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「Unityサウンド エキスパート養成講座」振り返り ~単
著ができるまで~
株式会社ヘッドハイ 一條貴彰
自己紹介:一條貴彰
● 株式会社ヘッドハイ 代表取締役
○ 「ゲーム開発者向けのツールやサービスを広める」をやる会社
○ Play,Doujin! ディレクター
○ CRI ADX2のアンバサダー
○ GenvidのDeveloper Relations
● 個人ゲーム開発活動
○ 「Back in 1995」(Switch/PS4/PS Vita/One/N3DS)
○ 「デモリッション ロボッツK.K.」開発中!
● 趣味
○ 80’s洋楽ポップスのレコード収集
○ 刀剣乱舞、千銃士、ドリミ、MakeS
○ @takaaki_ichijo→
Unity サウンドエキスパート養成講座
● 出版:ボーンデジタル
● 392ページ、25万字ぐらい
(ソースコード含む)
● サンプルデモは3つ
● Unity標準からミドルウェアまで網羅
● 「アナログデジタル変換とは」
「サンプリングレートとは」といった基礎知識
も学べる
「CRI ADX2」をガッツリ解説!
● 音にまつわる演出が組み込まれたライブラリ&ツール 

○ イントロ付きループ再生 

○ 効果音再生数の上限を設定 

○ 効果音のバリエーションを増やす 

○ ランダムに音を変化させる設定 



● ゲームに最適化した音声圧縮形式 

○ たくさん音が鳴るゲームの 負荷軽減

○ ボイスが多いゲームの データ圧縮

○ 音声データの暗号化



● インタラクティブミュージックの実現 

○ ゲームの展開に合わせて変化するBGM 


 4
訂正告知
■27ページ
誤:Resources フォルダは、ゲームの起動時にすべてのファイルをロードしようとするた
め、メモリの消費が激しく、起動時間が非常に長くなるためです。
正:Resources フォルダは、ゲームの起動時にファイルのインデックスを作成するた
め、含まれているファイルを全走査してしまい、起動時間が非常に長くなるためです。
・その他、誤字等のご案内は以下にて
 https://www.borndigital.co.jp/book/15163.html
5
もくじ
1. 出版までのタイムライン
2. とにかくネタ出し・手を動かす
3. サンプルゲームは工数を減らす
4. 「知らないこと」を本に書く
5. 細かなマイルストーンを設定
6. 大量の査読依頼
7. 恐怖と戦う
8. 技術書を書きたい方へ
出版タイムライン
2018年5月 Unite Tokyo 2018 「Audio機能の基礎と実装テクニック」
2018年5月 企画書提出
2018年8月 本格的に書き始める
2018年10月 ゲームの新作発表などでバタつく
2018年12月 発売時期を延期
2019年1月 1章初原稿 (台湾出張などでバタつく)
2019年4月 2章初原稿
2019年5月 3章初原稿
2019年6月 4章・5章初原稿
2019年7月 校正作業
2019年8月 発売!
およそ1年3か月
ただし他の仕事もしながらなので、
専業なら半年弱ぐらいの作業
とにかくネタ出し・手を動かす
● タスク管理ツールに各ネタを思いついた順に詰め込む
○ 書きたい内容思いついた順番
○ 参考になるツイート、ウェブサイトや動画
● それをコンセプトに落とし込む
○ 章立てをどうするか
○ 伝えたいこと・強調したいことは何か
○ あんま勉強できてないけど、全体の構成として必要なもの
● 書けるところから書く
○ 最初はマジで箇条書き・誤字上等なメモ
○ ツイートのノリのまんまで書く
○ 自分の楽しさ優先
場所時間、問わずやる
外にいた時はスマホから書く
ツールは何でも。私
はAsana。
KeepとかTrello
でも可能。
サンプルゲームは工数を減らす
● 1・2章のサンプル「木こり姫」
○ 実は「Unityゲーム プログラミング・バイブル」の改良版
○ 本文も同じく改良・増強版のため、システムはほぼ同じ
● 3章のサンプル「船にコンテナをギリギリまで積む」
○ 実はUnity一週間ゲームジャム作品の改良版
○ 元タイトル:「脱法コンテナ積載」
○ https://unityroom.com/games/containership
サンプルゲームは工数を減らす2
● 4章のサンプル「ノーダメージ勇者さま」
○ システム
