有は概して時間がかかるもの • 情報は人々をまわってもどってくる
  • 32. 2重ループのご利益 (Double-loop Gratification) • Instant Gratification: ユーザへのすぐさまのフィードバック – 分かりやすいご利益 • でも情報/知識共有の目的そのものではない – 情報/知識共有アプリケーションへ人を誘い込むために必 要 • Delayed Gratification(後から来るご利益) – 情報/知識共有アプリを長期間使ったときのご利益 • 情報/知識共有の本当の目的 • 多くは非明示:e.g., 参加しているという感覚 – そうすると,ユーザは自然と使うようになるし,人にも 勧める • 問題
  • 33. 半透明戦略(Translucence Strategy) • 人を後のご利益が感じられるような場所 においておく – Instant Gratificationの状態からあとほんの ちょっとで,情報/知識共有の輪に参加でき るようにする
  • 34. 成功するサービス、失敗するサー ビス • SNS – 自分自身のまとめ(日記、メモ)として使え る – 周りが反応する、周りに反応する • 位置ゲー – まず一人でも遊べる – 周りの人を知るともっと楽しい • 社内掲示板 – みなさんのために書く
  • 36. まとめ • 集合知の力 – 単に集まっただけではない – 認知、協力、共創 • 集合知のデザイン – 簡単ではない – いろいろなレベル • 何もしない、別のことをさせる、金を払う • うまく誘導する(2重の御利益)