SlideShare a Scribd company logo
4
Most read
6
Most read
LiHのポテンシャルエネルギー曲面
を量子コンピュータで行う
Q#+位相推定編
中田真秀
2019/1/18
https://github.com/nakatamaho/LithiumHydride
https://github.com/nakatamaho/auto_potentialenergy_surface
量子化学計算を量子コンピュータで行う
●
前回に引き続き、量子化学計算を量子コンピュータで行ってみる。
●
Q#を用いる。
●
環境: Ubuntu 16.04 (amd64)
●
環境構築については、前回のスライドを参照してください。
●
今回のお題
LiH分子について、ポテンシャルエネルギー曲面を書いてみる。
LiHとはなにか?
●
LiHとは水素化リチウム
●
水と激しく反応し、水酸化リチウムと水素を生成する。
●
電子の数は4個
●
水素分子より(2個)も電子が多い最小(?)の閉殻系
●
電子配置は右図、または LiH : (1σ)2(2σ)2
●
Li – H は単結合
真船:量子化学基礎からのアプローチより
Li H
-109.5
-109
-108.5
-108
-107.5
0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
"N2.SV/data_CCSDT" using 1:2
"N2.SV/data_fullCI" using 1:2
"N2.SV/data_MP2" using 1:2
"N2.SV/data_Hartree-Fock" using 1:2
なぜポテンシャルエネルギー曲面か?
●
ポテンシャルエネルギー曲面とは?
– LiHの結合長を変えてエネルギーの計算して結合長 vs エネルギーでプロット
●
化学結合が乖離するポテンシャルエネルギー曲面の計算は比較的難しい
– Hartree-Fock: 結合長さが平衡核間距離より長くなるとエネルギーが高く出
過ぎる
– CCSD(T) : 長くなると計算が収束しなくなる(だが量子化学のgolden standard)
– MP2 : 長くなると速やかにエネルギーがマイナスに発散する
– FullCI:非常に時間がかかる
●
右の計算(N2/splitvalence/1score)
ではfullCI以外は一瞬で終了
→ 量子コンピュータの出番
NNNN
距離
Q#で行う計算について
●
FullCI = 厳密解を行う
– 与えられた空間の中での厳密解
– 与えられた空間 = 基底関数系 = STO-3G (今回用いたもの)
●
近似解法はむしろ行えない
●
ゲートの数が多い(NISQ向けではない)
●
厳密解がHartree-Fock解に近いときのみ推定がうまくゆく
●
qubitを(量子化学における)電子波動関数と同一視する
●
量子化学計算からすると非常にショボい計算
– CCSD(T)などは本来結合乖離は書きにくいのだが、電子数が少なすぎて書けてし
まう。
– 基底関数もSTO-3Gは一番poorなもの
– 前人未到の計算には50-100 qubit、誤差のないゲートが必要
コードをgitから取得
●
LiHのサンプルがあるが、CUIで動くように切り貼りしただけ。
●
2電子積分の生成は次回に後回し…
●
$ git clone https://github.com/nakatamaho/LithiumHydride.git
$ cd LithiumHydride
$ /usr/bin/time dotnet run 2>&1 | tee log
…
●
Intel(R) Xeon(R) CPU E5-2680 @ 2.70GHz, 16コアで 23時間かかっ
たw
– 古典コンピュータだと一瞬で終る
– gitにlogが残ってます。
2530627.93user 5111.99system 22:46:28elapsed 3092%CPU (0avgtext+0avgdata 405420ma
0inputs+72outputs (0major+9781412minor)pagefaults 0swaps
結果のplot
-8
-7.8
-7.6
-7.4
-7.2
-7
0.5 1 1.5 2 2.5 3
"data_LiH_G" using 1:2
"data_LiH_E1" using 1:2
"data_LiH_E2" using 1:2
"data_LiH_E3" using 1:2
"data_LiH_E4" using 1:2
"data_LiH_E5" using 1:2
基底状態から6個の状態の
PESをPlot時々量子力学的ノ
イズよりエネルギーの値がお
かしい。エネルギーの精度は
小数点以下3桁程度で、本来
は5桁必要で、精度が若干足
りない。しかしながらそうす
ると計算時間が伸びる。
議論
●
LiHについてポテンシャルエネルギー曲面をQ#と内在する量子コンピュー
タシミュレータで行った。基底状態だけでなく励起状態も描くことができ
た。
– サンプルほとんどそのままだけどね...
●
位相推定は現在のところ遅くて誤差も多いため、アルゴリズムの工夫が必
要。
– すでにあるのは変分的な解法および虚時間発展による解法
●
非自明な結果がほしい。LiHだと系が小さすぎてCCSD(T)程度でも厳密解
と区別がし辛い
● 比較的小さい系でもスパコンでさえ計算できなくなる(N2/6-31G*でさえ
きつい)ので、50-100qubitあれば前人未到の計算が可能
サンプルコードの取得
●
git clone https://github.com/nakatamaho/LithiumHydride.git
– LiHのpotential energy 曲面をQ#で位相推定で求めるサンプル
●
git clone
https://github.com/nakatamaho/auto_potentialenergy_surface
– N2, LiHについてpotential energy曲面をGAMESSで計算
+GNUPLOTで表示するためのスクリプト。他にも応用は利く。
コードの解説 (I)
Program.cs冒頭
Hamiltonianを読み込む。分子の座標22点について前もってHamiltonian
を行ったデータが有るため、それを利用する。
コードの解説 (II)
Program.cs
一点ごと(bondlength) にsimulatorに投げて、エネルギーの推定値(energyEst)
を返す
コードの解説 (III)
LithiumHydrideSimulation.qs
1点について、計算を行う
energyOffsetは核間反発エネルギー(最後に足す)
StatePrep : 初期状態 (Hartree-Fock)をつくる
RobustPhaseEstimation : 位相推定のアルゴリズム
NBitsPrecision: 推定に使うancilla qubits
TrotterStep : Trotter分解時のパラメータ
コードの解説 (IV)
という感じで、ほとんどライブラリ化されていて
解説が不要なレベルまで作り込んであった。
さすがというべきか...