■ 敵からダメージを受ける処理を作るのめんどくせえ
■ 作らない→タイトル
○ BGM(インタラクティブにゲームと連動する!)
■ 実は自作ゲーム用の曲を流用
■ というかゲームと書籍両方で使う前提で依頼
■ 作曲担当:神山 大輝さん
○ ボイス
■ 一日で収録
■ マスタリング作業までやってもらった
■ 担当:音響スタジオ「コトリボイス」さん
■ コラム執筆も一緒に依頼
「知らないこと」を本に書く
● 3章「VR」が大変!
○ 1年前は何も知らなかった(経験なし)
■ えっ知らないのに書くの??
○ サウンドといったらVRの話は必要なので決意
■ めっちゃ勉強する
■ 有識者に許可を得て構成を真似る
■ 有識者に査読してもらう
● 神様たち ありがとう
○ よしたか@TyounanMOTI 氏
○ こりん@VR 氏 (VR開発メモ https://framesynthesis.jp/tech/ )
○ オークマネコ (@ookumaneko_XD) 氏
細かなマイルストーンを設定
● CEDEC / Uniteがデッドライン
○ どうあがいてもこの時期に発売しなくてはダメというライン
○ 間に合わせるために、内容短縮も視野に入れていた
■ → Uniteが偶然9月になったので、当初予定通りの内容にできた
● 毎月報告を出す
○ CRI社の監修が入っていたため、毎月進捗報告と原稿を出していた
○ その他、出版社さんにも都度進捗報告
○ 次に紹介する査読依頼もマイルストーンの一種
大量の査読依頼
● 30人ぐらいに査読依頼
○ 一部はコミュニティで募集
○ Unity初心者から強者、サウンドも初学者からベテランまで幅広く
○ Google Sheetsで進捗管理
○ 査読がある=それまでに書き上げないといけない!
恐怖と戦う
● 執筆前の恐怖
○ 需要あんのか?
■ Unite登壇、CEDECでの告知等で実感をつかむ
○ VR章やサウンド基礎知識章を入れて価値を高める
● 執筆中の恐怖
○ Unityの破壊的変更
■ スクショ2回取り直した(執筆時間かかったのが悪いともいえる
■ Audio機能が破壊的に変わったらどうしよう
○ これ終わるのか・・・?
■ 「書き上げるの楽勝やん」と「一生おわらん死ぬ」行ったり来たり
● 執筆後の恐怖
○ Amaz〇nの攻撃的レビュー(表紙の文字を読まない人からのレビュー)
■ それだけ多様な人の目に触れたんだ、話題になったんだと考えて乗り越える
技術書を書きたい方へ
● それはやる必要があるか?を考える
○ 「初心者本」は氾濫してるし、書き手も多い
○ 書くことに意味はあるのか?
■ マニュアルの情報をそのまま受け売りコピーしてるような本はごみ
■ ググってすぐ出る情報なら必要ない
○ 読み手に何を伝えたいのか?
■ 自分がゲーム産業に向かってやっていることのポリシーを貫く
■ 本書の場合は「サウンドの重要性を知ってもらう」こと
● 徐々に情報を表に出して、需要を図る
○ LTやブログなどで同テーマの話をして反応を見る
本に行く前に、徐々に規模を大きくする
1. 技術ブログポストを書く
○ おすすめ:Unityアドベントカレンダー
○ 理由:締め切りがあるから、テーマが定まるから
2. 技術同人誌(合同誌)の参加
○ おすすめ:Unibook
○ 理由:みんなで書くのでピアレビューがある、文量が多くなくても大丈夫
3. 同人誌の企画と頒布
○ おすすめ:技術書典申し込みムーブ
○ 理由:締め切りを作る
■ 出版社へ企画を持ち込む際のサンプルになる!
4. 複数人著者タイプの技術書企画に参加
○ 例:ボーンデジタル「 Unityバイブル」シリーズ
○ 理由:おれが書いているので
本を書くことは ほぼ創作
● やりたいことと自分の技能がかみ合わなくて作業が進まなくなる
● 8時間机に向かっていても2,000字も書けない日も
● 手を動かせるときにどのくらい積み上げられるか
○ 次の講演の待ち時間 1分でも少し書ける
ご清聴ありがとうございました
おまけ:マネー感
● ダメです
○ 気持ち、時給50~100円ぐらい....
○ 増刷されたらマシに ...
○ 本を書いて生きようと思ったら 1年に何冊も書かないとダメかなと
● 本を書くモチベ
○ 知見を共有することで世の中がよりよくなる
○ キャリアアップ(単著あります!力)
○ 今後の仕事をつかむ基礎

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