More Related Content

PPTX
量子コンピュータの量子化学計算への応用の現状と展望
PDF
Openfermionを使った分子の計算 part I
PDF
CMSI計算科学技術特論A(14) 量子化学計算の大規模化1
PPTX
量子コンピュータで量子化学のfullCIが超高速になる(かも
PPTX
qubitによる波動関数の虚時間発展のシミュレーション: a review
PDF
el text.life science6.tsuneda191106
量子コンピュータの量子化学計算への応用の現状と展望
Openfermionを使った分子の計算 part I
CMSI計算科学技術特論A(14) 量子化学計算の大規模化1
量子コンピュータで量子化学のfullCIが超高速になる(かも
qubitによる波動関数の虚時間発展のシミュレーション: a review
el text.life science6.tsuneda191106

What's hot (20)

PDF
PFP:材料探索のための汎用Neural Network Potential - 2021/10/4 QCMSR + DLAP共催
PPTX
【DL輪読会】言語以外でのTransformerのまとめ (ViT, Perceiver, Frozen Pretrained Transformer etc)
PDF
第1回 配信講義 計算科学技術特論A (2021)
PDF
論文紹介資料「Quantum Deep Field : Data-Driven Wave Function ...」
PDF
自由エネルギー原理から エナクティヴィズムへ
PDF
光発振器ネットワークで組合せ最適化問題を解くコヒーレントイジングマシン
PPTX
モンテカルロ法と情報量
PDF
AtCoder Beginner Contest 007 解説
PDF
機械学習による統計的実験計画(ベイズ最適化を中心に)
PPTX
金融情報における時系列分析
PDF
変分推論法(変分ベイズ法)(PRML第10章)
PDF
グラフィカルモデル入門
PPTX
【解説】 一般逆行列
PDF
道具としての機械学習:直感的概要とその実際
PDF
PRML第3章@京大PRML輪講
PDF
マルコフ連鎖モンテカルロ法入門-1
PPTX
数理最適化と機械学習の 融合アプローチ -分類と新しい枠組み-
PDF
機械学習モデルのハイパパラメータ最適化
PDF
『自由エネルギー原理入門』勉強会1章&2章前半
PPTX
充足可能性問題のいろいろ
PFP:材料探索のための汎用Neural Network Potential - 2021/10/4 QCMSR + DLAP共催
【DL輪読会】言語以外でのTransformerのまとめ (ViT, Perceiver, Frozen Pretrained Transformer etc)
第1回 配信講義 計算科学技術特論A (2021)
論文紹介資料「Quantum Deep Field : Data-Driven Wave Function ...」
自由エネルギー原理から エナクティヴィズムへ
光発振器ネットワークで組合せ最適化問題を解くコヒーレントイジングマシン
モンテカルロ法と情報量
AtCoder Beginner Contest 007 解説
機械学習による統計的実験計画(ベイズ最適化を中心に)
金融情報における時系列分析
変分推論法(変分ベイズ法)(PRML第10章)
グラフィカルモデル入門
【解説】 一般逆行列
道具としての機械学習:直感的概要とその実際
PRML第3章@京大PRML輪講
マルコフ連鎖モンテカルロ法入門-1
数理最適化と機械学習の 融合アプローチ -分類と新しい枠組み-
機械学習モデルのハイパパラメータ最適化
『自由エネルギー原理入門』勉強会1章&2章前半
充足可能性問題のいろいろ
Ad

More from Maho Nakata (20)

PDF
quantum chemistry on quantum computer handson by Q# (2019/8/4@MDR Hongo, Tokyo)
PDF
Lie-Trotter-Suzuki分解、特にフラクタル分解について
PPTX
Q#による量子化学計算 : 水素分子の位相推定について
PDF
20180723 量子コンピュータの量子化学への応用; Bravyi-Kitaev基底の実装
PPTX
第11回分子科学 2017/9/17 Pubchemqcプロジェクト
PPTX
Kobeworkshop pubchemqc project
PPTX
計算化学実習講座:第二回
PPTX
計算化学実習講座:第一回
PPTX
HOKUSAIのベンチマーク 理研シンポジウム 中田分
PPTX
為替取引(FX)でのtickdataの加工とMySQLで管理
PPTX
為替のTickdataをDukascopyからダウンロードする
PPTX
HPCS2015 pythonを用いた量子化学プログラムの開発と応用
PDF
HPCS2015 大規模量子化学計算プログラムSMASHの開発と公開(石村)
PPTX
The PubChemQC Project
DOCX
3Dプリンタ導入記 タンパク質の模型をプリントする
PDF
QuantumChemistry500
PPTX
立教大学化学実験3 SMILESを中心とした高度な分子モデリング 2014/7/1
PPTX
The PubchemQC project
PDF
Direct variational calculation of second-order reduced density matrix : appli...
PDF
高精度線形代数演算ライブラリMPACK 0.8.0の紹介
quantum chemistry on quantum computer handson by Q# (2019/8/4@MDR Hongo, Tokyo)
Lie-Trotter-Suzuki分解、特にフラクタル分解について
Q#による量子化学計算 : 水素分子の位相推定について
20180723 量子コンピュータの量子化学への応用; Bravyi-Kitaev基底の実装
第11回分子科学 2017/9/17 Pubchemqcプロジェクト
Kobeworkshop pubchemqc project
計算化学実習講座:第二回
計算化学実習講座:第一回
HOKUSAIのベンチマーク 理研シンポジウム 中田分
為替取引(FX)でのtickdataの加工とMySQLで管理
為替のTickdataをDukascopyからダウンロードする
HPCS2015 pythonを用いた量子化学プログラムの開発と応用
HPCS2015 大規模量子化学計算プログラムSMASHの開発と公開(石村)
The PubChemQC Project
3Dプリンタ導入記 タンパク質の模型をプリントする
QuantumChemistry500
立教大学化学実験3 SMILESを中心とした高度な分子モデリング 2014/7/1
The PubchemQC project
Direct variational calculation of second-order reduced density matrix : appli...
高精度線形代数演算ライブラリMPACK 0.8.0の紹介
Ad

LiHのポテンシャルエネルギー曲面 を量子コンピュータで行う Q#+位相推定編